カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Taj Mahal】 (08 : Kannada)

<<   作成日時 : 2008/08/12 21:12   >>

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 アジャイ主演のカンナダ映画。
 【Excuse... Me】(03)の大ヒットで時の人になりかけたアジャイくんだが、その後、特にスター戦線に躍り出ることもなく、地味な存在だった。あれから5年、端正なマスクにいささか渋味も増し、近ごろは‘Royal Star’の称号もいただいているようで、どこまで成長したか注目したい。
 お相手のプージャ・ガンディーも‘Beauty Queen’という称号が付き、サンダルウッドのシンデレラガールから看板女優へと、順調に歩みを進めているようである。
 (写真上:AjayとPooja Gandhi。)

【Taj Mahal】 (2008 : Kannada)
物語・脚本・監督 : Chandru
出演 : Ajay, Pooja Gandhi, Anant Nag, Padmaja Rao, Rangayana Raghu, Suresh Mangalore, Ashok, Aravind, Kurigalu Sunil
音楽 : Abhiman
撮影 : K.S. Chandrashekhar
制作 : Shivashankar Reddy

《あらすじ》
 うだつの上がらない映画助監督のアショーク(Ashok)は、バスの中で青年が忘れて行ったノートを見つける。そこには風変わりな日記が綴られていた。
 ・・・アジャイ(Ajay)はバンガロールにある工科大学の学生。彼の実家は農村部の貧農で、両親は彼が技術者になることに非常な期待を寄せ、大学生活の援けにと牛を売ってバイクを買い与えたりもしていた。しかし、アジャイは同じ大学に通うシュルティ(Pooja Gandhi)という女性に首ったけだった。といっても、朝会って「お早う」と言い、廊下ですれ違っては会釈をするだけ。そんなことを3年も続けていた。
 シュルティは裕福な家庭の娘で、ビジネスマンの父(Anant Nag)はニューヨーク在住だった。彼女にはクマールという愛する人がいた。父が大切な書類ケースを失くしたとき、見つけて警察に届けてくれたのがクマールだった。警察で聞いた携帯電話の番号を頼りに、シュルティはクマールと連絡を取り、以来、彼女はクマールの顔を一度も見ないまま、電話を通して信頼感を深めていた。
 ある時、アジャイがシュルティの誕生日に彼女をコーヒーに誘ったのがきっかけで、二人は親しくなる。シュルティはアジャイに帽子と時計をプレゼントする。それに力を得たアジャイはシュルティに自分の気持ちを告白する。しかし彼女は彼に平手打ちを食らわせ、クマールのことを話す。
 だが、驚いたことに、そのクマールとはアジャイ自身に他ならなかった。彼はある時電話の相手がシュルティであることに気付いたが、行き掛かり上打ち明けられず、ずるずると二重人格を演じ続けていたのである。
 アジャイは自分がクマールであることを知らせようとシュルティに接近するが、それが逆効果となり、彼女は彼に強い嫌悪感を抱くようになる。アジャイの友人たちは彼にシュルティを忘れるよう説得し、アジャイも学業に集中しようとする。
 そんな時にシュルティの父の顧客がインドへ来る。父は娘に顧客の接待を頼むが、それはちょうど定期試験の日だったので、彼女はクマールに代役を依頼する。アジャイは試験を受けずに、顧客をマイソールに案内する。
 これがきっかけでアジャイは放校処分になる。友人たちも彼を見放す。田舎へ帰る前に、もう一度シュルティの家に行ったアジャイは、たまたま帰国していた彼女の父に撃ち殺されそうになる。失意のうちに、彼は田舎行きのバスに乗り込む。・・・
 この日記を映画化しようと考えたアショークはプロデューサーに掛け合う。プロデューサーはクライマックスを作ることを条件に彼に金を渡す。アショークはアジャイについてさらに調べるために、彼の工科大学へと赴く、、、。

   *    *    *    *

 異色作だ。
 アジャイとプージャ・ガンディーの取り合わせで、タイトルが【Taj Mahal】と来れば、正統的なラブストーリーを予想するものだが、テーマといい筋運びといい、かなり変則的な悲恋物語だった。
 しかし、評価できる作品だ。

 監督のチャンドルーはこれがデビュー作。やはりカンナダ映画界の新人監督デビュー・ラッシュは続いているようだ。
 彼は本作で原作と脚本も手がけているが、なかなか気の利いたことをしている。
 実は、物語そのものは実話に基づいているらしい。そのストーリー自体は単純なのだが、微妙なテーマを巧みな脚本で効果的に描き出していたと思う。
 ただ、タイトルの【Taj Mahal】について言うと、映画中にはタージマハルに関する映像も台詞も一切なく、あの歴史的建造物とはほぼ関係がない。で、チャンドルー監督はひょんな思い付きからこのタイトルを決めたらしいが、「Taj Mahal」という題名の映画は過去にも何作かあるので、これはやめたほうがよかったかなと思う。

 同一の男が同一の女性に、電話を通しての声だけの関係では強く慕われているのに、目を通して実体として見られる関係では激しく嫌われるという、皮肉な男女の関係が取り上げられている。
 バンガロールでも近ごろ「モバイル・ラブ」という言葉を時おり聞く。携帯電話のちょっとしたイタズラ電話やSMSから恋愛関係に発展し、時には結婚にまで至る。しかし、それがうまく行かない場合も多く、「軽い」、「薄っぺらな」、「刹那的な」恋愛の形を問題視する声もよく聞く。先日紹介した【Neene Neene】も、そういう「モバイル・ラブ」が本当の愛に成長する過程を描いたものだった。
 本作は、モバイルを通して形成される、実体を伴わない人間関係に潜む落とし穴を抉り出したという点で、非常に今日的な作品になっていると思う。

 ところで、チャンドルー監督というのはプレム監督の弟子でもあるらしい。
 プレム監督といえば、やはりアジャイが主演した【Excuse... Me】で、「一度も会ったこともない人を愛せるか?」という問いに対して「愛とは心と心の出会いであり、目と目の出会いではない」と肯定的な結論を与え、非常にプラトニックな美しい映画を作り上げている。
 しかし、この【Taj Mahal】で弟子のチャンドルーが描き出したのは、そう理想化された形で事が運ばない実例もあるということであり、この対比が興味深かった。もちろん【Taj Mahal】のほうがインドの若者たちの現実をより反映していると思われる。

◆ パフォーマンス面
 主人公アジャイ/クマールを演じたアジャイはかなりの熱演で、おそらく【Excuse... Me】と並ぶ彼の代表作となるだろう。ただ、線が細いというか、「普通の人」という印象は相変わらずで、やはり大スターへ飛翔するような強さは今回も見られず、残念だった。

 プージャ・ガンディーはまずまず頑張っていたと思う。
 パンジャブ出身の彼女は今回もセリフは吹き替えだが、なかなかの頑張り屋さんでカンナダ語もしっかり勉強しているらしく、近々地声での演技が見られるかもしれない。

◆ テクニカル面
 Abhimanの音楽は評価が高く、ヒットもしている。しかし私には、音楽もダンス・シーンも、もう一つぱっとしたものは感じられなかった。

◆ 結語
 【Taj Mahal】は、バンガロールに暮らす若者たちの実態を新しい視点で描き出した佳作で、先日紹介した【Neene Neene】や【Moggina Manasu】にも連なる作品だ。
 どこまで大きな声でオススメすべきか分からないが、少なくとも私は観てよかったと思っている。

・満足度 : 3.5 / 5
 

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