カーヴェリ川長治の南インド映画日記

アクセスカウンタ

zoom RSS 【Eradane Maduve】 (Kannada)

<<   作成日時 : 2010/07/21 12:56   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 1 / コメント 0

画像

 ディネーシュ・バブ監督のカンナダ映画。
 ディネーシュ・バブ監督については、このブログでも何度か紹介してきたように、「早い」「安い」「上手い」の仕事人として知られている。ところが、近ごろは不調続きで、【Mr Garagasa】(08)以来、ヒットから見放されている。思えば、氏が作っているような簡素な低予算映画は、よっぽど充実した内容がない限り、テレビドラマとあまり変わらなくなってしまい、客を集めるには至らないということなのかもしれない。
 しかし、本作は久々に評判が良く、客も集めているようだ。アナント・ナーグとスハシニ・マニラトナムの主役ペアにも期待が持てたので、観に行くことにした。
 題名の「Eradane Maduve」は「二度目の結婚」という意味。

【Eradane Maduve】 (2010 : Kannada)
物語・監督 : Dinesh Babu
出演 : Anant Nag, Suhasini Maniratnam, Jennifer Kotwal, Sharan, Tara, Rangayana Raghu, Prem Kumar, Sindhu, Navya, Nagakiran
音楽 : Jaipal
撮影 : Dinesh Babu
制作 : K.A. Suresh, K. Rajeev

《あらすじ》
 ヴィシュワナート(Anant Nag)は公務員だが、スキャンダル事件の巻き添えを喰らって停職処分となり、蟄居していた。妻で銀行支店長のマーラヴィカ(Suhasini)、3人の娘たち、マーラヴィカの弟マンジュ(Sharan)、さらにはメイドのラーダー(Tara)までもが、そんなヴィシュワナートを軽んじ、彼は「主夫」として家事を押し付けられる日々だった。
 いたたまれなくなったヴィシュワナートは友人の弁護士ムルティ(Rangayana Raghu)に相談する。いっそ離婚してしまいたいところだったが、自宅の所有権の問題があり、それは避けたかった。自宅の土地はヴィシュワナート名義だが、家屋はマーラヴィカ名義だったからである。ムルティはマーラヴィカを家から追い出すための作戦を考える。彼はテレビ女優のヴィーナ(Jennifer)をヴィシュワナート家に送り込み、ヴィシュワナートの恋人のふりをさせる。

画像

 この作戦は図に当たり、マーラヴィカはひどく動揺する。弟のマンジュはマーラヴィカにも同じ行動を取るようアドバイスするが、彼女は踏ん切れない。
 ところが、マーラヴィカはたまたまスーパーでお誂え向きの青年ヴィヴェック(Prem Kumar)を見つけ、家まで連れて帰る。妻の恋人の出現に、ヴィシュワナートをひっくり返る。さらには、ヴィヴェックがたまたま長女ムルドゥラの恋人だったため、話がややこしくなる。

画像

 非を悟ったヴィシュワナートはヴィーナとのお芝居を終わらせようとするが、折悪しく彼女は家の中で倒れてしまう。往診に来た医者はヴィシュワナートにヴィーナが妊娠していることを告げる。それを聞いたマーラヴィカは、鬼のような形相で夫を問い詰める、、、。

画像

   *    *    *    *

 抱腹絶倒というわけではないけれど、状況のおかしさに思わず笑ってしまう家族コメディーだった。
 本作も予算は1360万ルピーと、インド映画の水準でも今どき珍しい低予算作品。内容的にもテレビドラマとあまり変わらないのだが、適切な脚本とキャスティング、役者たちの好演のおかげで、出来としては良い。監督自身による撮影もしっかりしており、テレビドラマとは違う高級感を出していた。

 相方をやり込める作戦として偽の恋人を持ってくることや、嘘が雪だるま式に拡大していくストーリー展開など、コメディーの常套手法が採られている。典型的な家族コメディーと言えるが、こういう作品は以前ほど作られなくなったので、またカンナダ映画はこの種の家族映画を得意としてきただけに、むしろ伝統復活を好ましく感じた。

 内容的には、家長である亭主/父を蔑ろにした他の家族メンバーに天罰が下るというものを予想したが、そういうことでもなかった。ヴィシュワナート(Anant Nag)もマーラヴィカ(Suhasini)も、相手を騙して茶番劇を演じるという愚を犯しており、そのアホくささに気付いた娘たちが愛想を尽かすというもので、「夫婦たるもの、和して、子の鑑となるべし」という教訓が込められていた。
 一見、ありきたりな結論のように思えるが(それはそうなのだが)、本作のトラブルが起きる出発点には、偉すぎる妻がいて、財産(家)が夫婦で共有されているという状況がある。都市部などでは核家族化が進み、伝統的な家父長制度が緩みつつある今、同じような状況にある夫婦共稼ぎ家族は少なくないだろう。本作のヴィシュワナート家は、そうした家族の手頃な反面教師になっているのではないだろうか。

 ところで、本作はカルナータカ州首相のB.S.イェディユラッパがわざわざ鑑賞し、大そう喜んだと報道されている。それほどの傑作なのか?という疑問も起きるが、実は、現地人の噂によると、本作のヴィシュワナートを巡る人物・状況設定には、ある政治家と女優のスキャンダル(H.D.クマーラスワミ元州首相とラディカのことだと思われる)が風刺的に込められているかもしれないとのことで、政敵の恥をイェディユラッパが嗤ったと解釈されている。

◆ 演技者たち
 ヴィシュワナート役のアナント・ナーグについては、今さら「上手かった」などと言う必要もないと思うが、主夫としてせっせと家事をやらされている様が笑えた。基本的に紳士なのだが、ヴィーナ(Jennifer)と並んでいるショットでは、どこか嫌らしいオジサンに見えるところがナイスだった。
 参考に、アナント・ナーグはディネーシュ・バブの作品には過去12本出ているらしい。

画像

 同じく、マーラヴィカ役のスハシニさんも期待どおり。今なお大そうな美貌の持ち主なのだが、それを押し潰すかのような様々な表情が楽しめた。
 カンナダ映画にはたくさん出演しているスハシニさんだが、意外なことに、アナント・ナーグとの共演は【Hosa Neeru】(86)以来らしい。
 ちなみに、ディネーシュ・バブ監督とは縁が深く、【Suprabhata】(88)、【Amruthavarshini】(96)などの名作がある(最近作は今年の【School Master】)。

画像

 偽の恋人役を務めたジェニファーとプレム・クマールは効果的だった。
 思えば、この2人はヒロイン、ヒーローもこなす俳優。本作は低予算とはいえ、なかなか贅沢なことをしている。

 ターラは「家政婦協会会長」という偉そうなメイドの役柄が笑えた。(写真下左)。
 カンナダ映画界の著名なコメディアンでありながら、笑える率1割という淋しい成績を誇るシャランだが、本作のマンジュ役は久々に笑えた。(写真下右)

画像

◆ 音楽・撮影・その他
 音楽はJaipalという人の担当。歌も音楽シーンも悪くはないが、まったく本作の見どころではない。

 撮影はディネーシュ・バブ監督自身の担当。やはり撮影日数11日間という早撮りだったらしい。早撮りの秘訣として、彼は2台のカメラを使って撮影しているとのこと。
 ディネーシュ・バブは「早撮りの名手」だけでなく、「密室の達人」でもあるのだが、本作もシーンの9割以上は1軒の家の室内で撮影されている。

◆ 結語
 オーソドックスな家族コメディーの佳作。大きな満腹感は得られないと思うが、旨いスイーツに出会ったときのような満足感はある。ちょっとお勧めかも。

・満足度 : 3.0 / 5
 

テーマ

注目テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(1件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
【Aarakshaka】 (Kannada)
 P・ヴァース監督とウペンドラが【Aarakshaka】という映画を撮っているという情報は得ていたが、それがこんなに早く公開になるとは思ってもみなかった。実は、この日はシャンカル監督のタミル映画【Nanban】を観るつもりだったが、満席でチケットが取れず、代わりに、わずかに空席のあったこの【Aarakshaka】を鑑賞することにした。  P・ヴァース監督はカンナダ映画では【Aaptha Mitra】(04)と【Aaptha Rakshaka】(10)を連続ヒットさせている。知ってのと... ...続きを見る
カーヴェリ川長治の南インド映画日記
2012/02/03 01:40

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
【Eradane Maduve】 (Kannada) カーヴェリ川長治の南インド映画日記/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる