カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Kick】 (Telugu)

<<   作成日時 : 2009/06/06 00:22   >>

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 ラヴィ・テージャ主演のテルグ映画。
 以前は、ラヴィ・テージャのことを考えると、「なんでこの人がトリウッドの大人気スターなんだ」と複雑な気持ちになったものだが、その時期も過ぎ、慣れてしまうと、こんなに味のある俳優はいないと思えるほど、近ごろは隠れラヴィ・テージャ・ファンになりつつある私である。
 とはいうものの、イリヤ嬢との共演となると、また複雑な気持ちが蘇る。「ラヴィ・テージャとイリヤーナ」というと、「ウナギと梅干」というわけではないが、なんとなく食い合わせの悪いものを感じるからである。実は2人はすでに【Khatarnak】(06)で共演しており、フロップに終わっているらしい。それからしても、やっぱり2人は相性が悪いのかなぁとも思えるのだが、果たして本作ではどうだろうか?

【Kick】 (2009 : Telugu)
脚本・監督 : Surender Reddy
出演 : Ravi Teja, Ileana, Shaam, Brahmanandam, Ali, Shayaji Shinde, Kota Srinivasa Rao, Banerjee, Venu Madhav, Jaya Prakash Reddy, Chalapathi Rao, Raghu Babu, Baby Neha, その他
音楽 : S.S. Taman
撮影 : Rasool Ellore
編集 : Gautham Raju
制作 : Venkat

《あらすじ》
 カリヤン(Ravi Teja)は非常に有能な若者だが、常に刺激と変化を求めて止まない性分から、職を転々と変えていた。
 ある時、ある女性がカリヤンに惚れてしまう。彼女の姉のナイナ(Ileana)はカリヤンの人格を知っていたため、彼に近付かないよう忠告する。カリヤン自身も彼女に自分のようなバカと付き合わないよう説得するが、その時、「オレが好きなのはおメエのネエさんだ」と告げる。
 それ以来、カリヤンに付き纏われて、ナイナにとっては悪夢のような日々が続くが、次第に彼女もカリヤンに心を開くようになる。彼女は彼に「ソフトウェア技術者か警官が好きだ」と言ったので、カリヤンはソフトウェア会社に就職する。喜んだナイナはカリヤンと付き合うことにする。
 しかし、カリヤンは4日で会社を辞めてしまい、それをナイナに隠していた。1ヵ月後に真実を知ったナイナは激怒し、彼と分かれて、マレーシア在住の両親の許に行く。
 マレーシアで、ナイナの両親は彼女に見合い相手を紹介する。それはAP州の敏腕警官、カリヤン・クリシュナ(Shaam)だった。彼の名前を知って、一瞬、へこむナイナだったが、すぐに彼に好感を持つ。
 カリヤン・クリシュナがマレーシアに来た理由は、ナイナに会うため以上に、ある任務を背負っていたからである。その頃、AP州では、政治家や医者などを専門に狙う泥棒が出没していた。カリヤン・クリシュナはその泥棒がマレーシアに行くことを察知し、現地捜査にやって来たわけである。
 その泥棒とは、実はカリヤンに他ならなかった。マレーシアに降り立ったカリヤンは、ナイナらと再会することになるが、短期記憶障害患者のふりをして、正体をごまかしていた。
 ナイナの父(Banerjee)はホテルを建設する計画を持っていたが、AP州の内務大臣(Kota Srinivasa Rao)をはじめ悪徳政治家たちが、その計画に裏金を投資するためにマレーシアにやって来ていた。カリヤンの狙いはその金であった。彼は大金を盗み出すことに成功するが、カリヤン・クリシュナに妨害され、結局は失敗に終わる。
 ハイダラーバードに戻ったカリヤンの前にカリヤン・クリシュナが立ちはだかる。しかしカリヤンは、「12月16日までにオレを逮捕しないと、永久に逮捕できなくなるぞ」とカリヤン・クリシュナに挑戦状を叩きつける、、、。

   *    *    *    *

 一体なぜ、何のために、カリヤンは泥棒をしているのか、12月16日に何が起きるのか、、、例によって、それはここには記さない。また、本作を観る予定の方は、事前にWikipedia等のシノプシスを読もうなどとはゆめゆめ思わないでいただきたい。
 と言うのも、この映画は非常に面白いのだが、それも終盤のタネ明かしとヒネリがあってこそで、それが分かってしまうと面白さ半減だからである。(と、こんなことを書いていること自体がすでにネタバレなのだが。)

 本作のアイデアとストーリーはかなり単純だ。なにせ映画の前半は、カリヤン(Ravi Teja)がいかにアホかということが延々と描かれているだけのようなもので、前半終了直前にやっと「ゲーム・スタート」が宣言される。それで、後半はマレーシアに舞台が移って、ドラマが動き出すと思いきや、カリヤンとカリヤン・クリシュナ(Shaam)の駆け引きはあるものの、ラヴィ・テージャは相変わらずアリーやブラフマーナンダム相手にコメディーを続けているという有様だ。で、いい加減うんざりしていると、終盤に花火のようなドラマの弾けがあり、同時に、それ以前にもストーリー上の伏線がうまく張られていたことに気付く。(ついでに、ここの回想シーンではファンにはうれしいカメオ出演あったりするのだ。)
 こういうストーリー構成は特殊なほうだと思うが、これが意図的に狙ったものなのか、単純なアイデアを隠すための苦肉の策なのかは分からない。ただ、私は面白いと思ったし、映画自体も快調にヒットしているようなので、ここでは評価しておきたい。(しかし、引き伸ばしすぎの感は否めず、約2時間45分の上映時間のうち、少なくとも15分はカットできたと思う。)

 監督は誰か意識しないで鑑賞したのだが、後でスレンダル・レッディだということを知った。この人は【Athanokkade】(05)、【Ashok】(06)、【Athidhi】(07)を撮った人で、ちょっと感触の違うヴァイオレンス映画の作り手だという認識を持っていたが、今回は一転してコメディー映画を作っている。(テイストとしてはスリーヌ・ヴァイトラ監督の作品に近い。)【Athidhi】の失敗で懲りたのか、それともラヴィ・テージャの持ち味を生かすためなのか、とにかく、ラヴィ・テージャを中心に据えた限度知らずコメディー・シーンはパワフルで、アッパレな出来だった。

 なお、いくつかのレビューでは、本作の元ネタとしてヒンディー映画の【Dhoom】(04)やタミル映画の【Gentleman】(93)が挙げられているが、私が見たところ、確かに警官と泥棒(義賊)の物語とはいえ、ストーリーも狙いも雰囲気もぜんぜん違っており、この比較は皮相なものと考えるべきだろう。

◆ パフォーマンス面
 上でも書いたとおり、本作ではラヴィ・テージャのコメディ・センスが炸裂している。コメディー・シーンで彼が絡んでいるのはブラフマーナンダム、アリー、ラグ・バーブ、ジャヤプラカーシュ・レッディの4人で、脈絡の乏しいシーンの連鎖をしっかりと1本に繋ぎ止めている。
 アクション俳優としても、もう若くもなく、さして走り姿がカッコいいというわけでもないのに、元気よく走り回る姿は、毎度毎度好感が持てる。

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 本作には主人公たちに危害を加える「悪役」が登場しない。それで、ヒーローに対立する「敵役」として、シャーム演ずるカリヤン・クリシュナの存在が重要になるが、これがまた渋くて、ラヴィ・テージャとはほどよいコントラストを作っている。
 この人はタミルの俳優で、テルグ映画には初出演らしい。まったく知らないはずなのに、どこかで見た顔だと思っていたら、カンナダ映画の【Tananam Tananam】(06:Kavitha Lankesh監督)で主演していた人だった。

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 ヒロインのイリヤーナについては、ラヴィ・テージャとの食い合わせを心配していたが、それはまったく老婆心に過ぎなかった。かといって、ぴったり合っていたとも思えないが、ハチャメチャなカリヤンに翻弄されて、地団太を踏み、キレまくるイリヤ嬢は非常に可愛かった。
 懸念されるダンスについては、面白く見えるように工夫されており、特に問題は感じなかった。(気懸かりといえば、ややお太りになられたことだろうか。)

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 コメディアンでは、カリヤン・クリシュナの叔父、ハルワラージ役のブラフマーナンダム、短期記憶障害患者、ドクター・ボリー役のアリーが笑える。ヴェーヌ・マーダヴは主人公のサポート役で、お笑いらしいことはやっていない。
 (写真下:今回もいじられまくり、もはや達観した表情のBrahmanandam氏。)

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◆ テクニカル面
 音楽はS.S.Tamanという、聞いたことのない人の担当。あまり高く評価されていないようだが、私はまずまずだったと記憶している。

◆ 結語
 【Kick】は、気取らず、カッコつけず、それでいて十分カッコいいという、ラヴィ・テージャの円熟したパフォーマンスが楽しめる作品だ。映画全体としても、アホくささの中にパワーがみなぎり、しかもモラルもしっかり利いているという、インド映画らしいインド映画。オススメしたい。

・満足度 : 3.5 / 5
 

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
あたしもラーヴィ・テージャのコメディアンとしてのセンスは前から評価してたもんで、川縁さんの表にはいちいち膝を打って読みました。

でも本音は別のところに…

いいなあ、イリヤちゃんの新作が次々と見れて…あたしゃ"Jalsa"すらまだ見れてないんだから…
メタ坊
2009/06/10 22:08
>あたしゃ"Jalsa"すらまだ見れてないんだから…

そりゃあ、さぞや不本意なことでしょう。(まだDVDが出ていないということですね。)
【Jalsa】はカマリニーも出ていて、ムフフな1本なのに。

ところで、この【Kick】にはメタ坊さんお気に入りのST嬢もカメオ出演していて、ちょっとお得です。(ただ、あまりにも出番が短いので、メタ坊さんならお怒りになると思います。)
 
カーヴェリ
2009/06/11 03:41

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