カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Cyanide】 (Kannada)

<<   作成日時 : 2006/09/10 22:00   >>

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 2、3ヶ月前の新聞で、LTTE(Liberation Tiger of Tamil Eelam)のスポークスマンが、1991年のラージーヴ・ガーンディー元首相暗殺事件について「深く遺憾に思う歴史的悲劇だった」と述べ、LTTEの犯行だったことを事実上認め、謝罪していた。この記事を読んで、「あの事件も歴史的出来事として風化しつつあるのかな?」と思っていたら、この映画が公開された。
 「Cyanide」は青酸カリのことで、LTTEのテロリストがいつでも自殺できるように、カプセルに入れて首にかけているもの。

【Cyanide】 (2006 : Kannada)
脚本・監督 : A.M.R. Ramesh
出演 : Ravi Kale, Malavika, Rangayana Raghu, Tara, Avinash, Nasser
音楽 : Sandeep Chowta
撮影 : Rathnavelu
編集 : Anthony
制作 : Halappa, Kenchappa Gowda

《あらすじ》
 1991年、ラージーヴ・ガーンディー元首相暗殺事件の実行犯とされるシヴァラサン(Ravi Kale)らのテログループが、タミル・ナードゥ州を出てカルナータカ州バンガロールに潜伏しているという情報が入り、バンガロール警察内に緊張が走る。警官隊が彼らの隠れ家とおぼしき所を急襲するが、すでにテロリストたちの姿はなかった。
 適当な隠れ家を探していたシヴァラサン一味は、かつてLTTEの支援者だったランガナート(Rangayana Raghu)という男を探し出し、脅迫して彼の家に寄生を始める。夫の過去を知らなかった妻のムリドラ(Tara)はテロリストにおびえる苦悩の日々が始まった。
 シヴァラサンはランガナートを巧みに利用し、自分たちの新たな隠れ家と少年兵たちをかくまう場所を見つける。
 7人のテロリストたちは新たな隠れ家に移動するが、ランガナート、ムリドラ夫妻も連れて行く。
 一方、少年兵たちのアジトは住民の通報により警察に発覚し、彼らは全員青酸カリを服毒して自殺する。その少年のシャツのポケットから、彼らとランガナートの関係を示唆するメモが見つかる。
 ケンパイア(Avinash)率いる捜索チームの捜査が進む。そして遂に、ムリドラの保護に成功し、彼女の口から決定的な証拠が得られた。
 直ちに捕獲作戦がとられ、シヴァラサンらの隠れ家は警察隊・機動隊によって幾重にも取り巻かれるのであった、、、。

   *    *    *    *

 上にストーリーを書いたが、もちろんこれはフィクションではなく、実際の出来事を忠実に再現したものだ。バンガロールに来てから死ぬまでの、テロリストたちの20日間を描いたもので、ドキュメンタリー映画かと思えるほどリアルなものだった。シーンの変わり目には必ず日付や時刻が入り、事実を正確に伝えようという強い意志が感じられる。
 私はよく知らないのだが、俳優たちも実在のテロリストたちとそっくりに扮しているらしい。

 監督・脚本のA.M.R. Rameshは、これが2作目だそうだが、技術的にかなり上手い。
 アップを多用し、テロリストたちの細かな表情や息づかい、おびえるランガナート夫妻の表情など、巧みに表現していた。
 もちろんダンスシーンなどは一切ない。代わりに、効果的な音響で緊張感を創り出しており、ラストシーンの手前まで緊張感が途切れることがなかった。
 ただ残念なのは、最後の捕獲作戦のシーンに迫力がなく、あっけなかった。事実があんな感じで、アクション映画のようにドンパチやったわけではないのかもしれないが、いちおう劇場映画なのだから、見せ方にもうひと工夫ほしかった。

 ユニークなのは、テロリストたちの人間的な側面にも光が当てられていたこと。
 部屋にいたネズミを可愛がるテロリストもいれば、女テロリストのシュバ(Malavika)のように、テレビで映画を見て涙ぐみ、ムリドラとの会話の中で女らしい一面ものぞかせるテロリストもいる。

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 7人が死ぬシーンでは、フラッシュバックでそれぞれの過去を垣間見せていた。常人と変わらぬ田舎での平凡な暮らし。時代が時代なら、場所が場所なら、彼らもテロリストにはならなかったであろう。
 しかし、彼らはテロリストになり、死ぬ運命を選んだ。
 何故? これがおそらくこの作品のテーマなのだろう。

 うれしいのは、この映画がそこそこヒットしているということである。もう2ヶ月以上前にリリースされたのだが、いまだに上映されている。美男美女もスーパースターもいず、ダンスシーンもコメディーシーンもないこの映画が大衆に支持されているというのは珍現象に近いだろう。
 やはりラージーヴ・ガーンディー元首相暗殺事件というのがいまだ風化などしておらず、インド人の関心を引き続けているからなのだろうか。または、こういう新しいテイストの映画をインド人が求めだしたということなのだろうか。

 LTTEがらみの映画ではこれまで【Kannathil Mutthamital】(02)や【The Terrorist】(99)のような秀作があったが、ここにもう一つ、秀作が加わったように思う。

・満足度 : 3.5 / 5

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