カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Billa】 (07 : Tamil)

<<   作成日時 : 2008/01/21 23:50   >>

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 いよいよアジット主演のタミル映画、【Billa】について書くときが来た。
 前回で触れたとおり、これはラジニカーント主演の【Billa】(80)のリメイクで、つまりはアミターブ・バッチャン主演の【Don】(78)、シャールク・カーン主演の【Don】(06)のリメイクでもあるわけだ。
 今回、運良く【Billa】(80)のDVDも手に入ったので、またまた酔狂、4作見比べをしてしまった。
 ちなみに、大本の【Don】(78)のリメイクとしては、テルグ版【Yugandhar】(79年:NTR主演)とマラヤーラム版【Sobharaj】(86年:モーハンラール主演)もあるらしく、非常にそそられるものがあるが、今回はそこまで手が回らなかった。

【Billa】 (2007 : Tamil)
脚本・監督 : Vishnuvardhan
出演 : Ajith Kumar, Prabhu Ganesan, Nayanthara, Namitha, Rahman, Adithya, Rose Dawn, Santhanam
音楽 : Yuvan Shankar Raja
撮影 : Nirav Shah
編集 : Sreekar Prasad
衣装 : Anu Vardhan
アクション : William Wong
制作 : L. Suresh Balaji

《あらすじ》
 ビッラー(Ajith)はマレーシアを中心に暗躍するマフィアの大物で、複数の国の警察から指名手配されていた。警視副総監のジャイプラカーシュ(Prabhu Ganesan)はマレーシアで捜査チームを結成し、アニル(Adithya)や国際警察のゴーカルナート(Rahman)らと共にビッラー逮捕に専心していた。彼の逮捕が組織の全貌解明、並びに、黒幕とされるジャグディーシュの逮捕につながると考えられたからである。
 ビッラーはある時、裏切り者のラージェーシュを抹殺する。復讐に燃えるラージェーシュの婚約者(Rose Dawn)は、警察に協力し、ビッラーを誘惑して罠にかけようとするが、あえなく殺される。
 また、ラージェーシュの妹のサーシャ(Nayanthara)は、ビッラーへの復讐のためにクンフーを習い、彼の組織の一員になることに成功。いつでもビッラーの命を狙える位置にいた。
 ある日、ジャイプラカーシュはビッラーを追い詰め、逮捕寸前まで行くが、ビッラーは命を落としてしまう。
 ビッラーが死んではジャグディーシュ逮捕も不可能になると考えたジャイプラカーシュは、ビッラーの死を秘密にし、彼に瓜二つのヴェールという男を替え玉に仕立て、ビッラーとして組織に送り込む秘策を練る。
 ヴェール(Ajithの二役)はケチなコソ泥だったが、善良な男で、孤児の少年を1人養っていた。ジャイプラカーシュの依頼に対してひるむヴェールだったが、少年にきちんと教育を受けさせることを条件に、引き受ける。
 厳しい訓練の後、ヴェールはビッラーとなり、組織に戻される。
 ヴェールはスパイとして、ビッラーのコンピュータから組織のデータを探し出し、ペンドライブ(USBメモリー)にコピーしてジャイプラカーシュに手渡す。
 ある時、サーシャがヴェールを殺そうとするが、ジャイプラカーシュが「この男はビッラーではない」と真実を告げる。以降、サーシャは二人の協力者となる。
 ある晩、とあるホテルで組織の会合が行われることになっていたが、ヴェールから情報を得ていたジャイプラカーシュらは張り込みをかける。その折、ヴェールはビッラーの情婦、CJ(Namitha)に正体を悟られ、やむを得ず彼女を撃ち殺してしまう。
 警察はホテル内に踏み込み、組織の一味を逮捕する。だが、ジャイプラカーシュも何者かによって射殺されてしまい、ヴェールも逮捕される。
 ヴェールは捜査チームのアニルと国際警察のゴーカルナートに尋問を受ける。彼は「私はビッラーではない」と主張するが、秘密を知る唯一の人物、ジャイプラカーシュが死んだ今は信じてもらえない。ヴェールはペンドライブのことを証拠として挙げるが、ジャイプラカーシュの家を捜索してもペンドライブは見つからなかった。
 拘置所に搬送される際に、ヴェールはなんとか脱走に成功し、サーシャと合流する。
 ヴェールは警察とマフィアの双方から追われることになる。マフィアはヴェールの養子のことを知り、その子を誘拐する。行き詰ったヴェールの前に、ペンドライブを持ったアニルが立ちはだかる、、、。

   *    *    *    *

 素晴らしい
 何が素晴らしいと言って、アジットだ。
 この映画のアジットはカッコいいの一言に尽きる。
 もともとハンサムで男っぽい俳優だとは思っていたが、こうまで取り憑かれたようなカッコよさのアジットは初めて見た。彼にとっても久々の快作であるに違いない。私なんぞ、早速、映画と同じ型のサングラスを買ったほどだ。(で、全然似合わないので笑っちゃいましたが。)
 アジットが嫌いな人には強いて薦めないが、そうでなければ、彼を見るだけでもこの作品は一見の価値がある。

 リメイク作品としても上出来だ。
 映像的には現在のインド映画としてはトップレベルの技術と質だと思う。
 アクション監督はハリウッドのWilliam Wongという人が担当しているらしく、それがいいかどうかは別として、カー・チェイスを含めアクション・シーンは冴えていた。

 映像面だけでなく、内容的にも面白かった。
 前半はオリジナルの【Don】(78)、【Billa】(80)とほぼ同じだが(スタイルは全然違う)、後半はずいぶん違っていた。
 一番大きな変更点は、金庫破りの名人のエピソードがバッサリ省かれていたことだ。他の【Don】諸作にはJJという金庫破りの名人が登場し、それが非常に味わい深い人物だったので、もう一人の主役とさえ言われていた。それが、この【Billa】(07)には登場しないのである。
 これを残念だと感じる人も多いようだが、私的には、このエピソードがなくてもストーリーが十分成立することが分かり、さっぱりと単純になって良かったと思っている。
 クライマックスももちろん違っている。シャールク・カーンの【Don】ほどのびっくり仰天のオチではないが、これもうまく盛り上げてオチをつけていた。
 過去3作の【Don/Billa】は評価が高かっただけに、制作に当たってはさぞやプレッシャーがあったことだろう。しかし、この【Billa】(07)も前3作に対して決して恥じない出来だと思う。

 ところで、組織の真の黒幕は誰か?というのが【Don/Billa】の注目ポイントの一つだが、【Don】(78)と【Billa】(80)では国際警察の男だった。それが【Don】(06)では警視副総監と、大きく転換していた。
 果たして【Billa】(07)では副総監なのか?国際警察なのか?はたまた別の人物なのか?、、、それは私の口からはよもや明かすまい。(親切一杯のWikipediaには書いてあるけど。)
 (写真下:人相の悪い男たちだが、みんな警察関係。この中に黒幕はいるのか?)

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 と、ここでシャールク・カーンの【Don】(06)について苦言を一言。
 この映画は面白く、ヒットし、ボリウッド映画ファンの間でも人気の高い作品であるのは確かだが、私は後にオリジナルの【Don】(78)を観て以来、腑に落ちないものを感じていた。
 それは、シャールクの【Don】ではドンの替え玉とされた男(ヴィジャイ)が実は替え玉でなく、ドンそのもので、替え玉はドンにさっさと殺されていたという、どんでん返しにどんでん返しがくっついたようなオチになっていたことだ。
 これは、ひねりすぎの嫌いがあるだけでなく、インド映画的に見てもどうかと思う。
 そもそも【Don/Billa】の面白さは、小心者で金もない(しかし善良な)男がひょんなことからマフィア殲滅の立役者となり、真のヒーローになる、というところにあると思う。それが娯楽インド映画を見る庶民の支持を集めた理由だと思う。
 だが【Don】(06)は、結局のところ、「悪のシンボル」と言われ、人間味のかけらもないドンが、善良な男を抹殺してまで生き延びるというストーリーに変わってしまっている。ここには頭でひねり出した面白さはあっても、夢と希望の源となる健全な力はない。
 その点、【Billa】(07)はオリジナルに即しており、アジット演ずる朴訥なヴェールのキャラとも相俟って、好感が持てた。

 もちろん、この映画にも欠点はある。
 一つだけ挙げておくと、ヒロイン、サーシャ役のナヤンターラが活きていなかったことだろう。
 この役には、過去、Zeenat Aman、Sripriya、Priyanka Chopraがやっており、それぞれ活き活きと印象に残る活躍をしている。(個人的には【Billa】(80)のSripriyaが気に入っている。)
 だが、このナヤンターラは、登場の仕方はカッコよかったのだが、尻すぼみだったと思う。彼女ならもっとできたはずなので、残念だ。

 ヒロインが出たついでに、他の2人についても書いておくと、、、
 ビッラー(ドン)を誘惑する女の役は、【Don】(78)でも【Billa】(80)でもヘレンがやっており、インド映画史上でも有名な1シーンとなったのだが(【Don】(06)ではカリーナー・カプールがやっている)、この【Billa】ではRose Dawnという新人がやっていた。別に文句をつけるつもりはないが、過去3作に比べて、華がなかったのは事実だ。
 その代わり、ビッラーの情婦という、さして重要でない役にフェロモン女優のナミターがついていた。この映画のナミターはどきっとするほどの美しさだったが、ダンス・シーンでは「あちゃ〜」だった。彼女ほど背丈がある女性があれだけ脂肪をつけると、もはや「グラマー」とは呼ばれないだろう。「巨漢」だ。少なくとも、ダンスだけはもう一度稽古したほうがよさそうだ。
 (写真下:ナヤンターラ(左)とナミター。ともにエッチだ。)

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 あと、小ネタの比較としては、、、
 組織のデータが記録された媒体として、【Don】(78)と【Billa】(80)では「赤い手帳」、【Don】(06)では「フロッピーディスク」、本作では「USBメモリー」だった。
 また、過去3作の替え玉の男は「パーン」を好んで食べるのが特徴だが、【Billa】(07)ではパーンのパの字もなし。
 【Billa】(80)のラジニカーントはパイプ、たばこをぷかぷかふかしていたが、【Billa】(07)では「ビッラーはたばこは吸わない」という設定だった。
 こんなところにも時代の移り変わりがよく現れている。
 (ついでに書いておくと、【Billa】(80)ではアクション・シーンになぜかマノラマおばさまが登場し、ラジニと共に大活躍していた。彼女には特別賞を差し上げたい。)

 まだまだ書きたい点はいろいろあるが、残りは皆さま各自のお楽しみということにしよう。
 私としても、可能ならぜひNTR版、モーハンラール版の【Don】も観てみたいものだ。

・満足度 : 3.5 / 5
 

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