カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Spyder】 (Telugu)

<<   作成日時 : 2017/10/02 20:13   >>

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【Spyder】 (2017 : Telugu)
物語・脚本・台詞・監督 : A.R. Murugadoss
出演 : Mahesh Babu, S.J. Surya, Rakul Preet Singh, Bharath, RJ Balaji, Priyadarshi, Jayaprakash, Dheepa Ramanujam, Shaji Chen, Nagineedu, Hareesh Peradi, Ajay Ratnam, 他
音楽 : Harris Jayaraj
撮影 : Santosh Sivan, S.D. Vijay Milton, Sojan Narayanan
編集 : A. Sreekar Prasad
製作 : N.V. Prasad, Tagore Madhu

題名の意味 : ?(SpyとSpiderを合わせた造語?)
映倫認証 : U/A
タ イ プ : オリジナル
ジャンル : スリラー
公 開 日 : 9月27日(水)
上映時間 : 2時間25分

《 あらすじ 》
 情報局に勤めるシヴァ(Mahesh Babu)は、特別なソフトウェアを使って一般市民の電話を盗聴し、電話の主が危険な状況にあることを察知したら、救い出すという仕事をしていた。しかしある夜、彼は若い女性の電話をキャッチしながらも、その女性と自分の友人の婦人警官の命を救えなかった。この悔しさを晴らすために、シヴァは防犯カメラの映像から殺人犯と思しき男を見つけ、罠を仕掛けて、その男がバイラヴドゥという人物だと突き止める。シヴァはバイラヴドゥの村へ行き、関係者の話を聞いて驚く。バイラヴドゥは墓守の子として生まれ、幼少の頃より人の死を見て喜ぶようになり、殺人も働いていたようだが、村人と悶着の末、何処へ消えたとのことだった。シヴァは何とかバイラヴドゥを拘束するが、それは実はバイラヴドゥの弟(Bharath)だった。そして、本物のバイラヴドゥ(S.J. Surya)はテレビのニュースチャンネルを使って公に、弟を解放しなければ、これから更なる惨事を起こす予定だと脅す。シヴァはバイラヴドゥの弟を射殺する。
 バイラヴドゥは弟の復讐のためにシヴァの母(Dheepa Ramanujam)の命を狙うが、ここはシヴァが機転を利かせて切り抜ける。だが、シヴァはバイラヴドゥに襲われ、大怪我をする。しかしその時にシヴァもバイラヴドゥに銃を撃って、負傷させる。
 シヴァは手負いのバイラヴドゥがどこかで治療を受け、潜んでいると見当付け、ある奇策を使って潜伏地を特定し、見事にバイラヴドゥを捕らえることに成功する。だが警察本部でバイラヴドゥはシヴァに、すでに市民を震え上がらせる惨事の計画がスタートしていると告げる、、。

・その他の登場人物 : チャーリ(Rakul Preet Singh)

   *    *    *    *

◎ テーマ : ★★★☆☆
◎ 着 想 : ★★★★☆
◎ 物 語 : ★★★☆☆
◎ 脚 本 : ★★★☆☆
・批評家の評価はそれほど高くないようだが、マヘーシュ・ファンの私の目からすると、めちゃめちゃ面白く見えた。ロジックもリアリティーもぶっ飛んだ脚本だが、面白いアイデアがあちこちにあった。それらをいちいち書くと際限なく長くなりそうなので、ここでは1点だけを巡って書いておく。

・南インド映画のアクション映画というと、正義のヒーローと悪役が戦い、正義が勝利を収めてスッキリする、いわゆる善悪二元論、勧善懲悪のストーリーであることが多いが、しかし本当にそんな単純な図式で済むものかという疑問は長らくあった。というのも、インド映画がインスピレーションを汲んでいるインド(ヒンドゥー教系)の神話世界というのは、単純に善悪では割り切れない根源的な哲学的複雑さを持つものだからだ。もちろん、幼稚な勧善懲悪物を意図した作品も多く、私も嫌いではないが、優れた監督(ストーリー作家)の作品となると、それ相応の深みがあると期待してもいいだろう。

・つまり、本作がそれで、本作はヒーローのシヴァ(Mahesh Babu)が悪役のバイラヴドゥ(S.J. Surya)と戦う、一見善悪二元論の物語だが、ここでは二人の名前に注目したい。シヴァがシヴァ神の代理なのはもちろんだが、バイラヴドゥ(バイラヴァ)というのは実はシヴァ神の異相で、恐怖、破壊、殺戮のイメージと結び付けられる。私が観たのはテルグ語版だが、タミル語版ではシヴァとスダライになっており、このスダライはタミル地方で崇拝される神で、シヴァ神の息子と見なされ、墓地と関連付けられている。つまり、本作でシヴァが戦う相手というのはシヴァ自身、あるいはシヴァに非常に近い存在で、荒っぽく言えば、本作が描いているのはシヴァの独り相撲なのである。

・で、ここで善悪の問題に戻ると、叙事詩の『ラーマーヤナ』にしても『マハーバーラタ』にしても、物語そのものが善とも悪とも言えず、個々の主要登場人物にしても善でも悪でもない、と言うより、善でも悪でもあるような存在として描かれているように見えるのだが、これはつまり、単なる善、単なる悪が別個に対立的に存在するのではなく、一個の個我の内に善と悪が存在しているのだ、という思想ではないかと思われるのである。全てのインド人(ヒンドゥー教徒)がこういう考え方をしているかどうかは確言できないが、例えばカンナダ映画【Godhi Banna Sadharana Mykattu】(16)では「人の心の内に黒い犬(悪)と白い犬(善)がいて、いつも喧嘩している。そして、たくさん食わせてやったほうが勝つ」という台詞があったりして、それほどインド人のコモンセンスから外れた考え方ではないと思う。

・ムルガダース監督はこれまでテロリストや悪徳実業家といった社会的な悪を描いてきたが、では、どうしてそういうテロや実業家の犯罪行為が起きるのかと問い詰めて行くと、「アメリカが悪い」とか「私腹を肥やすため」とかいった水平的な説明とは別に、「内なる悪」という理由にも思い至るのではないだろうか。「人の不幸を笑う」、「殺しに快感を覚える」というのは、人間誰しも多かれ少なかれ持っている否定的感情であり、人類が長らく抑え込もうとしてきたものだ。実際にムルガダース監督がどんなことを考えて脚本を書いたかは分からないが、バイラヴドゥという名前と、その現実離れした抽象的/観念的な悪役像を見ていると、ふと上のようなことを考えた。そして、笑われるかもしれないが、カッコよすぎて、ほとんど全知全能の存在とも言えるシヴァとこのバイラヴドゥの戦いというのは、私の目には神話的次元の出来事にしか見えなかった。(というわけで、本作をロジックの欠如と言って批判することはできない。誰も『ラーマーヤナ』や『マハーバーラタ』を「ロジックがない、リアリティーがない」と言って、貶さないだろう。)

・しかし、本作が面白いのは(ムルガダース監督が天才的なのは)、そのシヴァの手足となって協力するのが「下町のオバサンたち」だったり、「病院に来ていたオジサンたち」だったりすることで、これはもう「バクティ思想」ですよ。

◎ 配 役 : ★★★☆☆
◎ 演 技
・マヘーシュ・バーブ(シヴァ役) ★★★★☆
 久し振りに超カッコいいマヘーシュを見た。まさかの42歳だな。
 (写真下: 本編には登場しなかった蜘蛛と。)

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・S・J・スーリヤ(バイラヴドゥ役) ★★★★☆
 誰が憎いというわけではなく、「誰でもよかった」無差別殺人犯を空恐ろしく演じている。上手いと思ったが、どこかに手本があるのかな?
 (写真下の左。右は弟役を演じたバラトくん。まだ生きていたか!)

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 これも、覆面にチャックを付けるだけで不気味さが増すという、面白いアイデアだった(どこかに手本があるのかな?)。

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・ラクル・プリート・シン(チャーリ役) ★★★☆☆
 日本人ファンの間でも可愛いとの評判なのに、私はなぜか萌えない女優だったが、本作を観て少しは可愛いと思えるようになったかな。
 (写真下: メガネちゃんだった。)

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◎ 音 楽 : ★★★☆☆
◎ BGM : ★★★☆☆
◎ ダンス : ★★★☆☆

◎ アクション : ★★★☆☆
◎ 美 術 : ★★★★☆
◎ 衣 装 : ★★★☆☆
◎ 撮 影 : ★★★★☆
◎ 特殊効果 : ★★★★☆
◎ 編 集 : ★★★☆☆
・カメラはサントーシュ・シヴァンだった。シースルー、リフレクション、射光をテーマとしたクールな映像だった。

・「巨石ごろごろ」のシーン、ああいうのはデカン高原の岩石を見ていて、「もしこれが市内に転がって来たら、、」って感じで思い付くのかな。インド映画のこういう即物的なところが好きだな。

◆ 完成度 : ★★★☆☆
◆ 満足度 : ★★★★☆
◆ 必見度 : ★★★☆☆

◆ 鑑賞データ
・鑑賞日 : 9月29日(金),公開第1週目
・映画館 : The Cinema (GT World, Magadi Rd),10:40のショー
・満席率 : 3割
・場内沸き度 : ★★☆☆☆

 

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【Mersal】 (Tamil)
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2017/11/01 23:23

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