カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Bellary Naga】 (Kannada)

<<   作成日時 : 2009/10/21 02:10   >>

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 ディネーシュ・バブ監督、ヴィシュヌヴァルダン主演のカンナダ映画。
 ディネーシュ・バブといえば、「早い」「安い」「旨い」の仕事人監督として、このブログでも何度か言及してきた(例えばこちら)。なにせ彼は、【Idhu Sadhya】(88)という作品では2日間、【Mr Garagasa】(08)では9日間という短期間で映画を撮り上げ、それぞれヒット作に仕立てている。今年に入っても、【Eradane Maduve】は11日間、【Mr Painter】は15日間と、相変わらずの早撮りを披露しており、しかもこの2作は制作費がそれぞれ1000万ルピーという、南インドのトップ女優1人分のギャラ程度の金額で作り上げている。かといって、そんな低予算・早撮りでありながら、質的には一定のものをキープしているという、制作費が肥大化しつつも内容が伴っていない昨今のインド映画界において、見習うべきものの多い監督だと思われる。
 一方、ヴィシュヌヴァルダンは、本作が199本目の出演作らしい。200本記念作品の【Aptha Rakshaka】ばかり注目していたので、いつの間にこんな映画を撮ったの?といった感じだが、実は、本作はマムーティ主演のマラヤラム映画【Rajamanikyam】(05:Anwar Rasheed監督)のリメイク。
 そこで問題なのは、【Rajamanikyam】はマムーティの力強さが炸裂したパンチ力のあるアクション・コメディーだったが、それを還暦も間近いヴィシュヌ翁がやって様になるのか? 今回のヴィシュヌ翁はアクションもばりばりやるというウワサだが、どうせ上がらない足を蹴り上げて悪漢を叩きのめした後、腰に手を当て、「ぬはっはっは、思い知ったか、小人ども!」なんてセリフを吐くんだろうなぁ、などと想像すると、もう恥ずかしいやら心配やらで、よっぽど観に行くのをやめようかと思ったほどである。

【Bellary Naga】 (2009 : Kannada)
脚本・台詞・監督・撮影 : Dinesh Babu
出演 : Vishnuvardhan, Avinash, Chitra Shenoy, Rajesh, Shobharaj, Ramesh Bhat, Dharma, Ambarish Sarangi, Bank Suresh, Karibasavayya, Manasi, Lakshmi Hegde
音楽 : L.N.Shastry
制作 : K.Manju

《あらすじ》
 ヴィシュワナタ・ゴゥダ(Avinash)はカルナータカ州のとある地方の有力者。彼は、死別した先妻との間に息子のラジェンドラ(Rajesh)が、後妻のパールヴァティ(Chitra Shenoy)との間に娘のラーニーがいたが、この2人は犬猿の仲だった。ヴィシュワナタは新たに医科大学を創立し、妻の名を冠して「パールヴァタンマ医科大学」と名付ける計画だったが、これを不快に思うラジェンドラが妨害工作に出る。
 ある時、選挙キャンペーンをやっていた有力候補者が何者かによって射殺される。しかしこれは謀略で、ヴィシュワナタが下手人にでっち上げられ、裁判にかけられる。彼はショックのあまり、心臓発作で急死してしまう。
 ヴィシュワナタの遺言が弁護士によって読み上げられる。エゴイスティックに父の財産を狙うラジェンドラとラーニーだったが、驚いたことに、遺言の内容は、向こう25年間、すべての遺産の管理をナーガという男に託す、というものだった。ナーガ(Vishnuvardhan)はベッラーリで牛の取り引きをやって荒稼ぎしている男だった。
 早速、ナーガが部下たちを連れて屋敷に乗り込んで来、一家のビジネスも取り仕切り始める。この事態をまったく歓迎できないラジェンドラは、悪友でヤクザのレッディ(Shobharaj)や悪徳警官(Dharma)らの助けを借りてナーガに嫌がらせをし、あまつさえ命まで狙う。だが、その度にナーガに弾き返される。また、ラーニーも母を盾にしてナーガの足を掬おうとするが、うまく行かない。だが、その過程でナーガの正体が知れる。
 ・・・実は、ナーガはパールヴァティの実子で、ヴィシュワナタがパールヴァティとの再婚を決めたとき、縁談の障害にならないようにと、子供の存在は秘密にされていたのである。ナーガは母に見捨てられた形だったが、その事実を知ったヴィシュワナタは、密かにナーガの世話をする。だが、まだ少年時代のある日、ラジェンドラとレッディが村の男の子を殺してしまい、その罪を被ったナーガが村を去ることになる。その後、彼はベッラーリに流れ、長じて商売に成功し、ひとかどの人物となる。ナーガの人間性を見抜いていたヴィシュワナタは、2人の子供の不甲斐なさを正すために、ナーガに遺産の管理を託したわけである。・・・
 すでに富を手にしていたナーガにとって、ヴィシュワナタの財産は関心事ではなかった。彼が故郷に戻って来た真の理由は、亡き義父への義理を果たすためと、不仲な兄妹たちを一つにまとめるためであった、、、。

   *    *    *    *

 予想どおり、腰に手を当て見えを切る場面があり、他人事ながら赤面してしまったが、さすがはヴィシュヌ翁、かなりの熱演だったのではないだろうか。
 とは言うものの、やっぱりオリジナルのマムーティを観てしまったからには、ヴィシュヌヴァルダンのこのヒーロー像には違和感と物足りなさを感じる。
 結局はヴィシュヌ翁が年を取りすぎているということなのだろう。実はヴィシュヌヴァルダンとマムーティは3歳ぐらいしか違わないはずだが、【Rajamanikyam】は4年前の作品なので、実年齢でマムーティのほうが7歳ぐらい若い段階でこの役を演じたことになる。この差は大きい。片や脂の乗りまくった押しの強さがあったのに対し、ヴィシュヌヴァルダンのほうは枯れ枯れで、ちょっと無理があった。もう10年若い段階でやりたかった役柄だろう(もっとも、10年前には【Rajamanikyam】自体がなかったわけだが)。

 インド映画のヒーローが実年齢よりぐっと若い役をやるのは普通のことで、自分より年下の女優を相手に「母さん!」なんてやっているのも珍しくないわけだが(本作もそう)、そこは観客の想像力で補いながら見る必要がある。その想像力をうまく働かせるためには、インド映画のお約束事とかバックグラウンドとかが頭に入っていなければならないのだが、それがないと、チンプンカンプンか滑稽なものとしか見えなくなる。
 本作のヴィシュヌヴァルダンが演じたベッラーリ・ナーガという役も、ヴィシュヌヴァルダンがカンナダ映画界屈指の名優であり、若いころは「Sahasa Simha」(向こう見ずな獅子)と呼ばれ、荒っぽい役もやっていたことを実感として知っている人なら(それは結局カンナダ人ということになるのだが)、そんなに違和感もなく見られたであろう。
 こんなふうに、コンテクストに依存する度合いが高いのがインドの地方映画を観る難しさではある(特にカンナダ映画ではそう思う)。

 例によって、一応、オリジナルとの異同を記しておくと、、、
 テーマやストーリーは同じなのだが、回想シーンの入れ方が異なっている。このカンナダ版では、過去の経緯の回想はすべて中盤にまとめられているが、マラヤラム版オリジナルでは、一部(主人公の母の結婚の件)は冒頭で見せておき、他は中盤まで秘しておくという手法を採っている。どちらが良いかは簡単には言えないが、趣向としてはマラヤラム版のほうが面白いと思う。
 ドラマの舞台は、オリジナルではケーララ州との州境にあるタミルナードゥ州のUdayakovil(Udayankoil)という村だったが、カンナダ版ではどこか分からなかった(劇中で言及しているはずだが、キャッチできなかった)。主人公の男が成長する町はどちらもカルナータカ州のBellary。どうしてマラヤラム版でも主人公(マムーティー)がベッラーリに定着したのかは不明だが、この辺をつつくと面白いかもしれない。(参考に、Bellaryは「バッラーリ」と発音するのが普通。)
 その他、細かい変更がいくつかあり、工夫のあとは窺える。
 
◆ 演技陣
 本作を観て興味深いと感じたのは、マラヤラム版と比べてみると、カンナダ映画のどこに問題があるかよく分かる点だ。つまり、演技が薄っぺらい。
 ヴィシュヌヴァルダンとマムーティの比較はやめておくとして、他の脇役陣を比べてみると、それぞれがカンナダ版で落ちる。(それが、私がこの【Bellary Naga】を観て感銘を受けなかった理由だ。)もっとも、カンナダ版でも良い俳優を使っているわけだが、どうも役に対する理解・思い入れが足りないようで、突っ立って、手をひらひらさせながらセリフを喋っているだけ、といった感じだ。これでは家族映画は成功しない。
 象徴的なのは主人公の母親役。たまたまマラヤラム版もカンナダ版も同じ女優(Chitra Shenoy)がやっているのだが、これでさえマラヤラム版のほうがうまく演じている。
 この点、ディネーシュ・バブ監督の早撮りの手法が弊害となったのかもしれない。
 カンナダ版がオリジナルに唯一勝っている点を挙げるなら、ヴィシュヌヴァルダンがベッラーリ訛りのカンナダ語を駆使していることだろう。(マラヤラム版では、マムーティーは「ベッラーリ・ラージャ」と称しながら、マラヤラム語しか話せないという設定になっていた。)

 ところで、私がどうしてわざわざDVDを買ってまでしてマラヤラム映画の【Rajamanikyam】を鑑賞したかと言うと、マムーティの主演だとかアンワル・ラシードの監督だとかいうのはもちろんだが、2人の女優、パドマプリヤ(花売り娘役)とシンドゥ・メノン(主人公の妹役)が出ているからである。ただし、根が男くさい映画なので、2人ともヒロインとは呼べない役柄に留まっているのが残念だった。
 その2人の役は、カンナダ版では誰だか名前の分からない女優がやっていた。例えば、パドマプリヤの役は下のお方がやっていたのだが、こういう超フツーのお姉さまを何気に持って来るあたりがカンナダ映画らしい。

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◆ 裏方陣
 音楽はL.N.Shastryという、あまり名前を聞かない人の担当だが、なかなか良かった。ダンスには見るべきものなし。

 本作のヴィシュヌヴァルダンは、けばけばド派手な成金田舎者風ファッションに身を包んでいるが、衣装を担当したのは実はヴィシュヌ翁の娘、キールティ。私の目にはかなり趣味の悪いものと映ったが、これは作品の要請によるものか、またはキールティのセンスが悪いだけなのかは不明。

◆ 結語
 【Bellary Naga】は、4年前に作られた【Rajamanikyam】のリメイクだが、かえってこちらのほうが4年前に作られたのではないかと思われるほどの素朴な作りの映画だ。悪くはないのだが、やはりカンナダ映画に馴染みのない人が見ても面白くないだろう。むしろ、オリジナルの【Rajamanikyam】のほうはかなり面白いので、ぜひとも鑑賞をオススメしたい。

・満足度 : 2.0 / 5
 

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【Aaptha Rakshaka】 (Kannada)
 P.ヴァース監督、ヴィシュヌヴァルダン主演のカンナダ映画【Aaptha Mithra】(04)は記録的大ヒットとなり、タミル語版リメイク【Chandramukhi】(05)がラジニカント主演で作られ、同じくブロックバスターとなった、というのは有名な話だが、これはそもそもマラヤラム映画【Manichitrathazhu】(93)がオリジナルで、それをプリヤダルシャン監督も【Bhool Bhulaiyaa】(07)としてヒンディー語版にリメイクした、というのもわざわざ書く必要がないほどインド... ...続きを見る
カーヴェリ川長治の南インド映画日記
2010/03/12 03:11

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