カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Antharathma】 (Kannada)

<<   作成日時 : 2010/04/28 03:15   >>

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 映画は面白いものを作りさえすればいいというわけではなく、商品である以上、宣伝活動も興行成績を左右する鍵となる。例えば、一昨年ラーム・ゴーパール・ヴァルマー監督の【Phoonk】がヒットしたのも、作品そのものの力というより、事前のプローモーション効果が大きかったのではないかと思う。
 この【Antharathma】もユニークなプロモーション戦略で早くから話題となっていた。こちらの記事によると、事前に100ルピーのクーポン券が売り出され、これを購入すると、本作が鑑賞できるのはもちろん、サントラCDももらえ、さらに総額250万ルピー相当の景品が当たるかもしれない、ということなのである。しかも、売り上げの一部は去年カルナータカ州北部で起きた水害の復興支援活動に充てる、という触れ込みまである。
 この作戦はまんまと当たり、肝心の映画がどうであれ、とにかく手許には音楽CDが残るし、心には被災地支援に手を貸したという満足感も残るし、これで景品が当たろうものなら、、、と考えれば100ルピーは安いと判断されたのか、映画公開1ヶ月前の時点で20万人の購入者があったらしい。
 私はと言えば、このクーポン券の情報を早くに得ていながら、映画公開時にはすっかり忘れており、劇場で何気に当日券を買って観てしまった。相変わらずやることなすことどんくさい。
 ちなみに「Antharathma」は「魂」という意味で、先に言っておくと、本作品は1990年公開のハリウッド映画のブロックバスター【Ghost】のリメイクである。

【Antharathma】 (2010 : Kannada)
脚本・監督 : B. Shankar
出演 : Mithun Tejaswi, Vishaka Singh, Rohan Gowda, Umashree, Rangayana Raghu, Harish Rai, Suman Ranganath
音楽 : Giridhar Diwan
撮影 : Sundarnath Suvarna
編集 : Sri
制作 : B. Shankar

《あらすじ》
 エリート銀行マンのシャーム(Mithun Tejaswi)は最愛の妻マヒー(Vishaka Singh)と幸せに暮らしていた。
 ある日、シャームは自分の銀行口座に1億4千万ルピーもの大金が入金されているのを見出す。それはマフィアの裏金が誤ってシャームの口座に振り込まれたものだが、彼はそんなこと知る由もなく、同僚で親友のロハン(Rohan Gowda)にこの出来事を打ち明ける。
 その晩、マヒーと買い物に出かけたシャームは、悪漢(Harish Rai)に襲撃され、命を落とす。しかし、肉体は確かに死んでしまったのだが、彼はマヒーを愛するあまり成仏できず、幽霊としてこの世に残る。シャームはマヒーのそばに寄り添うが、残念ながら彼の姿は誰にも見えず、声も聞こえなかった。また、肉体を持たない存在として、彼は物体を動かすことさえできなかった。
 ロハンがマヒーの部屋にやって来、二人でシャームの荷物を整理する。二人が出かけた後に、シャームは自分を殺した悪漢が部屋に侵入して来るのを見る。悪漢は戻って来たマヒーを襲おうとするが、うまくいかず、逃走する。シャームは悪漢の後を追跡し、男の名前(ウィリアム)と住所をつきとめる。
 シャームはチョーダンマ(Umashree)という女霊媒師と出会う。彼は自分の声がチョーダンマには聞こえることに気付き、彼女をマヒーに会わせ、ウィリアムという男が命を狙っていること、及び、その住所を伝えさせる。
 マヒーはロハンにそのことを伝える。ロハンはウィリアムの住所地へと向かうが、その後を追ったシャームは驚く。実はロハンとウィリアムは共謀しており、シャームの口座に入った大金を横取りするために彼を殺害したのであった。
 マヒーはこの件で警察に行くが、実はチョーダンマはインチキ霊媒師で、何度も警察の厄介になった人物だったため、まったく相手にしてもらえなかった。一方、ロハンはシャームの遺品から彼の口座のパスワードを盗み知り、1億4千万ルピーをそっくり「サンギータ・マラニ」という女の口座に移し入れる。
 ロハンの悪事をすべて知ったシャームは反撃に出る。彼は、以前列車の中で出会った男の幽霊(Rangayana Raghu)に訓練してもらい、物体を動かす方法を会得する。また、チョーダンマにサンギータ・マラニのふりをしてもらい、その銀行口座を閉じさせ、引き出した1億4千万ルピーを慈善団体に寄付させる。
 チョーダンマに金を騙し取られたと思ったロハンとウィリアムは、彼女に襲いかかるが、シャームに妨害され、ウィリアムは落命する。シャームは今一度チョーダンマをマヒーに会わせ、自分が幽霊として彼女のそばにいることを信じさせる。シャームはチョーダンマの身体に入り込み、マヒーの手を取り、久々の感触を味わう。と、そこへ拳銃を持ったロハンが現れる、、、。

   *    *    *    *

 主役のシャームを演じたミトゥン・テージャスウィは、本作は【Ghost】から着想を得ているだけで、リメイクではない、とインタビューで言っていたが、若干の変更はあるものの、ストーリー全体を見ても、細部の設定・アイデアを見ても、リメイクと言うのが正直なところだろう。
 ただ、映画全体から受ける印象はずいぶん違っていて、私は【Ghost】を観たとき、子供騙しだなぁとは思いながらも映画的に騙されて、B級映画という印象は受けなかったが、この【Antharathma】はかなりトホホなB級ロマンティック・コメディー・ホラー映画だと思った。しかし、本作が駄作だというわけでは全然なく、この作品の場合、安っぽいB級感がほどよい味を出していて、まったく楽しく鑑賞でき、満足さえした。これなら、映画本編に特に期待せずクーポン券を買った人も儲けものだと思うだろう。

 残念だったのは、【Ghost】といえば20年も前のアメリカのファンタジー映画なのだが、その幼稚な部分が批判的に修正されているわけではなく、かといってバカバカしく発展させられているわけでもなく、割とそのまま踏襲されていたことだ。20年の差があまり感じられず、これなら「インド(カンナダ)映画はハリウッドの20年遅れ」と自分で言っているようなものだ。

 もう一つ、インド映画としての独自性という点でも、もう一工夫ほしかった。
 私はインド映画を観て「これがインド人の考え方/発想/価値観なのかなぁ」と言えるものを見つけて喜んでいるところがあるのだが、近ごろはサスペンス物やホラー物などに外国映画からアイデアを取っているものが多く、それが公表されているならいいのだが、こっそりパクッている場合も多く、どこまでがインド独特のものなのか分かりにくくなっているのである。
 本作も、人の死後の様子が【Ghost】からそのまま取られており、オリジナルを観ていなかったら「インド人ってこんなふうに考えているんだ」と誤解したかもしれないし、せっかくインド映画にリメイクするなら、インド人の死生観を下敷きに変更を加えてもよかったのでは、と思う。
 一つ面白いと思ったことに、先輩(?)の幽霊がシャームの幽霊に対して物体の動かし方を伝授している場面で、「お前は単なるマナスではなく、アートマなんだ」と言うセリフがあった。マナスもアートマも心や魂、精神を表す言葉で、どう違うのかと聞かれれば困るのだが、この場合、アートマのほうが実体性のある精神的存在と考えられているようだ。こういう分け方はインドっぽいと思えるのだが、これとてオリジナルで‘heart’や‘spirit’、‘soul’などと言っていたのを適当にインドの言葉に置き換えただけかもしれない。

◆ 演技者たち
 主演のミトゥン・テージャスウィは、スター性に乏しい平凡な風貌で、華々しく語られることもないのだが、業界では実力のある俳優だと見なされている。野心もあるようで、近々監督としてもデビュー予定である。
 彼の出演作では、私はこれまで【7 O'clock】(06)と【Aakaasha Gange】(08)しか観ていないが、これらの作品を観る限り、地味ながら気の利いた作品を選んで出演しているかのようだ。
 本作での演技もまずまずだった。

 ヒロインのマヒー役はVishaka Singhという人。詳細は知らないのだが、どうやら売れないボリウッド女優のようで、カンナダ映画は初出演。
 悪くはなかったが、特に強い印象も残らなかった。【Ghost】ではデミ・ムーアが大ブレイクしたが、こちらはそうは行かないようだ。
 (写真トップ:Mithun TejaswiとVishaka Singh。)

 【Ghost】では女霊媒師を演じたウーピー・ゴールドバーグが大評判だったように、このカンナダ版でもチョーダンマ役のウマーシュリーは傑作だった。本作最大の見どころだろうし、彼女のパフォーマンスがなかったら、本作は間違いなく駄作に転じていたはずだ。
 【Gulabi Talkies】(08)ではシリアスな役柄で評価され、国家映画賞主演女優賞まで取ったウマーシュリーだが、得意とするのはコメディー。映画出演350本超というベテラン・コメディエンヌの本領が見事に発揮されていた。

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 ‘列車の幽霊’をやったランガーヤナ・ラグは、もっと凄まじい演技ができたはずだが、やや期待はずれ。幽霊のキャラクター付けがうまく行っていなかったようだ。

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◆ 音楽・撮影・その他
 音楽はGiridhar Diwanという人の担当。ほとんど馴染みのない人だが、曲自体は悪くはなかった。
 撮影とグラフィックスはOK。

◆ 結語
 【Antharathma】はハリウッド映画のB級仕様リメイク作品なのだが、それに相応しい面白さは確保している。ユニークなプローモーション戦略と共に、まずはシャンカル監督(兼プロデューサー)の試みは成功したと言えるだろう。ヒットするかどうかは分からないが、夏休みの家族連れを呼び込んで、意外と良い成績を残すかもしれない。私からはウマーシュリーのパフォーマンスにオススメ印を付けておく。

・満足度 : 2.5 / 5
 

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