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近ごろ、低予算の若者向けラブストーリーが客を集めているテルグ映画界。 とはいえ、やはり何が起きるか分からないのがインド映画界。ここにたっぷり予算を注ぎ込んだ凄そうなホラー映画が登場した。しかも、大ヒット中。 とにかく、この映画のポスター、スチール写真を見ただけで、ただならぬものを感じるだろう。それは、主演のアヌシュカーが、これまでグラマーでセクシーなアイドル系路線を歩んでいたことを知っている者なら、なおさらである。 さらに、監督のコーディ・ラーマクリシュナとプロデューサーのシャーム・プラサド・レッディーといえば、テルグの傑作神様映画【Ammoru】(95)を作ったコンビだ。 インドではホラー映画は珍しいと言われることも多いが、テルグではコンスタントにヒット作が生まれ、最近でも【Mantra】(07)や【Anasuya】(07)など、秀作もある。 この【Arundhati】も、テルグ・ホラーの里程標となり得るだろうか。 【Arundhati】 (2009 : Telugu) 監督 : Kodi Rama Krishna 出演 : Anushka, Sonu Sood, Sayaji Shinde, Deepak, Manorama, Kaikala Satyanarayana, Ahuti Prasad, Chalapathi Rao, Subhashini, Annapurna, Jayalalitha, Siva Parvathi, Meena, Baby Divya 音楽 : Koti 撮影 : K. Senthil Kumar 美術 : Ashok Kumar 特殊効果 : Rahul Nambiar 編集 : Marthand K. Venkatesh 制作 : M.Shyam Prasad Reddy 《あらすじ》 アルンダティ(Anushka)はガドワル地方の王家の末裔。愛するラーフル(Deepak)との結婚式を間近に控え、ハイダラーバードの家では祝祭ムードだった。だが、故郷に住む祖父(Kaikala Satyanarayana)が怪我をしたとの連絡が入ったため、アルンダティは生まれて初めてガドワルの屋敷を訪れる。彼女はそこで祖父や年老いたメイドのチャンドランマ(Manorama)たちと再会する。 この屋敷の近く、小高い丘の頂上に廃れた無人の宮殿があった。アルンダティはラーフルに電話で呼び出され、その宮殿まで行くが、そこで不気味な経験をする。 アルンダティからその経緯を聞いたチャンドランマは、彼女の曾祖母に当たるもう一人のアルンダティについて語り始める。 ・・・時は遡って、1920年代。王女アルンダティ(Anushka)はその毅然とした高貴な人格から、地元の女神の名にちなんでジェージャンマと呼ばれていた。 ジェージャンマには一人の姉がいたが、彼女はいとこのパスパティ(Sonu Sood)という男と結婚していた。パスパティは常軌を逸した女好きで、気に入った女は片っ端からレイプし、殺すことも辞さない男だった。ジェージャンマが敬愛する盲目の舞踊教師も彼に犯され、殺されてしまい、それを苦にした姉はとうとう自殺してしまう。激怒したジェージャンマは村人に命じてパスパティを袋叩きにし、体を馬に牽かせる。 パスパティは死んだものと思われていたが、森の中でアゴーリーの人々(異端的ヒンドゥー教を信奉する苦行者たち)に救われていた。彼はジェージャンマに対する復讐のために、黒魔術を身に付ける。 折りしも、ジェージャンマの結婚式が執り行われた直後に、パスパティは宮殿に現れ、妖術でジェージャンマを攻撃する。格闘の末、ジェージャンマは彼を取り押さえ、とどめを刺すところまで追い詰める。だが、そこに居合わせた僧侶が、この男を殺せばその魂は非常に強力な悪魔に変容する恐れがあるので、生きたまま封印すべきだ、と忠告する。それに従って、パスパティの周りに壁が作られ、マントラを刻んだ札が貼られ、封印される。そして、王家はその宮殿をうち捨て、近くの屋敷に移り住む。 しかし、48日後にパスパティが絶命した直後から、その影響で村の空気や水が汚染され、人々の心も荒むようになった。困惑したジェージャンマは森に住む呪術師たちに伺いを立てるが、彼らが示した解決策はジェージャンマの死であった。彼女はそれを受け入れ、生贄となる。 ジェージャンマの死により、パスパティの霊は静まる。・・・ 時を隔てて生まれたアルンダティこそ、このジェージャンマの生まれ変わりであった。パスパティの霊は復讐のため、再び活発になる。彼はある男を妖術で惑わし、封印を解かせることに成功する。自由になったパスパティの悪霊はいろいろな人物に取り憑き、アルンダティに襲いかかり、彼女に宮殿に来るよう要求する。 彼女はアンワル(Sayaji Shinde)というイスラム教の祈祷師やチャンドランマの助けを借りる。そして、ジェージャンマが残した肖像画から、パスパティの悪霊を倒すための武器(ジェージャンマの骨から作られた剣)の存在を知る。 アルンダティとアンワルはその武器を探しに車で出かけるが、悪霊の妨害で車は事故に遭い、アンワルは谷に転落する。悪霊はさらにアルンダティの家族にも危害を及ぼそうとしていた。アルンダティは仕方なく、一人で宮殿に向かうが、そこには、新月の晩、生前の肉体を取り戻したパスパティが待ち受けていた、、、。 * * * * もう、映画の開始から終了まで、ダムの水が流れ落ちるような勢いの作品だった。 グラフィックスによる幻影的映像の氾濫に、俳優たちのド迫力演技で、2時間15分の短い作品でありながら、質量はたっぷり3時間分あった。 ちょっとは息抜きタイムがあってもよさそうなものだが、そんなことお構いなしに剛速球を投げ続けた姿勢に拍手したい。 さすがテルグ映画だ。肝っ玉が据わっている。 ただ、映画を見終わった直後に、「な、な、何が起こったんだ」という感覚が残り、これは、その凄まじさに呆気に取られたと同時に、どうも私の中で「スベった感」があるようなのだ。 たぶん、通常の恋愛物や復讐物のように、具体的というか、直接的で分かりやすい形で感動ポイントを突いてくるような作品ではなく、本作はつまり、「善と悪の戦い」といった哲学的な、高遠なテーマに還元される作品のように感じられたからだと思う。 まぁ、そんな難しいことは考えずに、活劇ホラーとして、ハリウッドの娯楽映画でも観るような感覚で観ても十分面白い。しかし、どうせなら、本作にみっちりと詰め込まれたディープなインド文化を意識しながら観ると、もっと面白いだろう。 この観点で行くと、私が気にかかったのは「邪教」、「女性」、「ムスリム」の3点だ。これらは現代のインド社会において、何らかの理由で蔑視・異端視されるようになったものだが、実際には無視できない要素としてインドの社会や人々の心の中に陣取っている。 で、私の気がかり点は、、、例えば「善悪の戦い」といっても、本作では単純に「善」と「悪」の二項対立としては捉えられておらず、パスパティに黒魔術を授けるのも、アルンダティに正義の剣を授けるのも、同じように森に棲息して呪術を扱う人々なのである。彼らは何者なのか? どうして現代インドにもこういう人々が存在するのか? また、彼らが扱う「力」とは何なのか? また、本作の主人公ははっきりと「女」で、悪と戦う主体が女だというのが興味深い。もちろん、本作で「悪」とされているのは男の「情欲」で、その被害者たる女が男と戦うのは無理のない発想だが、しかし、男が代わりに戦ってもいい。だが、あえて女を持ってきたのは何故か? このアルンダティ(ジェージャンマ)という女性とその行為を通して象徴されているものは何か? 最後に、アルンダティに協力するアンワルという男は「ファキール」(fakir)と呼ばれるイスラム教の修行者だが、「バガヴァッド・ギーター」にも精通し、厄除けにヒンドゥー教の手法も取り入れる非常に興味深い人物として描かれている。しかし、この人物をムスリムと設定しなければならなかった理由は何か? こうしたことを念頭に置きながら本作を観ると面白いだろうし、また、人によっては違った疑問・解釈も生まれるだろう。もしかすると、そんなことを喧々諤々と議論していく中から、インド文化の一大スペクタクルを発見できるかもしれない。 ◆ パフォーマンス面 まずは、二人のアルンダティを演じたアヌシュカーに脱帽! パスパティの悪霊に翻弄され、怯えまくる2代目アルンダティも色っぽくて良かったが、なんと言っても初代アルンダティ(ジェージャンマ)が素晴らしい。女神にも例えられる凛とした態度、パスパティとの気迫のこもった渡り合いなど、女神女優のラミャ・クリシュナンを髣髴とさせる姿だった。(吹き替えはShilpaという人らしいが、凄い声だ。) 私はこれまでアヌシュカーのことを高く評価していなかったが、彼女の資質を見抜けなかった鑑識眼のなさに、恥じ入るばかりだ。 (写真トップ:血まみれのセクシー女優・アヌシュカーさん。) ちなみに、少女時代のジェージャンマを演じた子役(Baby Divya)も毅然としてカッコ良かった。【Ammoru】でもそうだったが、こういう存在感のある少女を描き入れるのはKodi Rama Krishna監督の趣味だろうか? 凄いといえば、パスパティ役のソーヌー・スードも大変な役柄だった。 彼はテルグ映画では悪役をやることが多いので、大化けしたわけでもないが、今回のエグさは度を越している。王室の一員だったときも女好き、黒魔術師になってからも女好き、悪霊になってからも女好きと、どうしようもなく業の深い男を「熱演」しており、彼の「アンマ〜レ〜、ボンマ〜レ〜」(べっぴんちゃ〜ん、おにんぎょちゃ〜ん)というセリフはキモチ悪く耳に残る。(P. Ravi Shankarという人の吹き替えのようだ。) 演技者ソーヌー・スードとしては箔が付いたに違いないが、変なイメージも纏わり付くかもしれない。少なくとも、【Jodhaa Akbar】(08)で共演したリティック・ロシャンからは「オメェ、大根役者だと思ってたら、いつから化けもん役者になったんだい?」と茶化されることだろう。 (写真下:Anushka@ジェージェンマとSonu Sood@パスパティ。) イスラム教の祈祷師・アンワルを演じたサヤージ・シンデは好感度アップだ。 知ってのとおり、彼はねちねちっとした嫌らしい悪役を得意とするが、今回はしゃきっとした「善玉」で、それにも腕の良いところを見せていた。(写真下) けっこう男前なのに、ボリウッドでもテルグでも中途半端な位置に甘んじているディーパクは、本作でも中途半端な役どころだった。(彼は、ボリウッドではArjan Bajwa、テルグではDeepakと名乗っていることに最近気付いた。) ◆ テクニカル面 歌やダンスには特に力点は置かれていないようだ。ただ、音響は良かった。 音楽シーンでは、唯一「ドラム・ダンス」と名付けられたシーンが面白い趣向だった。(写真下。中国映画【House of Flying Daggers】(04:邦題【LOVERS】)からアイデアが取られているようだ。) 撮影、CG、編集はお見事。 メイクも総体的に良かったのだが、パスパティの霊に取り憑かれた人々は額に傷のある白塗り顔になり、まるで「筋肉少女帯」の大槻ケンヂ氏みたいで、あれはいただけなかった。 ◆ 総評 ‘idlebrain.com’のレビューでは、本作を評して‘Magnum Opus’(最高傑作)と典雅なラテン語で賞賛している。最高傑作、とまで言い切る自信は私にはないが、記憶に留めるべき労作には違いない。ぜひ観ておきたいし、しかも、なんとしてでも大画面、大音響で鑑賞したいところだ。 ・満足度 : 4.0 / 5 ¶参考 日本語で書かれたレビュー http://www.indo.to/log/kahkashaan/?itemid=1396 |
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ディーパクを探せ!
先日見た【Bhadra】で第二ヒーローをやっていたディーパクさん この赤シャツの人 ...続きを見る |
ドミドミ日記 2009/03/25 07:00 |
【Magadheera】 (Telugu)
「チル太」こと、ラーム・チャラン・テージャ主演のテルグ映画。 【Chiruta】(07)でまずまず無難なデビューを飾ったチル太だが、センセーションを巻き起こしたとも言えず、正直なところ物足りなさを感じたファンも多いことだろう。 あれから2年、、、2年も何やってたんだ、という詮索はさておき、ついにラーム・チャランくんの第2作登場と相成りました! 製作費がテルグ映画史上最高の4億ルピーということで、公開前から話題沸騰、しかし、公開されてからはさらに沸点が上がり、AP州では公開... ...続きを見る |
カーヴェリ川長治の南インド映画日記 2009/08/11 11:45 |
【Nagavalli】 (Telugu)
2011年の初鑑賞作品はテルグ映画の【Nagavalli】。まだ帰省ボケ(正月ボケ)が残っていたので、ややこしい映画を観るよりは、単純なものを選んだ。 本作は、昨年公開のブロックバスター、ヴィシュヌヴァルダン主演のカンナダ映画【Aaptha Rakshaka】のリメイク。と同時に、ラジニカーント主演のタミル映画【Chandramukhi】(05)の続編でもある。監督はすべてP・ヴァース。 ¶参照 【Aaptha Rakshaka】 http://cauvery-sout... ...続きを見る |
カーヴェリ川長治の南インド映画日記 2011/01/13 20:29 |
【Deiva Thirumagal】 (Tamil)
今回紹介するタミル映画【Deiva Thirumagal】は、いくつかの点で私にとって非常に楽しみな作品だった。 まず、監督がA・L・ヴィジャイであること。【Madrasapattinam】(10)で評判を博したヴィジャイ監督が、それに続く秀作を送り出すことができるか? 次に、怪優ヴィクラムがまたまた特異な役柄に挑戦していること。公開前から本作はショーン・ペン主演のハリウッド映画【I Am Sam】(01)の翻案だと言われていたが、実際、ヴィクラムは知恵遅れの大人の役を演じて... ...続きを見る |
カーヴェリ川長治の南インド映画日記 2011/07/23 01:26 |
【Only Vishnuvardhana】 (Kannada)
先週末公開の話題の南インド映画は、タミル映画の【Osthe】、テルグ映画の【Panjaa】、カンナダ映画の【Only Vishnuvardhana】と【Shyloo】になろうかと思う。シンブ主演の【Osthe】はヒンディー映画【Dabangg】のリメイク、ガネーシュ主演の【Shyloo】はタミル映画【Mynaa】のリメイクだが、どちらも評判は良い。パワン・カリヤン主演の【Panjaa】はタミルのヴィシュヌヴァルダン監督の手になるもので、これまた異色のアクション映画との評判。どれも観たいと... ...続きを見る |
カーヴェリ川長治の南インド映画日記 2011/12/16 21:35 |
| 内 容 | ニックネーム/日時 |
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これ興味あったんですよねぇ、なんと言ってもスチールを見ただけで凄そうじゃないですか。 |
Piyo 2009/02/14 06:32 |
コディ・ラーマクリシュナ監督の作品は、私、【Ammoru】しか観ていないんですよね。 |
カーヴェリ 2009/02/14 11:26 |
あれ!?【Anji】も見てらっしゃらないんですか? |
Piyo 2009/02/14 17:12 |
【Devi】はそういえばDVDを持っていました。同じ監督だったんですね。 |
カーヴェリ 2009/02/14 20:16 |
>あとの2つは探してみます。 |
Piyo 2009/02/14 21:31 |
>ここのソーヌ スードは、、、、ああいう映画だし、まぁあれでも良いんですが、なんかちょっと可哀想な使われ方かなぁって思っちゃいました。 |
カーヴェリ 2009/02/14 22:24 |
ソヌー・スードは【Mr Medhavi】(Telugu - 2008)では、これまでにないポジティブな役で出てきてましたよ。で、いつ本性を現すかとワクワクしながら見てたんですが、最後までイイ人のんまま。はっきり言って説得力ゼロですた。 |
Periplo 2009/02/15 20:50 |
確かに、よく悪役をやっている人がたまにイイ人をやると、いつオチがあるのかなと、期待してしまいますね。 |
カーヴェリ 2009/02/16 14:15 |
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