カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Vedam】 (Telugu)

<<   作成日時 : 2010/06/16 22:09   >>

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 クリシュ(Radhakrishna Jagarlamudi)監督のテルグ映画。
 デビュー作の【Gamyam】(08)一発でトリウッドの新世代を象徴する監督となってしまったクリシュだが、彼の技量を見極める上で重要な第2作。
 本作は、内容は概ね秘密のまま撮影が進められたが、アッル・アルジュンやマンチュ・マノージ、アヌシュカらを起用したマルチ・スター映画という触れ込みで、注目度は高かった。
 あらすじを読んで混乱しないよう、先に書いておくと、本作は5人の主要登場人物(ヴィヴェーク、ラームルー、サロージャ、ラヒーム、ラージュ)のストーリーが個別に並行して進み、クライマックスで一本に縒り合わされるという構成になっている。
 (写真上:左よりManchu Manoj Kumar、Allu Arjun、Anushka。)

【Vedam】 (2010 : Telugu)
物語・脚本・台詞・監督 : Radhakrishna Jagarlamudi
出演 : Allu Arjun, Manchu Manoj Kumar(ゲスト出演), Anushka, Manoj Bajpai, Nagayya, Deeksha Seth, Lekha Washington, Saranya, Raghu Babu, Satyam Rajesh, Ravi Prakash, Brahmanandam, Pruthvi, Posani Krishna Murali, Siya Gautham, Krish(特別出演)
音楽 : M.M. Keeravani
撮影 : V.S. Gnana Sekhar
編集 : Sravan
制作 : Prasad Devineni, Shobu Yarlagadda

《あらすじ》
 バンガロールに暮らすヴィヴェーク(Manchu Manoj Kumar)は恋人のラシヤ(Lekha Washington)ら5人でロックバンドを結成していた。ヴィヴェークの母は彼に祖父や父と同様軍人になってもらいたいと願っていたが、彼はロックスターになる道を選ぶ。ヴィヴェークのバンドはニューイヤー・コンサートに出演するためハイダラーバードへ行くことになるが、飛行機に乗り遅れてしまったため、車で移動することにする。

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 ラームルー(Nagayya)はシリシッラの村で機織をしている貧しい老人。彼は5万ルピーの借金が返せなかったため、金貸し屋は彼の孫を取り上げ、強制労働に従事させる。大金を得る道は義理の娘パドマ(Saranya)の腎臓を売るしかなかった。ラームルーとパドマはブローカーの指示で、ハイダラーバードの病院へ行くことにする。
 アマラプラムで売春婦をしているサロージャ(Anushka)は、ピンはねされる上、自由のない今の娼館を抜け出し、自分で売春ビジネスを始めようとしていた。彼女はブローカーと連絡を取り、ヒジュラのカルプーラムと共に夜中に娼館を脱出し、ハイダラーバード行きの列車に乗り込む。
 ハイダラーバード在住のラヒーム・クレーシ(Manoj Bajpai)は正しい男であったが、イスラム教徒というだけで嫌がらせを受け、ヒンドゥー教の祭礼のときに受けた暴力で妻(Siya Gautham)が流産するという悲劇も経験していた。ラヒームと妻はインドを離れ、UAEのシャールジャに移住しようとするが、出発の前日にテロリストと誤解され、警官(Ravi Prakash)に逮捕される。
 ハイダラーバードのスラムに暮らすラージュ(Allu Arjun)は、高等教育を受けたものの、しがないケーブルTVの技術者だった。彼はプージャ(Deeksha Seth)という富豪の娘と付き合っていたが、スラム民であることを隠し、自分も富豪の息子だと偽っていた。だが、プージャに高級ホテルでのニューイヤー・パーティーに参加するよう誘われ、会費の4万ルピーを準備しなければならなくなる。困ったラージュは、引ったくりをして現金を得ようとする。

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 ハイダラーバードに到着したサロージャは、駅で怪しまれ、警察にしょっ引かれる。また、ラージュは、結婚パレードをしている新婦から金のネックレスを引ったくろうとし、逮捕される。サロージャとラージュは警察署で会い、言葉を交わす。二人はすぐに釈放される。

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 テロリストの嫌疑を受けたラヒームは、取調べを受けた後、車で搬送される途中に脱走を試みる。だが、警官に足を撃たれ、病院に運ばれる。
 サロージャとカルプーラムはブローカーと会い、新しい売春宿へ行くが、しかしこのブローカーが以前の娼館のオーナーと通じており、元の木阿弥であることを悟る。ブローカーの運転する車に乗っていたサロージャは脱出しようと暴れるが、そのせいで車は他の車と激突しそうになり、事故を起こす。サロージャは怪我をしたカルプーラムを病院まで連れて行く。
 ヴィヴェークたちの車も、山あり谷ありしたものの、なんとかハイダラーバードに到着する。しかし、いきなり他の車(サロージャらの乗っていた車)と衝突しそうになり、事故を起こす。ヴィヴェークは、妊婦がこの事故に巻き込まれて怪我をしているのを発見し、ラシヤと共に彼女を病院に運び込む。
 他方、紆余曲折の末、パドマの腎臓摘出手術も終わり、ラームルー老人はブローカーから4万ルピーの現金を受け取る。その場面を目撃したラージュは、病院にいるこの老人からお金を奪い取る。しかし、高級ホテルの受付まで来た彼は、良心の呵責に苛まれ、プージャに真実を告げ、老人にお金を返すために病院へと戻る、、、。

   *    *    *    *

 こうして、5人の主要登場人物とその関係者たちが同じ一つの病院に集まったわけだが、この後ここで何が起きるかは、観てのお楽しみとしたい。

 上のあらすじではとても再現できなかったが、実際の映画は5つのエピソードが細かくシーン割りされ、巧みに配分されている。一見、複雑そうな展開だが、脚本が非常に上手く練られているため、スムーズに観られる。ストーリー構成として、ハリウッド映画の【Crash】(05)に想を得ているのでは、との指摘もあるが、あり得そうな話だ。だが、盛り込まれた内容は全然違っている。

 テーマ的にも、極めてシンプルで明瞭なもので、ハートタッチングな「人間性礼賛」となっている。その根幹メッセージに、クリシュ監督らしく、インドの様々な社会的様相(例えば、貧困と貧富の格差の問題、イスラム原理主義者やヒンドゥ至上主義者の暴力的行為、マイノリティに対する差別、児童強制労働、臓器売買など)が乗っ掛かり、その間口の広さから、テルグ映画というよりは、インド映画と呼ぶのが適当だろう。
 題名の「Vedam」は、リグ・ヴェーダなどの「ヴェーダ」のことなのだが、どういう意味で、また、どういう意図でこの言葉を使っているのかは分からない。

 作品としてはかなり面白く、まとめ方の見事さから傑作と評してもいいだろう。
 ただ、私的には【Gamyam】ほど強い感銘を受けなかったのは、やはり詰め込みすぎがあるのだと思う。【Gamyam】を観たときにも感じたことだが、どうもクリシュ監督は欲張りすぎる嫌いがある。本作も映画が5本撮れるほどのネタで、それを1本にまとめた手腕には感服し、「詰め込み屋クリちゃん」の称号を贈りたいほどだが、もっと絞るべきところは絞り、切るべきところは切るべきだったろう。不必要と思われるエピソードもいくつかあった。
 また、本作はあくまでも娯楽映画で、社会的写実ドラマとは違うのだが、各エピソードによって写実性と虚構性の間でばらつきがあったと思う(例えば、腎臓売買のエピソードはリアルなのだが、売春婦サロージャのエピソードはかなり嘘っぽい)。
 クライマックスにも疑問を感じないこともないのだが、これについては伏せることにしたので、ここでは議論しない。

◆ 演技者たち
 主要登場人物の造形と俳優の演技はすべて良かったと思う。これも本作の評価点だろう。
 一人一人について詳述しないが、思いがけず強い印象を受けたのは、娼婦サロージャ(Anushka)の友人、ヒジュラのカルプーラム役をやっていた人だ。私は、この人は本物のヒジュラだと思いながら見ていたのだが、実は純粋な男で、しかもアヌシュカのメイクを担当しているメイクアップ・アーチストらしい。(写真下の左)

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 マンチュ・マノージは、クレジットでは「ゲスト出演」となっているのだが、実際には主役の一人で、出番も多い。これについてはさる経緯があるのだが、あまりにアホくさいので、ここでは触れないことにする。

 コメディアンとしては、ブラフマーナンダムのみのエントリー。短い出番だったが、ふっと笑えた。

◆ 音楽・撮影・その他
 音楽シーンの入れ方は上手かった。ただし、キーラワーニの音楽そのものはイマイチだと感じた。
 個々の音楽シーンの出来を見ると、いくつか印象的なものはあったが、全体的に控え目な印象を受けた。特にアッル・アルジュンのダンス・シーンなど、もっと派手にやってもよかったと思う。

◆ 結語
 公開1週間の興行成績は上々のようだ。こういう作品は都市部のミドル・アッパー層にアピールするものなのだが、意外なことに、地方でも観客を集めているらしい。これは注目すべき事柄だ。たぶん、本作が村落部の貧困層にも目配りが利いていることと、クリシュ監督が非常に分かりやすい形でメッセージを伝えていることが成功の要因だろう。
 強くお勧めする。

・満足度 : 4.0 / 5
 

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