カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Jugaari】 (Kannada)

<<   作成日時 : 2010/03/21 01:03   >>

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 カンナダ映画の歴史も75年を越え、第2世代だけでなく、そろそろ第3世代が登場する時代となったが、この【Jugaari】でデビューした監督のS.D. Arvindと主演俳優のAvinash Diwakarもそう。二人は往年の著名なコメディアン、ナラシンハラージュ(Narasimharaju)の孫で、従兄弟同士に当たる。
 この二人の存在はカンナダ映画界でもあまり話題になっていなかったらしいが、しっかりと映画の勉強をし、虎視眈々とデビューの機会を窺っていたようだ。今回、フレッシュな映画で印象的なデビューを果たしている。
 (「Jugaari」の意味は分からないのだが、どうも「ギャンブラー」ということらしい。)

【Jugaari】 (2010 : Kannada)
脚本・台詞・監督 : S.D. Arvind
出演 : Avinash Diwakar, Harshika Poonachcha, Avinash, Sharath Lohitashwa, Achyuth Kumar, B. Suresha, Dharma, Mohan Juneja, Shivaji Rao, Ramesh Pandit
音楽 : Arjun
撮影 : Ananth Urs
編集 : Sri
制作 : G.R. Ramesh

《あらすじ》
 最終試験に落第した高校生のシャンカルは、腹いせに友人たちと酒を飲んでいる時に、弾みで友人の一人をビール瓶で殴ってしまい、死亡させてしまう。彼は逮捕され、実刑判決を受けて牢獄に入る。高校のラクシュマン先生は、シャンカルの裁判費を捻出するために土地・家屋を抵当に金を借りていたが、悪徳ブローカーに騙されて家を追い出されることになる。またシャンカルの母も事件のショックで発狂する。
 刑務所でシャンカルは読書に耽り、主に法律の勉強をして過ごす。彼は牢獄ではバイロー(Bylaw)と呼ばれるようになる。やがて14年の刑期を終えて、出所する。
 出所したバイロー(Avinash Diwakar)ことシャンカルは、早速バンガロールの生まれた町に戻るが、14年で辺りは一変していた。バイローは友人のキッティを見つけ、ある介護施設に案内されるが、そこで変わり果てた母を見てショックを受ける。また、恩師のラクシュマン先生も自分のせいで家を失い、すでに他界したことを聞く。
 バイローは公衆便所の上で寝起きし、キッティのやっている古紙回収業を手伝う。彼はバンガロールの街に腐敗・汚職が蔓延している様を観察し、また、古紙屋に持ち込まれた書籍や書類から、様々な情報を得る。
 バイローはサンディヤ(Harshika Poonachcha)という見習いの弁護士と知り合う。そして彼女に協力してもらい、土地・家屋の譲渡契約書を作成し、巧みなやり方で悪徳ブローカーから恩師の家を奪い返すことに成功する。バイローはその家を住居兼事務所とし、‘Bylaw Solutions’というインチキ会社を始める。
 バイローのターゲットは高級官僚や高位警官、医者やビジネスマンが貯め込んでいるブラックマネーであった。彼は巧みなやり方で少しずつ彼らの信頼を得、ブラックマネーを‘Bylaw Solutions’に投資させることに成功する。その額は10億ルピーにも及んだ。
 そんな時に、キッティの友人のラクシュミが浮気絡みの問題で婚約者を殺めてしまう。それを知ったバイローは、自分がその罪を被ることにし、サンディヤに連絡して、わざと怪我をして警察署まで運ばせる。
 バイローに闇投資した連中は慌てふためく。彼らは自分たちのお金を取り戻そうと警察病院にいるバイローを問い詰めるが、それらはすでに‘CCT’という団体に寄付された後だった。彼らは大急ぎでにその団体の所在地に赴くが、そこはバイローの母のいる介護施設だった。しかも、その建物の壁面には高額寄付者として彼らの名前が刻まれてあったのである。
 裁判の結果、バイローの有罪が確定し、再び刑務所に入る。かくして闇投資家たちは自分たちの金を取り戻す機会を失ってしまう。

   *    *    *    *

 自分の犯した過ちへの罪滅ぼしと、弱者を餌食にして私腹を肥やす貪欲な富者に対する怒りから、自らを犠牲にしてまで闘う男の話。それも、不正をもって不正を制すというか、法律の穴を利用して儲けている輩から、やはり法律の穴を巧みに利用して、ごっそりブラックマネーを掠め取るという、爽快な話だった。

 道徳的にも気高いものがある。
 主筋は悪徳資産家たちをぎゃふんと言わせる過程なのだが、作品全体の基調としては社会的弱者(貧者、障害者、老人)に対する温かい共感があり、それが感動を呼ぶ。
 実は、上のあらすじでは触れなかったが、それぞれの悪徳資産家には年老いた父や不仲の妻、身障者の娘がおり、冷たいあしらいを受けている。そんな彼らが安寧の地として選んだのが例の介護施設で、クライマックスで自分たちを蔑ろにした資産家たちが施設を訪れたとき、彼らに向かって「グルジーの寄付のおかげで幸せに暮らしています」と大皮肉を吐くのである。
 お金というものは、貪欲を満たすためにではなく、身内への思いやりや社会福祉のために使え、というはっきりしたメッセージが見られるのだが、これはインド人の伝統的な倫理的行為の一つである「喜捨」に通ずる考え方で、インド映画でも繰り返し主張されてきたことだ。
 本作はオフビートな新しい感覚の作品だが、内容的には極めてオーソドックスなインド映画だった。

 監督のS・D・アラウィンドは、演劇畑からテレビCMの監督を経て、今回映画デビューとなったらしい。本作を観る限り、真摯な志とオリジナリティーで、非常に有望なものを感じた。
 ただ、本作の出来については至らぬ点も多く、語り口がやや退屈で、メリハリがなかった。
 特にクライマックスは、鮮やかに悪者たちの足をすくい、さっさと終わるような形にしたほうがもっと爽快感が残ったと思う。
 ヒーローとヒロインのロマンス展開にももうひと工夫ほしかったところだ。

 ところで、主人公(バイロー)は1996年から2010年まで14年間刑務所に入り、出所した際にバンガロールの変貌ぶりに驚くという設定になっていたが、実は、私がバンガロールに住み始めたのが1998年だから、2年しか違わないのである。映画で言っているほど変わったかなぁ、というのが実感だが、現地人が変わったと言うのなら変わったのであろう。
 しかも、その変わり方というのが悪いほうへの変化で、この14年でバンガロールは物金崇拝と政治腐敗、それにマフィアに侵された悪の街になったと描かれている。バンガロールをこのように捉えるカンナダ映画は少なくないのだが、「インドのシリコンバレー」とまで謳われたバンガロールの発展は、必ずしも現地人に歓迎されているわけではないのかもしれない。 (ちなみに、90年代中盤といえば、マイクロソフトを始めとする欧米コンピューター企業がどかどかとバンガロールにやって来た時代である。)

◆ パフォーマンス面
 主役のアヴィナーシュ・ディワーカルは、正確に言うと本作がデビューというわけではなく、1,2本の映画に小さな役で出演しているようだ。ヒーローとしてはこれが初。今後カンナダ映画界を背負って立つという雰囲気でもないが、本作のバイロー役は狙い澄ました感があり、しっかりと好演している。
 社会派映画はオレに任せろ、ぐらいの人材に育ってほしい。

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 ヒロインはハルシカ・プーナッチャという人。最近までまったく知らなかった女優だが、前回紹介した【Sugreeva】にも人質役で出ていた。
 たぶんテレビドラマの女優なのだろう。まったく普通の女の子で、誰も大ヒロインになるとは期待していないと思うが、感じの好い娘だった。

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◆ テクニカル面
 音楽はアルジュンという人の担当。彼はカンナダ映画界の音楽監督では2列目ぐらいにいる人で、近ごろ起用が多くなっている。まだヒット映画の担当はしていないが、音楽だけを取れば、彼自身の作品はけっこう聴かれている。本作も悪くなかったし、これから伸びていく人ではないだろうか。
 音楽シーンも、きちんと作ろうという意図が感じられ、印象は良い。
 お見せしたい音楽シーンがYouTubeに見つからなかったので、トレイラーをどうぞ。
  http://www.youtube.com/watch?v=sXeaOOUI1zk&NR=1

◆ 結語
 カンナダ映画もまだまだ捨てたもんじゃないと安堵させてくれるような、若い才能によるハートの感じられる佳作。ちょっとオススメ。

・満足度 : 3.0 / 5
 

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2016/03/01 21:44

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