カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Shankar IPS】 (Kannada)

<<   作成日時 : 2010/05/26 03:40   >>

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 「ブラック・コブラ」こと、ヴィジャイ主演のカンナダ映画。
 インド映画にスターはあまたいれど、私の目から見て「なんでこいつがスターやねん」と思えるスターも多い。この、【Duniya】(07)でブレイクしたカンナダのヴィジャイも「なんでこいつがスターやねん名鑑」に入る一人だ。
 【Duniya】一発で終わるかな、と思っていたのだが、しかし、筋骨隆々の肉体を売りにしたフル・アクション俳優というのも近ごろ珍しく、庶民派のヒーローとして、興行収入の期待できる俳優になってしまった。
 しかも彼の場合、特異な泥々の風貌に加え、一応、最低限の演技力があり、変に格好つけたところもないので、オフビートな映画作家からも好かれ、【Avva】(08)や【Slum Bala】(08)などの社会派映画でもうまくやっている。
 本作はそのヴィジャイが初めて警官(IPS)の役をやるということで、少なからず話題になっていた。

 と、勿体ぶってヴィジャイの紹介から入ったが、私が本作を観に行った理由はヴィジャイでは全然なく、例によって女優たちだ。
 本作にはラーギニとキャサリンの2人のヒロインがおり、ラーギニは去年【Veera Madakari】でデビューした新進のカンナダ女優で、けっこう注目を集めている。だが、私のお目当ては彼女ではなく、キャサリンのほうだ。
 キャサリンはバンガロール在住のモデルで、2年前のミス・インディア・コンテストにも出たらしい(しかし、どのミスコンなのか、ネットで調べても裏が取れない)。私好みのぽわっとした美女で、1年前から密かに目を付けていたのだが、やっと映画デビューしてくれた。(ちなみに、両親はケーララ人らしい。)
 (写真下:ラーギニ(左)とキャサリン。キャサリンのギャラリーはこちら。)

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【Shankar IPS】 (2010 : Kannada)
物語・脚本・台詞・監督 : M.S. Ramesh
出演 : Vijay, Ragini Dwivedi, Catherine Tresa, Rangayana Raghu, Avinash, Shobharaj, Vinaya Prasad
音楽 : Guru Kiran
撮影 : Dasari Seenu
制作 : K. Manju

《あらすじ》
 シャンカル・プラサド(Vijay)はかつて警察副本部長であったが、ある事件を機に辞任していた。彼は確信犯的に殺人を繰り返していたが、ターゲットとしていたのは、レイプなどの婦人犯罪を犯しながらも法の裁きを逃れている輩であった。警察はシャンカルを逮捕し、裁判にかける。法廷でシャンカルは検察側に立つ法律家ラグナート・レッディ(Rangayana Raghu)と対峙する。
 裁判ではシャンカルを有罪とする有力な証拠が挙がらず、審理は中断する。彼はテレビ局の取材に対し、法律がいかに悪用され、正義が損なわれているかを訴える。興味を持ったテレビ局はシャンカルのために特別番組を設定する。その中で彼は、「酸攻撃(acid attacks)」の被害者となった女性たちを紹介し、自身が関わった事件について語り始める。
 ・・・
 警察副本部長のシャンカルは不正に対しては手厳しい態度で臨み、特にセクハラやレイプなど、婦人に対する犯罪の検挙に力を入れていた。
 彼はある日、警察署に苦情申し立てに来たシルパ(Catherine Tresa)という女性と知り合う。シルパはモデルで、ミス・インディア・コンテストの地区予選を勝ち抜き、近々、本選に臨むところだった。また、彼女の父スレンドラ(Shobharaj)はシャンカルの署に勤務する警官であった。
 ミスコンを闘うため、シルパにアシュウィニ(Ragini)という女性トレーナーが付く。また、資金面のサポートは実業家のサクレーチャ(Avinash)が担当することになるが、彼は息子のゴワルダンにこのプロジェクトを任せる。
 しかし、ゴワルダンはシルパにセクハラを働くようになる。これを嫌った彼女はコンテスト出場を諦めようとする。だが、シルパがコンテストに出場する動機(盲人施設の援助)を知っていたシャンカルは、アシュウィニと協力し、他のスポンサーを付けてトレーニングを続けさせる。
 面白くないゴワルダンはシルパをレイプしようとする。彼女はこの件でゴワルダンを告訴しようとするが、コンテストへの影響を考えて、取り止める。だが、この件はニュースとなり、体面を傷付けられたゴワルダンは、復讐のため、シルパの顔に塩酸を投げ掛ける。
 シルパとシャンカル、それに事件を目撃したアシュウィニは、レイプ未遂と酸攻撃の廉でゴワルダンを告訴する。だが、裁判では、関係者はサクレーチャに買収され、有力証言が出なかった。また、ゴワルダンの弁護に立ったラグナート・レッディが言葉巧みに尋問を行ったため、裁判は被告に有利に進む。ラグナート・レッディはシャンカルとアシュウィニの「緊密な関係」を指摘し、アシュウィニの目撃証言は当てにならないと断じる。実は、その頃アシュウィニは家族とのトラブルで家出し、シャンカルの家で起居していたのである。責任を感じたシャンカルは彼女と結婚する。
 結局、ゴワルダンは無罪となり、釈放される。これを理不尽と見たシャンカルは、シルパの父スレンドラを伴い、エンカウンターに見せかけてゴワルダンを射殺する。だが、この行為が警察で問題になり、シャンカルは辞任せざるを得なくなる。彼は私的な市民の守護者として、悪を抹殺する道を選ぶ。
 ・・・
 シャンカルの裁判が再会される。だが、ちょうどその頃、ラグナート・レッディの娘が誘拐され、レイプされそうになる事件が起きる。彼は警察に訴えに行くが、かつてのシャンカルの部下たちは相手にしない。ラグナート・レッディはシャンカルに、今度は自分の娘のレイプ未遂犯を弁護するか、と非難される。彼は自分の非を悟り、裁判でシャンカルを追及することを止める。

   *    *    *    *

 期待値ゼロで観たけれど、思ったより見どころがあり、感心、感心。

 何がうれしいと言って、この映画が「酸攻撃(acid attacks)」の問題を取り上げてくれたことだ。
 「酸攻撃」は、ご存知の方も多いと思うが、なぜかインドを含む南アジアで多発している犯罪で、被害者は主に女性。動機は様々あるようだが、主なケースは、女性に結婚、交際、または性交渉を迫り、拒否された男が、復讐のためにその女性(主に顔)に塩酸や硫酸などの液を投げ掛けるという、非常に陰湿な犯罪。恥ずかしながらカルナータカ州は多発地帯に数えられており、ある調査によると1999年から2008年までの10年間で68件のケースが報告されているそうだ。しかし、これは公にされた事例だけで、実際にはもっと多くの事件が発生しており、泣き寝入りしている被害女性も多いと言われている。
 この「酸攻撃」の犯罪性を、映画という手段を通して大衆に問い掛けた意義は大きい。本作では実際に酸攻撃の被害に遭った女性が3人登場し、自らの口で事件の悲惨さを語るという趣向になっている。映画制作サイドも、本作は単なるアクション娯楽映画ではなく、メッセージを持ったものとして、女性の方にもぜひ観ていただきたいと述べている。

 ところが、、、その真面目な意図は評価できるし、一定のインパクトもあったと思うが、映画全体としての見せ方には大いに首をかしげた。
 本作はセクハラやレイプ、酸攻撃など、女性への犯罪を問題視し、女の人にも観ていただきたいと宣伝しておきながら、相変わらずヒロインたちは必要以上に露出度の高い衣装を着せられ、お尻フリフリのダンスをさせられているのである。こんなセクハラまがいのダンス・シーンを見せられては、監督たちがどこまで真剣に婦人問題を考えているのか、疑ってしまう。
 それとこれとは話が別なのかもしれないが、本作では実際に酸攻撃の被害者を出演させるほどの意気込みがあるのなら、今回ばかりはスキンショーを控えてもよかったと思う。
 こうした「娯楽」と「有意味なメッセージ」のバランスの難しさは娯楽映画には付き物だが、本作はこの二要素の突き合せ方がてんでなっていなかったようだ。これはM.S.ラメーシュ監督一人の不手際というより、カンナダ映画全般にありがちな問題だと思う。

 タバコのことも腑に落ちない。
 ヴィジャイ演じる本作のヒーロー、シャンカルは、常にタバコをくわえているヘビー・スモーカーとして描かれており、そのせいで映画の開始前に「タバコは有害です」という同じ注意広告が3度も流されたのである(3度も繰り返されるのは異例)。
 別に正義の警官はタバコを吸っちゃいかんと言いたいわけではないが、タバコといえばインドでは日本以上に問題視する姿勢が強く、インド映画の中でも登場人物がぷかぷかタバコを吸う場面はぐっと減った。そんな流れの中にあって、本作のようなヒーローをわざわざヘビー・スモーカーと設定する必要があったのか、疑問に思う。
 それとこれも別なのかもしれないが、もし監督たち作り手が、タバコを吸うヒーローや水着を着たヒロインを見せさえすれば観客は喜ぶだろうと考えたなら、それほど観客をバカにした態度はない。タバコやスキンショーがなければ観客が減るわけではなく、むしろカンナダ映画の作り手も、自分たちが幼稚な映画しか見せて来なかったから、観客も幼稚なレベルに留まっているのだ、という事実に気付くべきだろう。

 ストーリー面でも納得できない点が多い。
 例えば、本作の大きなテーマは、「女性問題」ではなく、警察や政治家、弁護士は責任を持って職務を遂行すべきであり、法律を弄ぶようなことをしてはいけない、ということだ。それで、法律家のラグナート・レッディを改心させるストーリーにする必要があったのだが、これはOK。だが、改心したラグナート・レッディがしなければならないのは、先のゴワルダンの裁判は誤りだったと認めることであり、その後は、理由は何であれ民間人を殺害し続けたシャンカルを法の指し示すとおり裁くことであり、シャンカルも粛々として刑に服するというストーリー展開にすべきだったと思う。それが法による正義というものだろう。ところが、本作の結末は、自分の娘がレイプ未遂に遭い、非を悟ったラグナート・レッディがシャンカルを赦す、というものであり、これはインド娯楽映画の範疇でも私は認めることができない。

 ついでだから書いておくと、本作は始めに裁判のシーンがあり、回想シーンの中で大規模な裁判シーンがあり、回想が終わってからまた裁判シーンに戻るというストーリー構成だったが、これだけ裁判シーンが続くと、さすがに観客もうんざりしているようだった。

◆ 演技者たち
 主役のヴィジャイは、セリフが一本調子だった点を除けば、タメのある演技をしており、ヒーロー俳優として確実に成長している。(だからといって、「なんでこいつがスターやねん」指定を解除するつもりはないが。)
 アクションも上手くこなしている。
 ところでヴィジャイは、娯楽スターの例に漏れず、ラジニカントのファンなのであるが、ラジニカントもヴィジャイの【Duniya】を2回も観て感銘を受け、ぜひとも本人に会いたがったという逸話が残っている(実際にヴィジャイはその後ラジニカントと会っているらしい。)そのとおり、本作のヴィジャイはラジニカントを思わせる仕種を連発していた。

 アシュウィニ役のラーギニは、私はあまり好きではないのでコメントにも力が入らないが、かなり頑張っていた。感心、感心。
 デビュー作の【Veera Madakari】はヒットしたのであるが、特に彼女が褒められたわけでもなく、早く女優としてのブレイク作がほしいところだろう。そんな気持ちがあってか、本作ではかなり力の入った演技をしていた。(この気合いを以ってすると、何者かにはなるだろう。)
 (写真下:ブラック・コブラ・ヴィジャイとラーギニ。)

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 シルパ役のキャサリンは、とにかく彼女のぽわぽわっとしたカワユさが拝めて、私的には満足したが、女優としては使いにくいタイプだろう。
 演技的にはまだ判断できないが、ダンスはこれまたからっきしだった。うまく行けば、テルグ映画の近ごろ流行のチョコレート・ロマンスで成功するかもしれないが、下手すりゃボリウッド映画の3人ぐらいいる準ヒロインの1人、といった使われ方で終わるかもしれない。
 幸い、スディープと共演の次回作も決まっており、このまま注視は続けたい。

 ところで、ラーギニもキャサリンもバンガロール在住で、モデル出身で、ミスコン経験者と、似たようなプロフィールなのだが、こういうタイプのオネエサマが目立つようになったとは、サンダルウッドもずいぶん様変わりしたものだ。

 脇役陣では、法律家役のランガーヤナ・ラグが相変わらずの舌技を見せていた。

◆ 音楽・撮影・その他
 音楽はグル・キランだが、出来は悪い。
 音楽シーンも、お世辞にも質が高いものとは言えない。

◆ 結語
 【Shankar IPS】は、素晴らしい意図を持ちながら、脚本のまずさが作品を台無しにしてしまった残念作。しかし、見どころもいくつかあり、難しいことを言わなければまずまず楽しめる。「Acid Attacks」の問題を扱った作品として、記憶の片隅に留めておくぐらいの価値はある。

・満足度 : 2.5 / 5
 

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