【Bbuddah Hoga Terra Baap】 (Hindi)

 プーリ・ジャガンナート監督といえば、テルグ映画界におけるアクション映画の雄であるが、そんな彼がアミターブ・バッチャン主演でヒンディー映画を撮っていたなんて全然知らなかった。また、アミターブ・バッチャンがハーレー・ダビッドソンを乗り回す映画があるという噂を聞き、「老いてなお頑張るなぁ」と、気にはなっていた。それらの情報がこの【Bbuddah Hoga Terra Baap】のことだと分かり、こりゃ観ずばなるまいと思った。

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 私は、この映画の企画は、ボリウッドにおける昨今のちょっとした南インド映画ブームを受けて、アミターブ・サイドからプーリ・ジャガンナートの方へ話が行ったものだと思っていた。ところが、実際はプーリ監督が「ボリウッドのビッグ・ディック、いえいえ、ビッグBと一度はお仕事したいですわ~ん、うっふ~ん」と秋波を送ったものらしい(注:私は特に根拠もなくプーリ監督のことをホモだと思っているので、妄想込みでこんな書き方になる)。どうやらプーリ監督は子供の頃からアミターブ・バッチャンの大ファンだったらしい。(こちらのインタビュー記事参照。)
 本作は、内容的には70~80年代のアングリー・ヤングマンとしてのアミターブ・バッチャンへの同監督からの賛辞になっているようだ。題名の「Bbuddah Hoga Terra Baap」は「老いぼれはお前の親父だろう」という意味らしい。なんと素晴らしいタイトルだろう!

【Bbuddah Hoga Terra Baap】 (2011 : Hindi)
物語・脚本・監督 : Puri Jagannadh
出演 : Amitabh Bachchan, Sonu Sood, Hema Malini, Prakash Raj, Sonal Chauhan, Charmi, Rajeev Mehta, Subbaraju, Makrand Deshpande, Shahwar Ali, Rajeev Verma, Vishwajeet Pradhan, Atul Parchure, Raveena Tandon(特別出演)
音楽 : Vishal-Shekhar
撮影 : Amol Rathod
編集 : Shekhar
制作 : AB Corp, Viacom 18 Motion Pictures

《あらすじ》
 ムンバイ警察の警視監、カラン(Sonu Sood)は、当地で爆弾テロを繰り返しているマフィアのドン、カビール(Prakash Raj)を2ヶ月以内に掃討すると宣言する。そのニュースを見たカビールは、逆にカランを消すために、殺し屋を呼び寄せる。
 ここにヴィッジュー(Amitabh Bachchan)という男が現れる。彼はかつてムンバイで暴れていたギャングで、年こそ取っていたものの、気力は充実、射撃の腕も落ちておらず、一仕事をするためにフランスからムンバイにやって来たのであった。
 警視監カランはターニヤ(Sonal Chauhan)という女性に惚れていたが、素っ気ない扱いを受けていた。また、ターニヤの友達アムリタ(Charmi)はたまたま喫茶店でヴィッジューに出会い、このセクシーな老人をいたく気に入る。アムリタはヴィッジューを家に招待するが、驚いたことに、母のカーミニ(Raveena Tandon)とヴィッジューは旧知の間柄で、しかもカーミニはヴィッジューに惚れていたらしいことが分かる。アムリタは、再びヴィッジューに有頂天になる母を見て、胸中複雑なものを感じる。
 カビールはいよいよカラン暗殺を実行しようとする。彼は、カランが母のシーター(Hema Malini)と共に寺院を訪れる情報を得、その機会に狙撃するよう仲間に指示する。現場ではヴィッジューも銃を構えていた。だが意外なことに、ヴィッジューはカランを撃たず、カランを狙っていた別の暗殺者を射殺する。実はヴィッジューはカランの実父で、彼を殺すためではなく、守るためにムンバイに来たのであった。
 その後ヴィッジューは、バーで知り合ったカビールの手下を通して、まんまとカビールの仲間になることに成功する。ヴィッジューはカランを狙う計画を匿名で彼に知らせ、息子の命を救う。
 ヴィッジューは、カランがターニヤに惚れていること、しかし二人の関係がぎくしゃくしていることを知っており、彼らを結び付けようと密かに動いていた。それが功を奏して、二人は結婚を決意するに至る。ところが、ターニヤの父プレムナート(Rajeev Mehta)は恋愛結婚反対論者であり、二人の仲を認めない。しかし、それもある出来事がきっかけで、彼も娘の結婚を許す。
 その知らせを受けたカランは、ターニヤに会いに待ち合わせ場所へ行く。しかし、そこでカビールの一味に銃撃されてしまう。カランを救いにやって来たヴィッジューは、まず重傷の息子を病院へと運び込む。そして復讐のため、カビールのアジトに乗り込む、、、。

   *    *    *    *

 単純な心地良さの残る、楽しいヒーロー映画だった。
 実は、脚本はかなり大雑把で、製作費も少なく(1億ルピーということだが、これはボリウッド映画では低予算のほうだろう)、上映時間も2時間弱と、簡単に作った(悪く言えば、やっつけ仕事)としか思えない作品なのだが、完成度は粗くとも、本作が醸し出している清涼感は評価できる。特に、こういう爽快系のギャング映画は近年では南インド映画界が得意としていたものだが、どうしたわけか最近では南インドでもそれ系の秀作が稀になり、逆にボリウッドで【Dabangg】(10)や本作といった成功例が現れているのは、現象としても興味深い。

 ヒーロー映画といっても、本作の場合は特殊で、ヒーローは老いぼれのギャング。それを68歳のアミターブ・バッチャンが演じるところがミソだ。本作はあくまでもかつてのアミターブ映画への賛辞といった企画物なので、それを念頭に置かないと、つまり、アミターブ・バッチャンを愛でるという意志がないと、観てもつまらないだろう。私はぎりぎり楽しく拝見できたが、もっとアミターブ映画に馴染んでいる人なら、さらに楽しめたことだろう。

 ストーリー的には練りが甘く、作為的な部分も多いのだが、それでもアミターブ・バッチャンを中心に、音楽、アクション、コメディー、センチメントの配分がまずまずで、総合的には一定の感動が得られる。私的には、不意に現れたヴィッジューが、息子のカランにはとうとう素性を明かさずに、再び去って行くという、股旅物的エンディングがナイスだった。
 思えば、こういう絶対的な(神聖な、と言ってもいい)スター中心主義、スターという屋台骨を中心に物語や映画的ガジェットを組んでいくというのは、インド映画の伝統的手法で、全体よりも部分のほうが面白いという独特の様式も生まれたわけだが、そんなタイプのインド映画も少なくなりつつある。そうした流れの中で、本作の持つ懐古的性格は大きい。ストーリーを楽しむというよりも、本作を観て、アミターブ・バッチャンがどんな俳優だったのか、かつてのインド映画とはどんなものだったのか、思い出すことができれば、成功だろう。

 ところで、プーリ・ジャガンナート監督といえば、大ヒット・テルグ映画【Pokiri】(06)が有名だが、本作にはそのパロディーが散りばめられている。
 まず、本作のオープニングは【Pokiri】とそっくり。また、【Pokiri】にも本作にも主人公にこけにされるチンピラがおり、それをどちらもスッバラージュが演じている。さらに、チンピラの一人が女とSMプレイに興じているときにプラカーシュ・ラージがのっそり現れるというシーンが【Pokiri】にあるのだが、それが本作でも再現されている。実はこのシーンは、プラブデーヴァが監督した【Pokiri】のヒンディー語版リメイク【Wanted】(09)では消滅していたのだが、プーリ監督はよっぽどこのネタを北インドの人にも見せたかったのだろう。

◆ 演技者たち
 アミターブ・バッチャン演じる「昔アングリー・ヤングマン」、「老いぼれ」と言ったらパンチが飛んでくるヴィッジューは実に愉快だった。
 プーリ監督はもっと粘っこくアミターブに迫るかと思っていたが、意外に淡白だった。これからすると、「プーリ・ジャガンナート・ホモ説」は私の思い過ごしかもしれない。
 気に掛かったのは、私はアミターブ・バッチャンの最近作を見ても、彼が「老けている」という印象は持たなかったのだが、ヴィッジューのような若さを意識した役を見ると、かえって老いを感じてしまった。この辺、ダイハードなアミターブ・ファンの目にはどう映っているのだろう?
 (写真下:ど派手な衣装が印象的だったビッグB。私の父も還暦を過ぎた辺りからこんなシャツを着たがったものだが。)

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 カラン役のソーヌ・スードはなかなかカッコよかった。この人は若き日のアミターブ・バッチャンに容姿が似ていると言われながら、映画人生としてはちっとも似ていないのが気の毒なところだが、善玉も悪玉もできるサイドキッカーとして、地味に注目していきたい。

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 カビール役のプラカーシュ・ラージは、これも【Wanted】の悪役の繰り返しみたいな感じだった。悪くはなかったが、スケールが【Wanted】のものより小さくなっている分だけ、物足りなく感じた。しかし、クライマックスのアミターブとのやり取りは面白かった。
 (写真下:左のチンピラのオジサンも漂々とした感じで良かった。)

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 チャルミちゃんが出ていたのには驚いた。演技的にはどうということはなく、得意のダンスを披露する役柄でもなかったのだが、まぁ、山の賑わいということで。
 加えて、カランの求愛者ターニヤ役のソーナル・チャウハンもコメントに窮するプレゼンスだった。この人は女優としてはまだキャリアが浅いが、そういう北インドの女優/モデルにありがちなことに、カンナダ映画にもこっそりと出演している(証拠写真)。
 (写真下:チャルミちゃん(右)とソーナル・チャウハンさん。)

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 シニア世代の女優では、ヴィッジューの妻/カランの母役のヘーマ・マーリニは、ほとんど特別出演に等しかったが、エレガントだった。
 ラヴィーナ・タンダンは特別出演という扱いだったが、コメディー的役回りが面白かった。彼女を配したアイテム・ナンバーがプロモート用あったということだが、映画本編でも使ってほしかった。
 ところで、ラヴィーナ・タンダンといえば、ウペンドラ監督・主演のカンナダ映画【Upendra】(99)にも出ていた関係で、カンナダ映画ファンにも身近な女優であったのだが、今調べてみたら、彼女のフィルモグラフィーのどこを見ても【Upendra】の名前がないじゃないか! 無視したい気持ちが分からないでもないが、失礼な女だ。

◆ 音楽・撮影・その他
 音楽はヴィシャール&シェーカルの担当。楽しいナンバーが並んでいるが、曲そのものより、それぞれをビッグB自身が歌っているというのが趣向として面白い。1曲、アミターブ・バッチャンのヒット映画音楽をつなげたメドレー・ソングがあるのだが、その辺は疎いので、妙味が分からなかった。

◆ 結語
 手頃なサイズに楽しさの詰まった作品で、映画館で観ても、テレビで観ても、DVDで観ても、なんであれ楽しめる1作だと思う。ただし、やはり70~80年代のアミターブ映画への賛辞といった性格が強いので、アミターブ・バッチャンに関心のない方なら、わざわざ観る必要もないだろう。

・満足度 : 3.0 / 5
 

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この記事へのコメント

イセエビ
2020年03月08日 21:30
無駄に男前 無駄に鍛えたボディのほぼ悪役Sonu Soodが とても珍しくかっこいい役で びっくりしました。

AnushkaさんのホラーArundhatiで、女好きの邪霊とか、役を選ばない面白いお方ですね。
カーヴェーリ
2020年03月10日 09:52
コメディーにも旨味があって、見るのが楽しみなバイプレーヤーですよね。

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