カーヴェリ川長治の南インド映画日記

アクセスカウンタ

zoom RSS 【Maleyali Jotheyali】 (Kannada)

<<   作成日時 : 2009/12/23 01:15   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 7 / コメント 0

画像

 ガネーシュ主演、プリータム・グッビ監督のカンナダ映画。
 サンダルウッドの‘ゴールデン・スター’とも呼ばれるガネーシュだが、昨年初頭の【Gaalipata】のヒット以来、【Aramane】、【Bombaat】、【Sangama】、【Circus】(09)とヒット作から見放され、黄金は実は金メッキだったかと冷ややかな視線を投げかけられつつある。そこで、‘Golden Movies’なるホーム・プロダクションを立ち上げ、嫁はんのシルパにプロデュースをさせて、出直しを図ったのが本作だ。
 片や監督のプリータム・グッビは、ガネーシュをトップ・スターの座に押し上げた大ヒット作【Mungaru Male】(06)のストーリー・ライターとして知られている。実は、彼は監督としてはこれが2作目で、デビュー作の【Haage Summane】(08)は佳作ながら、興行的には失敗に終わっている。
 ガネーシュとプリータム・グッビ、共にヒット作の欲しい二人だが、【Mungaru Male】の幸運の雨はここにも降って来るか?
 (題名の「Maleyali Jotheyali」は「雨の中で一緒に」という意味。)

【Maleyali Jotheyali】 (2009 : Kannada)
物語・脚本・監督 : Preetham Gubbi
出演 : Ganesh, Yuvika Chaudhary, Anjana Sukhani, Rangayana Raghu, Sharan, Sihi Kahi Chandru, Sihi Kahi Geetha, Dattanna, Sudharani
音楽 : V. Harikrishna
撮影 : S. Krishna
編集 : Deepu S. Kumar
制作 : Shilpa Ganesh

《あらすじ》
 プリータム(Ganesh)は気の良い若者だが、学業のほうはさっぱりで、PUCの修了試験をやっとこさ8回目で合格する。不動産屋を営む父(Rangayana Raghu)は大喜びし、さっそく一人息子の縁談を決めようと占星術師を呼ぶ。プリータムは父に生涯の伴侶を決められては大変と、友人のウェンカテーシュ(Sharan)と共謀して占星術師を買収し、サクレーシュプラの村に理想の結婚相手がいるとの嘘の託宣を立てさせる。まんまと作戦が成功したプリータムは、早速サクレーシュプラに行き、ウェンカテーシュの祖父(Dattanna)の家に厄介になることにする。
 この地でプリータムは二人の女性、アンジャリ(Yuvika Chaudhary)とサンディヤ(Anjana Sukhani)に出会う。アンジャリはバンガロールでの学業を終え、故郷の村に戻っていた。男嫌いのサンディヤは両親と一緒にコーヒー農園を経営していた。
 サンディヤに一目惚れしたプリータムは、彼女と親しくなるために、アンジャリを利用することを思い付く。彼はサンディヤに、アンジャリという女友達が男に捨てられて落ち込んでいるから助けてやりたい、という話をでっち上げる。サンディヤはプリータムと共にいろいろな手でアンジャリを励まそうとする。
 プリータムはまた‘ラッキー’という見知らぬ少女と電話友達となる。彼は携帯電話を通してラッキーにサンディヤ攻略作戦の経過を報告する。ラッキーも子供ながらいちいちアドバイスを返していた。
 プリータムの戦略はうまく行き、男嫌いだったサンディヤが彼に好意を抱くようになる。同時に、アンジャリもプリータムの人柄に惹かれるようになる。
 両親のいないアンジャリは、自分の土地を売って、そのお金をアシュラムに寄付しようとしていた。アンジャリとプリータムはアシュラムへ行き、院長にお金を渡す。だが、その部屋に飾ってあった写真から、プリータムはこの院長こそが実はアンジャリの父であることを知る。アンジャリの父は、早くに妻と娘を捨て、愛人と駆け落ちした過去があった。アンジャリはこの院長が父だと知って援助していたが、父はアンジャリのことを娘だとは気付かなかった。プリータムはアンジャリのこの行動を見て、すっかり惚れてしまう。
 プリータムはサンディヤに事情を話し、アンジャリのことが好きだと打ち明ける。プリータムを愛するようになっていたサンディヤはショックを受けるが、それでも一緒にアンジャリの家に行く。だが、すでにプリータムの気持ちを知っていたアンジャリは、村を離れて、どこかに姿を隠していた。
 プリータムはすぐにバンガロールに戻り、まずラッキーに会いに行く。しかし、ラッキーは心臓麻痺で死亡した後だった。彼はこの少女と一目でも会って友達になれなかったことをいたく悲しむ。
 次にプリータムは、唯一の手がかりとして、アンジャリと交流のあった病院の医師に会いに行く。だが、医師の口から、アンジャリは癌患者で、余命いくばくもないという事実を知らされる。強くショックを受けるプリータムだが、医師にアンジャリの住所を教えてもらい、彼女の家へと向かう、、、。

   *    *    *    *

 まさに「ガネーシュ、原点に帰る!」といった感じの映画だった。
 高原の村と雨という道具立ての中で展開される恋物語で、おまけに白ウサギのデーワダースまで登場し、明らかに【Mungaru Male】の線を狙っている。
 しかし、テーマ的には【Mungaru Male】と全然違っていて、むしろプリータム・グッビ監督自身の第1作【Haage Summane】に近い。【Haage Summane】のテーマは「子供が生めない女性を妻として受け入れられるか」ということだったが、この【Maleyali Jotheyali】では「1年以内に死ぬことが分かっている人と結婚できるか」ということだ。で、当然のごとく、どちらも困難を丸飲みにする強い愛が結論となっている。本作のクライマックスで、主人公のプリータム(Ganesh)は「目が愛する人と100年いるよりも、心が愛する人と100日いるほうがいい」という決めゼリフを述べているが、たぶん、「たとえ短くても、本当に愛する人と一緒にいるのが幸せ」といった意味だろう。クサいセリフだが、これに類したセリフはインドの恋愛映画ではよく耳にする。

 あらすじを読んで分かるとおり、ストーリー的には特に新しさはなく、単純で、終わり方もプッツリと呆気ないもので、もうふたヒネリぐらい欲しかった。
 かと言って、本作が凡作というわけではなく、好調に客を集めており、レビューの評価も良い。
 ガネーシュを中心としたコミカルな展開は現地人にウケても不思議はないと思われるが、それと同じぐらい、本作の描き出している詩的な「情緒」が琴線に触れるものなのだろう。私も本当にきれいな映画だと思った。
 その情緒のエッセンスとなっているのが「雨」だ。(実際、プリータム・グッビ監督は「本作の主人公は、ヒーローと2人のヒロイン、それに『雨』だ」と言っている。)
 概ね、インド人がいかに雨が好きかは、インドとインド文化に馴染んでいる人ならよく分かることだろう。宗教的には、雨は天(神々の住処)から降って来る有難いものだし、輪廻転生を信じるヒンドゥー教徒にとっては、雨は再生のメカニズムの一環として重要だし、そもそも日常生活的にも、古いものを洗い流し、新しいものを生む雨の水というのは、なにかしらフレッシュに感じられるものだ。
 そんな雨がインド人の恋愛観に反映されないはずがなく、本作はその「雨と恋愛」というテーマを詩的にうまく編み合わせ、しかも、それをカルナータカ州の高原地帯のミスティーな自然の中で描き出したというのが素晴らしい。

◆ パフォーマンス面
 ガネーシュ自身、【Mungaru Male】の頃に戻ると宣言しているとおり、【Mungaru Male】や【Gaalipata】を髣髴とさせるキャラクターだった。
 映画中の全セリフの9割方は彼が喋っていたんじゃなかろうかと思われるほどの饒舌で、ご苦労なことだった。
 彼らしく、二枚目と三枚目の間をうまくバランスを取りながら進み、「殴ったろか」と思えるキザな場面も、あの四角い顔を見ていると、「まぁ、エエか」という気持ちになった。

 アンジャリ役のユヴィカー・チョーダリは北インドの女優。これがまたきれいで雰囲気のある人で、こんな顔・イメージの女優をよくぞカンナダ映画に出したものだ(しかもガネーシュの相手役で!)と、彼女を北から引っ張って来た人を褒めてやりたい。
 女優としてのキャリアは少ないが、テレビCMでは時折見かける顔。映画なら、ヒンディー映画の【Om Shanti Om】(07)でドリーの役(ヒロインのダミーに使われた非常に気の毒な役)を演じていたのがこの人だ。
 (写真トップ:GaneshとYuvika Chaudhary。)

 振られ役になってしまったが、サンディヤ役のアンジャナ・スカーニも、ユヴィカー・チョーダリと同じく、北インドから来た女優。キャリアは長いほうで、ボリウッド作品でヒロインも務めたことがあるはずだ。
 ヒロインとしては若くはないほうで、体の線も弛み気味で、それがダンス・シーンではマイナスに見えてしまったが、快活で情のあるサンディヤの役としてはうまく演じていたと思う。(写真下)

画像

 ◆ テクニカル面
 ハリクリシュナの音楽は好印象。タイトル曲はきれいなメロディーで好きなのだが、映画中では思ったほど頻繁に使われておらず、ちょっと残念。
 1曲目の音楽シーンは、ガネーシュの過去のヒット作のセルフ・パロディーになっている。

 撮影は【Mungaru Male】と同じクリシュナで、相変わらず上下にダイナミックに動くカメラ・ワークが見事。
 物語の舞台はサクレーシュプラ(Sakleshpur)だが、おそらくロケ地も同じだろう。どこであれ、カメラに収められていた高地のパノラマ風景は目が回るほど美しかった。

◆ 結語
 カンナダ映画やカルナータカという地に馴染みのない日本人が、いきなりこれを観て面白いと感じるかどうかは大いに疑問なので、オススメもしにくいが、デカンの雨、西ガーツ山脈の眺望を体感したことのある方なら、この作品の美しさが分かっていただけるかもしれない。

・満足度 : 3.0 / 5
 

テーマ

注目テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(7件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
【Ullasa Utsaha】 (Kannada)
 ガネーシュ主演のカンナダ映画。  本作品は2008年公開のテルグ映画【Ullasamga Utsahamga】のリメイク。  【Ullasamga Utsahamga】は、なぜか邦人テルグ映画ファンの間でもほとんど話題にされないが、現地ではかなり観客を集めた大ヒット作。私は劇場で観ることができなかったが、テルグ人に勧められ、DVDで鑑賞して気に入り、いつかどこかで触れてみたいと思っていた。  監督したA. Karunakaranは、【Tholi Prema】(98)や【Happ... ...続きを見る
カーヴェリ川長治の南インド映画日記
2010/05/17 03:25
【Aenoo Onthara】 (Kannada)
 ‘ゴールデン・スター’ガネーシュ主演のカンナダ映画。  しばらく不振にあえいだガネーシュだが、昨年末公開の【Maleyali Jotheyali】がまさかのフィルムフェアー賞(カンナダ・カテゴリー)最優秀作品賞受賞、ガネーシュ自身も最優秀主演男優賞を獲得し、息を吹き返したかに見えた。ところが、続く【Ullasa Utsaha】はぱっとせず、すんなりとは上昇気流に乗り切れないようだ。  【Ullasa Utsaha】はりメイク作品だったが、この【Aenoo Onthara】も200... ...続きを見る
カーヴェリ川長治の南インド映画日記
2010/11/17 00:24
【Johnny Mera Naam... Preethi Mera Kaam】 (Kannada)
 大ヒット・カンナダ映画【Mungaru Male】(06)のストーリー・ライターとして有名なプリータム・グッビは、監督としても【Haage Summane】(08)と【Maleyali Jotheyali】(09)を発表し、まずまずの結果を残している。そのプリータム・グッビの監督第3作がこの【Johnny Mera Naam... Preethi Mera Kaam】で、主役にはサンダルウッドの‘ブラック・コブラ’ことヴィジャイ、ヒロインには女優として今最も脂の乗っているラミャを起用... ...続きを見る
カーヴェリ川長治の南インド映画日記
2011/06/08 21:04
【Maduve Mane】 (Kannada)
 【Vinayaka Geleyara Balaga】を紹介したとき(8月上旬)に、今年のカンナダ映画界はビジネス的にうまくいっている、というようなことを書いたが、その後も好調さは続き、それ以降も【Krishnan Marriage Story】、【Lifeu Ishtene】、【Kalla Malla Sulla】、【Saarathee】、【Paramaathma】などのヒット作が現れている。(【Jogaiah】は評価が芳しくなく、ヒット作と言うには抵抗があるが、話題性が勝って、一応客は... ...続きを見る
カーヴェリ川長治の南インド映画日記
2011/11/14 21:20
【Jaanu】 (Kannada)
 【Mungaru Male】(06)のストーリー・ライターとして世に出たプリータム・グッビは、その後監督として【Haage Summane】(08)、【Maleyali Jotheyali】(09)、【Johnny Mera Naam... Preethi Mera Kaam】(11)と3作発表し、後の2作はヒットを記録している(ただ、私はヒットしなかった【Haage Summane】が一番好きだ)。そんな彼の4作目ということで、ひと通りの注目を集めていたのがこの【Jaanu】。 ... ...続きを見る
カーヴェリ川長治の南インド映画日記
2012/06/08 21:31
【Mynaa】 (Kannada)
 【Sanju Weds Geetha】(11)が大ヒットし、サンダルウッドの注目の若手監督となったナーガシェーカルの新作がこの【Mynaa】。【Sanju Weds Geetha】はラミャの熱演の光ったヒロイン本位の作品だったが、本作ではヒロインにニティヤ・メーナンを迎え、前作同様に期待が持てる。  ヒーローはチェータン・クマール。【Aa Dinagalu】(07)や【Suryakaanti】(10)で注目されたものの、トップスターにはほど遠いチェータンだが、ここらでヒット作がほし... ...続きを見る
カーヴェリ川長治の南インド映画日記
2013/03/01 09:55
【Gajakessari】 (Kannada)
 カンナダ映画【Mungaru Male】(06)は、不振に陥っていたカンナダ映画界を復活させた作品として知られているが、当時は内容面より技術面、特にカルナータカ州のヒルステーションを秀麗に収めたカメラが高く評価された。その撮影監督を務めたのがS・クリシュナで、彼はその後もサンダルウッドのトップカメラマンとして【Maleyali Jotheyali】(09)や【Kaddipudi】(13)などで職人技を見せている。 ...続きを見る
カーヴェリ川長治の南インド映画日記
2014/06/10 22:09

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
【Maleyali Jotheyali】 (Kannada) カーヴェリ川長治の南インド映画日記/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる