カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Orange】 (Telugu)

<<   作成日時 : 2010/12/01 21:08   >>

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 バースカル監督、チル太こと、ラーム・チャラン・テージャ主演のテルグ映画。
 デビュー作【Bommarillu】(06)、第2作【Parugu】(08)と、ヒット作を物にしたバースカルだが、【Bommarillu】が批評的にも興行的にも大成功だったのに対して、【Parugu】は内容的にちと怪しいものがあった。第3作の本作でがっちり評価を固めたいところだろう。
 第3作といえば、主演のラーム・チャランも3作目となる。なにせ前作の【Magadheera】(09)は歴史的大ヒットだっただけに、チル太にとってもバースカル監督にとっても、期待されるハードルは高い。【Chiruta】(07)、【Magadheera】と、俳優というよりは荒事師のようなことをやっていたチル太だが、本作では一転して都会的ロマンスのヒーローを演じるとのこと。バースカル監督の作風を考えると、これは大注目だ。
 ヒロインがジェネリアというのもうれしい。相変わらず様々な言語の映画を掛け持ちし、さらにはテレビCMにも出演しまくり、落ち着きのないジェニーだが、やはり【Bommarillu】の「ハシニ」が彼女のベストだと信じる私にとって、本作に対する期待度は高い。
 
 と、いいこと尽くめのような本作だが、撮影は必ずしも円満には進まなかったようだ。プロデューサーのナーガ・バーブ(チル太の叔父)は、まず撮影監督のキラン・レッディ(バースカル監督の友人)をラージャシェーカルに代え、さらにバースカル監督のことを不用意に予算を使いすぎだと非難している(こちらの記事)。それで、撮影終盤にはバースカル監督が降りてしまい、別人物がメガホンを取ったという噂も流れたほどだった。

【Orange】 (2010 : Telugu)
物語・脚本・監督 : Bhaskar
出演 : Ram Charan Teja, Genelia, Shazahn Padamsee, Prakash Raj, Prabhu Ganesan, Brahmanandam, Sanjay Swaroop, Manjula Ghattamaneni, Pavitra Lokesh, Srinivas Avasarala, Vennela Kishore, Praneeth, Gayatri Rao, Sanchita Shetty, Madhurima, Nagendra Babu
音楽 : Harris Jayaraj
撮影 : Rajasekhar, Kiran Reddy
編集 : Marthand K. Venkatesh
制作 : Nagendra Babu

《あらすじ》
 グラフィティ・ペインターのラーム(Ram Charan Teja)は姉夫妻(Manjula Ghattamaneni & Sanjay Swaroop)と共にオーストラリアのシドニーで暮らしていた。彼は他人と違ったことがやりたくて、野生動物の写真を撮ったり、スカイダイビングを楽しんだりしていた。また、彼は嘘をつくことを何よりも嫌っていた。
 ある日、ラームはジャーヌ(Genelia)という女性と出会い、一目惚れする。ラームはあの手この手でジャーヌの気を引こうとした結果、ジャーヌもラームを愛するようになる。ところが、二人の間には大きな考え方のギャップがあることが分かる。ラームは、恋愛とは一時的なもので、ある期間が過ぎると終焉するものだと考えていた。それで、彼は次々にガールフレンドを取り換え、ジャーヌが10番目のそれであった。正直なラームはそのことをジャーヌにも隠さず話す。だが、理想主義者のジャーヌは、愛とは生涯に亘って永遠に持続すべきものだと考えていた。結局、ラームの考え方を受け入れられないジャーヌは、家族の勧める見合い話に臨むが、しかしラームのことが気に掛かり、縁談を断ってしまう。そのせいで、ラームはジャーヌの父(Prabhu Ganesan)と衝突したりする。
 ラームがこうした考えを抱くようになったのには、ある体験があった。彼は、学生時代にハイダラーバードへ行ったとき、ムンバイから来たルーバ(Shazahn Padamsee)という女性と出会い、一目惚れする。ラームはムンバイまでルーバを追いかけて行き、二人の間で交際が始まる。それはラームにとって初の本格的な恋愛体験であった。しかしラームは、時が経つにつれてその愛が色褪せてくるのを感じる。それでも恋愛を続けようとすれば、嘘をつかなければならなくなり、それはラームには受け入れがたいものであった。結局、ラームはルーバと分かれることになるが、以来、彼は恋愛のある局面において嘘をつかなければならなくなると、その恋愛を打ち切るようにしていたのである。
 その後もラームとジャーヌはたびたび顔を合わせる。ラームは、ジャーヌに対する自分の愛が真実なものであることを訴え、そのことはジャーヌも理解していた。だが、永遠の愛を約束させようとするジャーヌに対して、イエスとは言えないでいた。ところが、いくつかの出来事を通して、ラームの考えにも変化の兆しが現れる、、、。

   *    *    *    *

 バースカル監督らしい、コンセプト本意の省察的映画だった。
 あらすじを読んで分かるとおり、テーマは「恋愛や結婚生活において、愛とは有限なものか、それとも永遠か」ということで、「愛とは永遠であるべき」という意見に漂う嘘くささに対して、「愛の関係を続ける上で、嘘はやむをえないものか」という問いかけがある。コンセプトは面白いし、こうした事柄を正面切って取り上げているインド映画も珍しいので、私は非常に興味深く鑑賞した。
 ただ、バースカル監督の悪い点だと思うのだが、あまりにもマジに議論モード、省察モードに入ってしまい、後半はダレてしまった(この欠点は【Bommarillu】と【Parugu】でも感じた)。延々と続くラームとジャーヌの押し問答に、一般的なテルグ映画ファンの何割がお付き合いできるのか、ちょっと疑問に思った。
 こういう「愛は永遠か否か」という議論はなかなか片付くことではないので、映画の中で実験的に展開するより、【Vinnaithaandi Varuvaayaa】【Ye Maaya Chesave】(10)でガウタム・メノン監督がやったように、ロマンティックな、それこそ嘘くさい見せ方をしたほうが、娯楽映画としては正解だったのではないだろうか。

 ストーリーはあってなきが如しなので、脚本には苦労の跡が見える。物語全体は、ラームが警察官(プラカーシュ・ラージ演じる)に語る回想話という形を採っている。そして、テーマ上重要なラームとルーバの恋愛のエピソードは後半で後出しされている。この辺は良かったと思う。
 ただ、バースカル監督の結論は、そこに至るまでの展開からしてみると、平凡なところに落ち着いてしまった感があり(もちろん、平凡で全然かまわないのだが)、それを隠すためか、結末には変てこりんなヒネリが付いていた。

 私的に面白いと思ったのは、主人公ラームの性格付けだ。彼は他人とは違ったことをやりたい人物として描かれているが、そのためには「他人とは違ったオレ」、つまり「自我」に対する強い意識がなければならない。この人物像を造形するために、バースカル監督はラームをシドニー在住のNRIと設定し、グラフィティを描かせたり、サファリで写真を撮らせたり、スカイダイビングをさせたりして、制作費が膨らみ、ナーガ・バーブの怒りを買うこととなった。しかし、こういうラームのような人物が、いかにインドの伝統的な考え方(つまり、「夫婦愛は永遠であるべき」)と折り合いを付けていくかが本作におけるバースカル監督の意図だと思われるので、プロデューサーはしっかり理解して我慢すべきだったろう。(とは言っても、この映画が【Magadheera】よりちょっと安いぐらいなら、ナーガ・バーブも頭に来るわな。)

◆ 演技者たち
 主役のラーム・チャランのパフォーマンスについては、やはり合格点だ。過去2作とは違った役柄だが、特に違和感は感じなかった。男前だし、演技面で成長が見られるし、ダンスも上手い(しかし、ダンスの振り付けにはあまり面白みはなかった)。
 とは言うものの、私はなぜかこの人にくさいものを感じてしまうのだが、、、。「オレはスターだ、いや、スターであらねばならぬ」という気負いのようなものが本人からも、または周辺からも漂って来るようで、「素の面白さ」みたいなものが感じられないのである。(いつ自由になるのかね?)

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 ジェネリアについては、バースカル監督はジェネリア・オタクか、と思わせるほど、可愛らしく撮れている。ただ、冒頭の数シーンでの彼女は、頭に虫がわいているのでは?と思えるぐらいの過剰演技で、やや引いてしまった。
 全体としてもちろん悪くはなかったが、新鮮というほどでもなかった。

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 ルーバ役のシャザーン・パダムシーは、ムンバイから来た芸能家族のお嬢様。ヒンディー映画【Rocket Singh - Salesman of the Year】(09)でデビューしているが、偶然にもこの【Orange】と同日に公開されたタミル映画【Kanimozhi】でもヒロインを務めており、タミル・テルグ同時デビューとなった。
 【Kanimozhi】の主役のジャイが「典型的なムンバイ娘」とコメントしているとおり、いかにもなムンバイ娘に見える。好き嫌いは別として、本作のルーバは可愛かった。(写真下:スチールは【Kanimozhi】より。)

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 コメディーはブラフマーナンダム1枚だけ。これはけっこう面白かったが、コメディアンが2枚3枚並ぶのに慣れている観客には物足りなかっただろう。
 実は、【Ashta Chamma】(08)で注目されたSrinivas Avasaralaが出演していたのだが、シケた使われ方だった。

 脇役のプラカーシュ・ラージやプラブ・ガネーサンは普通。プロデューサーのナーガ・バーブが数シーンで顔を出し、おいしい見せ場を作っていた。
 その他、端役にも気になる名前があるのだが、ここでは割愛する。

◆ 音楽・撮影・その他
 音楽はハリス・ジャヤラージの担当。タミル映画界の人気作曲家だが、彼の映画の多くはテルグ語にもダビングされているので、AP州でもお馴染みだ。
 曲は良いし、CDはヒットしているようだ。ただ、彼の曲は、どの映画でも同じように聞こえてしまうのが辛いところだ。

 ラブストーリーといっても、アクション・シーンはしっかり用意されていて、それぞれ面白いアイデアのものだった。

◆ 結語
 バースカル監督らしい作品と思われるが、テルグ人一般にどこまで受け入れられるかは疑問。しかし、都会の若者層とチル太の親衛隊により、ある程度の興行成績は上げるかもしれない。日本のテルグ映画ファンなら、観ておいてもいい作品だろう。

・満足度 : 3.0 / 5

(オマケ画像)
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チル太「いよっ、アクション決まりっ! オレって、やっぱカッコいいわ。」

 

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
帰国までにOrangeのゲンちゃんが見れてよかったですね!

バースカルというのはクランクアップしてからも異常なまでにフィルムに手を入れたがる監督のようですね。おかげで大金つっこんで撮ったシーンもバッタバッタと切り捨てられてしまって、プロデューサーの頭がヤカン状態になるのもしばしばだとか。

http://www.cineandhra.in/2010/11/orange-director-lacks-clarity-and.html?utm_source=feedburner&utm_medium=twitter&utm_campaign=Feed%3A+cineandhra+%28cineandhra%29
メタ坊
2010/12/01 22:03
完全主義者なんでしょうかね、バースカルは。
いやいや、考えすぎなだけだと思います。

このテーマの映画だと、シェーカル・カンムラなら10分の1の予算で撮ったと思います。
 
カーヴェリ
2010/12/02 10:36

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