カーヴェーリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Kaala】 (Tamil)

<<   作成日時 : 2018/06/18 03:23   >>

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【Kaala】 (2018 : Tamil)
脚本・監督 : Pa. Ranjith
出演 : Rajinikanth, Nana Patekar, Huma Qureshi, Samuthirakani, Eswari Rao, Anjali Patil, Dileepan, Manikandan, Sampath Raj, Pankaj Tripathi, Ravi Kale, Sayaji Shinde, Ramesh Thilak, Nitish Veera, Arundhati, Suganya, Sakshi Agarwal, Aravind Akash, Aruldoss, Dopeadelicz, 他
音楽 : Santhosh Narayanan
撮影 : Murali G
編集 : Sreekar Prasad
製作 : Dhanush

題名の意味 : 黒(主人公の通称)
映倫認証 : U/A
タ イ プ : オリジナル
ジャンル : ドラマ
公 開 日 : 6月7日(木)
上映時間 : 2時間47分

《 あらすじ 》
 ムンバイのスラム街ダーラーヴィの一画で、スラム民の抗議をよそに、ビル建設のための地鎮祭が行われようとしていた。執り行おうとしていたのは区域の代議士ヴィシュヌ・バーイ(Sampath Raj)だが、そのスラム開発計画は大臣で大物政治家のハリ・ダーダー(ハリデーヴ:Nana Patekar)が推し進めるプロジェクトだった。もちろん、開発はハリ・ダーダーの関与する建設会社が請け負うことになっていた。ハリ・ダーダーはかつてヤクザだったが、大臣にまでのし上がり、この計画のためにスラム民を追い出す腹だった。この開発支持者たちとスラム民の衝突は暴動にまで発展しかけたが、そこにスラムのリーダー、カーラ(カリカーラン:Rajinikanth)が現れ、ヴィシュヌ・バーイらを追い払う。
 カーラはタミル・ナードゥ州ティルネルヴェーリから父や親類、友人らと共にこのダーラーヴィにやって来た移民だった。若い頃はハリ・ダーダーのスラムへの悪行と戦い、しかしそれで父を亡くしたりもしていた。彼はスラムのカリスマ的リーダーであると同時に、妻と4人の息子、それに多くの孫たちに囲まれた良き家長でもあった。
 このスラムにザリーナ(Huma Qureshi)という女性がやって来る。彼女はスラム開発を専門とするソーシャルワーカーで、自身もこのダーラーヴィの出身だった。実はカーラのかつてのフィアンセだったが、結婚式の日にハリ・ダーダー一味に襲撃され、関係が壊れていた。このザリーナのダーラーヴィ開発計画はスラム民を夢中にさせ、なかんずくカーラの末子レーニン(Manikandan)とその恋人のチャールマティ(Anjali Patil)が支持していた。しかし、その開発計画ではスラム民のための住居が十分確保されていないことが分かり、カーラを含むスラム民は憤慨し、計画を拒絶する。
 ハリ・ダーダーはヴィシュヌ・バーイらを使ってカーラを暗殺しようとするが、失敗に終わる。だが、その際にスラム民の1人が惨殺されたため、カーラは報復としてヴィシュヌ・バーイを殺害する。
 カーラはヴィシュヌ・バーイ殺害の廉で警官パーティール(Pankaj Tripathi)に逮捕される。それはもちろんハリ・ダーダーの指図だった。しかし、スラム民が暴徒化するのを恐れ、カーラは釈放される。だが、カーラやその家族を乗せた車列が襲撃され、カーラの妻セルヴィ(Eswari Rao)と息子のセルヴァム(Dileepan)が殺される。
 その後もハリ・ダーダーによるスラムへの執拗な圧迫が続き、カーラは対抗措置として、スラム民を鼓舞し、低カースト労働者に呼び掛けてストライキを行わせる。この運動はSNSやマスコミを通して注目を集めることとなる。
 だが、これに対してハリ・ダーダー陣営はスラムで人為的にパニックを起こし、外出禁止令を発令させる。さらに追い打ちをかけるように、ハリ・ダーダーは腹心のスニール(Ravi Kale)を使って、スラムに大規模な襲撃をかける。スニールと一味はスラムの住宅を放火して回り、スラム民に激しい暴行を加える。カーラたちはそれに対抗するが、結局カーラは銃で撃たれ、火の海に飲み込まれる。
 ハリ・ダーダーはビル建設の地鎮祭のため、改めてダーラーヴィに足を踏み入れる。しかし、そこで彼が見たものは、、。

・その他の登場人物 : ヴァーリヤッパン(Samuthirakani),テレビレポーター(Ramesh Thilak),大臣(Sayaji Shinde),警官シヴァージ・ラーオ・ガーイクワード(Aravind Akash)

   *    *    *    *

◎ テーマ : ★★★☆☆
◎ 着 想 : ★★★★☆
◎ 物 語 : ★★★☆☆
◎ 脚 本 : ★★★★☆
◎ 演 出 : ★★★★☆
【Kabali】(16)より地に足ついた感じの渋い社会ドラマで、満足できる1本だった。何と言っても、ラジニが神懸かり的にカッコいい。悔しいが、ダヌシュがプロデュースした映画は本当に当たる。

・しかし、娯楽映画としてラジニのカッコよさを満喫するだけでも十分チケット代の元は取れる、否、お釣りが来るぐらいなのだが、メッセージ映画として、パー・ランジット監督の意図をぴったり読み取るのはなかなか外国人には難しいことだろう。私も、あれこれ考えては、想像の域を出ないもどかしさを感じる。

・まず、私は本作を観る前々日まで、パー・ランジット監督がダリット(指定カースト)の生まれで、アンベードカル主義者だということは知らなかった。【Madras】(14)の最後にアンベードカル博士の額絵が使われていたので、もしやとも思ったが、あの時は一般的な反カースト差別主義者ぐらいしか思わなかった。それで【Kabali】を観たときも、なぜマレーシアン・タミルの映画を作ったのかよく分からなかったが、ダリットというキーワードを介すと、【Attakathi】(12)から本作までなるほど1本の糸で見えてくる。
 (写真下: アンベードカル博士。このカラーリングを見れば、本作のクライマックスで黒のパウダーの後でなぜ赤と青のパウダーが投げられたのか、一目瞭然だろう。)

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・ただ、私の直感にすぎないが、ランジット監督がダリット解放の意図だけで本作を撮ったのかというと、どうもそういう感じはしない。というのも、本作が「黒」と「白」で表現した色彩シンボルの茫洋としたイメージがそう思わせるからである。もちろん、本作がスラムに暮らす抑圧された都市貧困者(それがこの場合ダリットなのだが)の怒りと変革への意思をテーマとしているのは映画を半分居眠りして観ても分かることだが、どうもランジット監督はこの「黒と白」に託して、そうした差別/抑圧を生む原因となるインド人のそこはかとない意識/固定観念まで問題にしようとしていると思われるのである。

・ラジニカーント演じるカーラの本名「カリカーラン」となるとその意味は難しく、おそらくサンガム文学期のチョーラ朝の王の名前から取られたものだろうが、通称の「カーラ」となると、素直に「黒」と解釈していいだろう(これもサンスクリット語とタミル語では意味が違うはずだが)。「黒」の表すものは、汚れ/穢れ、悪、死など、否定的なものが多く、ヒンドゥー教のパンテオンではヤマやカーリー、ラーヴァナなどの曲者が関連付けられる。

・他方、ナーナー・パーテーカル演じるハリ・ダーダーに付与された「白」と名前が表すものは、清潔/純粋、高貴、正義などで、パンテオンではヴィシュヌやラーマなど、ヒンドゥー教の表看板的な主神に関連付けられる。(実際、ハリ・ダーダーは「Clean and Pure」政策として黒いスラム民を駆逐しようとし、大真面目に自らをラーマとしてラーヴァナのカーラを討とうとしている。)

・この黒のカーラと白のハリ・ダーダーが実在する人物(政治家など)の比喩ではないか、と想像するのは無意味なことだろう。おそらくランジット監督がこの娯楽映画でやろうとしたことは特定の政治家やその政策を批判/称揚することではなく、もっと根源的なインド人の差別意識を問題としたかっただろうから。

・この「白」に対するポジティブなイメージ、「黒」に対するネガティブなイメージは、悲しいかなカースト制度のヴァルナとおおよそで対応していて、やはり高カースト者(例えばブラフミン)は白く、低カースト者(例えば南インドのSC、ST)は黒いという通念になっている。そこでランジット監督がダリット解放を訴えたければ、この白と黒の価値の転倒を図り、「Black is clean / noble / justice」と言わなければならないのだが、その象徴として描き出されたのがカーラという人物だろう。

・しかし、この試みは容易なことではない、というか、ほとんど不可能だと思う。というのも、長らく南インドの地方都市に暮らしてきた私の経験からすると、インド人(主にヒンドゥー教徒)のこの差別意識/固定観念、例えば「北インドと南インド」、「アーリヤ人とドラヴィダ人」、「高カーストと低カースト」、「肌色の白と黒」という区別(いずれも前者が優越していると見なされいる)は、あたかもインド人のDNAの次元にまで深く刻み込まれているようなものなので、いくらアンベードカル博士が憲法で不可触民を否定しても、この差別意識がなくなるまでは何百年とかかるだろうから(そうなると、その頃にはラーマもラーヴァナもいなくなっているだろう)。

・しかし、それでも私はランジット監督にエールを送りたい。

◎ 配 役 : ★★★★☆
◎ 演 技
・ラジニカーント(カーラ役) ★★★★★
 「俳優」ラジニの演技が見たいという私の希望は【Kabali】でも満足のいくものだったが、本作ではさらに上を行っており、それこそオヤジ臭さえ感じられるもので、いたく満足した。右腕の「ザリーナ」というタトゥーがいじらしかった。
 (写真下: スラムの少年たちとクリケットに興じるシーンから入るとは、意表だった。)

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・ナーナー・パーテーカル(ハリ・ダーダー役) ★★★★☆
 素晴らしい悪役で、流石としか言いようがない。何度かあるカーラとの対面シーンでの心理的プレスの掛け合いは緊張感があった。
 (写真下: 徹底して白にこだわっていた。)

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 しかし、映画を離れた白と黒の抱擁は微笑ましいものがある。

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・フーマー・クレーシー(ザリーナ役) ★★★☆☆
 この、いかにも北インドなムスリマ美女がどんな顔してタミル映画に出るのか注目だったが、顔より先にケツのデカさに目が行ってしまった(いや、良かったという意味です)。肌の白黒という点では彼女は白だが、それでもスラム民の味方とするために、イスラーム教徒と設定したのは正解だろう。

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・アンジャリ・パーティール(チャールマティ役) ★★★☆☆
 「嵐(Puyal)」というニックネームを持つ勝気なスラム娘を演じたこのお方は、どこかで見た顔だと思っていたら、テルグ映画【Naa Bangaaru Thalli】(14)で主役を務めた女優だった。タミル人だと言われても違和感のない顔だが、マラーター人と設定されていたようだ。

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・イーシュワリ・ラーウ(セルヴィ役) ★★★☆☆
 どこかで見た顔だと思っていたら、テルグ女優で、主人公のお母さん役などでよく見ているお方だった(例えば、【Nenu Local】)。記憶に残らない顔だなぁ。しかし、本作ではしっかりとした役を与えられており、感動ポイントの1つを作っていた。

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・ディリーバン(セルヴァ役)
 このお方もどこかで見たと思っていたら、【Vathikuchi】(13)に主演したディリーバンだった。確かA・R・ムルガダース監督の弟だったように記憶しているが、定かではない。
 (写真下の左。相変わらずむさ苦しい。)

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・その他、脇役にも特記したい人がごろごろいたが、一人だけ挙げるとすると、警官役のアラヴィンド・アーカーシュ。この人の役名の「シヴァージ・ラーオ・ガーイクワード」はご存知ラジニカーントの本名。

◎ 音 楽 : ★★★★☆
◎ BGM : ★★★☆☆
・音楽は、何と言ってもラップ・ミュージックがカッコよく印象的で、おお、サントーシュ・ナーラーヤナンはラップも得意なんだと驚いていたら、すでに【Madras】(14)でもやっていたのだった。カーラの登場曲などで聴こえる破壊力のある声はどこかで聞いたことがあると思っていたら(「どこかで」ばかりだが)、やはりYogi Bが歌っているのだった。
 (写真下: ヨーギ・B(左)とサントーシュ・ナーラーヤナン。)

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・ヨーギ・Bはタミル映画のあちこちで歌っているが、これを機に私の好きな【Laadam】(09)から2曲をリンク付けしておく(過去に一度紹介したが)。
https://youtu.be/fLGKHqbPUhM
https://youtu.be/rJEeKJGXzXo

◎ アクション : ★★★☆☆
◎ 美 術 : ★★★★☆
◎ 衣 装 : ★★★★☆
◎ 撮 影 : ★★★★☆
◎ 編 集 : ★★★☆☆

◎ その他(覚書)
・実は私がこの映画を観に行ったのは6月9日(土)のモーニングショーだったが、映画館前にカンナダ活動家が集まって騒いでおり、上映中止を呼び掛けていた。ラジニがカーヴェーリ川水利問題に関してカンナダ人の感情を逆撫でするような発言をしたのがけしからんという主張だった。しかし、映画は予定どおり始まったので、安心していたら、開始20分ほどで映写が止まり、映画館の外に追い出された。で、翌日に改めて別の映画館で鑑賞した。暴力沙汰じゃなくてよかったが、不愉快な経験をした。

◆ 完成度 : ★★★★☆
◆ 満足度 : ★★★★☆
◆ 必見度 : ★★★★☆

◆ 鑑賞データ
・鑑賞日 : 6月10日(日),公開第1週目
・映画館 : Gopalan Cinemas (Arch Mall),09:45のショー
・満席率 : 7割
・場内沸き度 : ★★★★☆

 (オマケ画像: これも白と黒の例? ナレンドラ・モーディー首相とクマーラスワーミ・カルナータカ州首相。)

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