カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Unnale Unnale】 (Tamil)

<<   作成日時 : 2007/06/18 21:10   >>

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 近ごろのボリウッドでは、【Nishabd】や【Life In A... Metro】、【Cheeni Kum】など、「多様化する恋愛の形」を描いた作品が多いが、こういった作品が現れるのもインド随一の先進都市・ムンバイのなせる業なのかな、とも思われる。
 たぶん私が知らないだけだろうが、南インドではまだこんなタイプの映画はお目にかからず、はて、チェンナイやバンガロールでもこんな映画が作られるだろうか、と考えた場合、ピンと来るものがなかった。(もちろん、そういう作品を作り得る人材はいるはずだが、それを理解し支持する観客層はあまり大きくないと思う。)
 だが、そうなると何とか南インドでも新感覚の恋愛映画を発見したい欲望に駆られる。それで、このタミル映画の【Unnale Unnale】であるが、SUN TVを見る限りハリス・ジャヤラージの音楽は気持ちが良いし、クールなラブ・ストーリーっぽかったので、「もしや」という期待感があった。その反面、非常にチープな三角関係の物語ではないかという不安もあり、ずいぶん迷ったが、、、観て正解だった。

【Unnale Unnale】 (2007 : Tamil)
物語・監督 : Jeeva
脚本 : S. Ramakrishanan
出演 : Vinay, Sada, Tanisha, Raju Sundaram, Sathish, Srinath, Lekha Washington
音楽 : Harris Jayaraj
撮影 : Jeeva
編集 : V.T. Vijayan
制作 : V. Ravichandran

《あらすじ》
 カルティク(Vinay)とジャンスィ(Sada)はまさに破局の時を迎えていた。
 カルティクはチェンナイのソフトウェア・エンジニア。非常に外交的で、楽しいこと好きな性格。対してジャンスィは内向的で潔癖な性格だった。
 二人は寺院のお祭りで出会い、交際を始める。生真面目なジャンスィはカルティクに自分だけを見つめるよう要求したが、社交的なカルティクは他の女友達とも和気あいあいとやるのを当たり前のように振舞っていた。ジャンスィはそんなカルティクの態度が気に入らず、じりじりと嫉妬心に苛まれ、心底からカルティクを信頼できないでいた。
 カルティクの誕生日に、ジャンスィは女友達をおとりに使い、彼を誘惑させる。カルティクはその誘惑に何気なく応じるが、それを見たジャンスィはとうとう彼に見切りをつけ、平手打ちを食らわせて、オーストラリアへと旅立つ。
 そうこうしているうちに、カルティクに辞令が下り、オーストラリア勤務となった。飛行機の中で、カルティクはディーピカ(Tanisha)という、非常に開放的で愉快な女性と出会い、仲良くなる。メルボルン到着後、カルティクはディーピカのルームメイトが偶然にもジャンスィであることを知る。
 再会したカルティクとジャンスィ。二人はよりを戻そうともするが、結局は同じことの繰り返し。彼らのチェンナイでの経緯を知ったディーピカは、何とか二人を結び付けようと動くが、その過程で自分自身がカルティクに惹かれていることに気付く。
 ある日、カルティク、ジャンスィ、ディーピカの3人は友人宅のホームパーティーへと出かける。食事のとき、恋愛についてが話題になり、意見が同じだったカルティクとディーピカはすっかり意気投合し、盛り上がる。その様子を見たジャンスィはいたたまれなくなり、そっとパーティー会場を抜け出す、、、。

   *    *    *    *

 この作品が新鮮に感じられたのは、通常のタミル映画の道具立てを全く無視している点だ。アクションシーンも大仰なコメディーシーンもなく(全体的にコメディタッチではあるが)、悪徳警官も大物政治家(及び、その息子)も出て来ない。
 主人公に対立する厳格な父親も登場しない。というか、そもそも家族がストーリーに関わる形で登場していない。3人の主要登場人物はそれぞれ性格が違っているが、共通しているのは、3人とも自分のことは自分で面倒を見たい、と考えている点だ。この「自立する自我」ということは恋愛には重要な前提条件となる。

 テーマはずばり「やきもち」。
 おそらく、ジーワ監督は新しい若者たちの恋愛像そのものを描きたかったのであり、恋愛がうまく行く条件とか相性とかをカメラで追求したかったのだろうと思う。その過程(カルティクとジャンスィの絡み)でジャンスィの嫉妬心をリアルに表現することに成功し、それがこの作品を特徴付けているので、あえて「やきもち」がテーマだと言いたい。
 実際、恋愛のただ中にいる人は、その甘美さと同時に、じりじりと迫り来る「嫉妬」の苦しみとも向き合わなければならない。それをきちんと捉えた映画というのはインドでは珍しいように思う。もちろん、インド映画でもヒロインがやきもちを焼くシーンは五万とあるが、これはそれらとは次元を異にしている。
 恋愛映画とは、そもそも男と女が出会って愛し合うまでのプロセス、そして結婚するなり別れるなりするまでのプロセスを追うことそのもので一つの作品ができるはずなのに、インド映画ではその辺がおろそかで、結局はアクションや家族ドラマの付け足しみたいになっている。ところがこの映画では、カメラが3人の言動を丹念に捉え、恋愛の一つのテストケースとして実験的に追求して行こうとしている節さえある。これはかなり新鮮な試みであり、タミル映画というよりはよっぽど柴門ふみの漫画に近い。

 と、こんなふうに書いていくと、この作品がボリウッド映画や欧米の映画にぐっと近づいていることが分かる。それは同時にタミル映画の特徴が失われていることも意味し、それはそれで寂しい気もする。しかし、たまにはスーパーヒーローもヴァディヴェールもナーサルも登場しないタミル映画というのもいいと思う。

 映画の結末、つまりカルティクがどちらと結ばれるか、ということについては、私は予測を裏切られた方だ。しかし、この結論には意見が分かれることだろう。

◆ パフォーマンス面
 主人公・カルティクを演じたのはVinayというバンガロール出身の新人。スチールを見る限り、ぬぼっとした感じで、どうかとも思ったが、映画の中ではまずまずだった。少なくとも役柄とは合っていた。ソフトウェア・エンジニアという設定で、このところ南インド映画のヒーロー・ヒロインが意味もなくソフトウェア・エンジニアであることが多いが、この作品ではそれがぐっと必然度を増してくる。また、彼はラグビーの選手という設定だったが、これは今年ラグビーのW杯が開催されることの影響か?(去年は主人公がサッカー選手という映画がいくつかあった。)

 ヒロインのジャンスィを演じたサダーは、上にも書いたとおり、嫉妬に苦しむ役柄を見事に演じており、おそらく彼女の最高の演技になると思う。
 (写真トップ&下:VinayとSada。)

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 もう一人のヒロイン、ディーピカを演じたタニーシャはあの大女優・カージョールの妹。カージョールを期待して映画を観るとがっかりするが、まぁ、役柄とは合っていた。ただ、ちょっと浮ついた感じがあり、そこがこの映画の弱点だと思う。
 (写真下:VinayとTanisha。)

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◆ テクニカル面
 ハリス・ジャヤラージの音楽は当たり。ただし、ダンスシーンの映像は意図不明のものもあり、良かったり悪かったり。
 監督のジーワは撮影も担当。そのせいか、映像は非常にクリアでスタイリッシュだった。【Dil Chahta Hai】や【Kal Ho Naa Ho】を思い起こさせる美しさだった。

◆ 結語
 【Unnale Unnale】は私的には印象に残る佳作で、小ヒットぐらいはすると思う。しかし、後からシャンカル監督&ラジニカーント主演の話題作【Sivaji】が台風の勢いでやって来たため、吹っ飛んでしまうかもしれない。

・満足度 : 3.5 / 5
 

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