カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Kandireega】 (Telugu)

<<   作成日時 : 2011/08/24 21:22   >>

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 先日観たタミル映画の【Rowthiram】が予想以上に鬱陶しい作品だったので、憂さ晴らしが必要だと感じ、ラーム主演のテルグ映画【Kandireega】を観て来た。
 一体、私がテルグ映画を好む理由は、ともかくそれが娯楽的にオモロイというのがある。「実験的」とか「メッセージ志向」とかいった作品がないわけではないが、やはり大衆娯楽の線を大きく逸れた映画に対してはテルグ人は拒否反応を示すようだ。テルグ映画が安心なのは、近ごろのタミル映画にしばしば見られるような、悩ましい変化球映画がほとんど登場しないことだ。
 俳優陣からして、マヘーシュ・バーブにしてもNTRジュニアにしてもアッル・アルジュンにしても、あれだけ有能なのに、小難しい作品とか映画賞とかにはとんと無関心で、「アーチスト」というよりは「スター」、「芸術家」というよりは「芸人」に徹しているところが潔い。
 そんな中でもラームくんは一際「脳天気」(「能」より「脳」の漢字を宛てたい)な存在で、よもや彼の映画からは誰も「考えさせられる」問題作や「心に残る」名品は期待しまい。
 というわけで、憂さ晴らしならラームくんは持って来いじゃないか! ヒロインのハンシカというのが引っ掛かったが、とにかく爽快感を期待して、観ることにした。
 題名の「Kandireega」というのははっきり分からないが、テルグ人の話を総合すると、どうやら「スズメバチ」のことらしい。

【Kandireega】 (2011 : Telugu)
物語・脚本・台詞・監督 : Santosh Srinivas
出演 : Ram, Hansika Motwani, Sonu Sood, Aksha, Jayaprakash Reddy, Chandra Mohan, Srinivasa Reddy, Raghu Babu, M.S. Narayana, Brahmanandam, Dharmavarapu Subramanyam, Pragathi, Brahmaji, Hema, Rama Prabha, Swathi Reddy(特別出演)
音楽 : S.S. Thaman
撮影 : Andrew
編集 : Kotagiri Venkateswara Rao
制作 : Bellamkonda Suresh

《あらすじ》
 アナカパッリに暮らすスィーヌ(Ram)は村の問題児。彼は従妹のブッジ(Swathi)と結婚したいと望んでいたが、大学を出ていなかったため、あっさり彼女に拒否される。一念発起したスィーヌはハイダラーバードの大学で学士号を取ると宣言する。それは家が揺れるほど家族を驚かせるが、スィーヌは意に介さず、厄介払いができたと歓喜する村人一同に見送られ、ハイダラーバード行きの列車に乗り込む。
 列車の中でスィーヌは、まるで用意でもされていたかのように、女子大生たちにいたずらを働こうとする不良グループを叩きのめす。
 さて、向学心に燃えてハイダラーバードまでやって来たスィーヌであったが、登校初日にシュルティ(Hansika Motwani)に出会い、一目惚れし、追っかけを始める。だがシュルティには凶悪なヤクザのバヴァーニ(Sonu Sood)が目を付けており、彼女にちょっかいを出す男はバヴァーニの手下に半殺しの目に遭うのであった。それを知ったスィーヌは大胆不敵にもバヴァーニに挑戦的態度で臨む。そして、いくつかの展開を経て、スィーヌはシュルティの気持ちを勝ち取ることに成功する。
 しかし、バヴァーニも黙ってはいない。彼はシュルティを拉致し、力ずくで結婚式を挙げようとする。だが、その会場にスィーヌが現れ、シュルティを奪って逃走する。
 ところが、逃走の途中でシュルティが何者かの一団に誘拐されてしまう。と、そこへ現れたバヴァーニが余裕しゃくしゃくでスィーヌに告げる、シュルティを誘拐したのはワランガルのパワフルなラウディー、ラージャンナ(Jayaprakash Reddy)の一味で、スィーヌを誘き寄せるためだ、と。実は、ラージャンナの娘サンディヤ(Aksha)が、以前ハイダラーバード行きの列車の中で不良を叩きのめすスィーヌを目撃し、一目惚れし、彼との結婚を望んだために、ラージャンナが動いたというわけであった。
 スィーヌは早速ワランガルのラージャンナ邸に乗り込む。遅れて、バヴァーニもシュルティとの結婚を当て込んで屋敷にやって来る。スィーヌは、サンディヤとの縁談をご破算にし、バヴァーニをシュルティから遠ざけるために、あれこれと知恵を絞る、、、。

   *    *    *    *

 期待どおりの「理屈抜きに楽しめる型」の作品だった。実に面白くて、ハッピーな気分で映画館を出られた。
 久々のテルグ映画らしい映画だったとも言える。このところ湿っぽかったトリウッドだが、梅雨時の晴天といった感じで、うれしさのあまり、うちへ帰るなり洗濯をした。

 といって、本作がテルグ映画史上に記憶されるべき逸品というわけではない。こりゃ、どこかで見たぞ、という既視感が一杯の設定・プロットなのだが、それでも面白いと思った。
 監督のサントーシュ・シュリーニヴァースという人は新人らしいが、こいつがかなり上手い。本作はアクション・コメディーになるが、緊張と緩和の同居加減が良く、細かいネタの配し方もよく考えられている。例えば、バヴァーニとその手下がチェスをしているときに、スィーヌとシュルティがいちゃついているとの報告が入る。「ぬぬぬ」とバヴァーニがいきり立ち、俄かに場面が緊張した瞬間に、手下がチェスの駒をちゃっかり入れ替える、、、こんなネタがあちこちにあり、退屈知らずの映画になっていた。
 このサントーシュ・シュリーニヴァースという人は、間違いなく有力なテルグ娯楽映画の作り手になる、、、と早々と予言しておく。

 映画の内容としては、【Gudumba Shankar】(04)や本作と同じくラームのヒット作【Ready】(08)などを思い浮かべればいい。こういう、ヒーローが腕力だけでなく知恵をも絞って、大掛かりな芝居を打ってアンタゴニストを打ち負かすというプロットは、本当にテルグ映画に多いし、テルグ人好みのようだ。
 しかもコメディー。2009年のトリウッドは【Arundhati】、【Magadheera】と、非コメディー系映画のヒットが印象的だったが、去年と今年は笑いの要素の勝った作品が好成績を上げている。この辺がトリウッド復活の鍵かな、とも思う。

 面白いのは、先日観たタミル映画の【Rowthiram】もこの【Kandireega】も、どちらも伝統的な娯楽映画のフォーミュラに則りながら、前者は本質的な部分でひっくり返して失敗したが、後者はあくまでも直球勝負でまんまと成功を収めていることだ。この両者のコントラストは興味深い。
 当然、本作はハッピーエンド。しかし、本作の「ハッピーエンド」は並みのハッピーエンドではない。ネタバレになるのでここには書かないが、私は本作のエンディング・カットを見たとき、あまりのハッピーさに椅子からずり落ちた。

◆ 演技者たち
 本作でラームくんは「Energetic Star」の冠タイトルを戴いていたが、今までもそうだったのだろうか。とにかく、肩書きに恥じない、ひたすら元気に・脳天気に突っ走るヒーロー像だった。またラームくんといえば、アクの強いテルグ男優陣にあっては一際存在感が薄いのに、こめかみから下の髭・胸毛は濃いという、アンバランスな感覚があるのだが、きっと彼のエナジーは体毛にも滲み出ているのだろう。華奢な体でちょこまか動く様は、映画というよりコミックのキャラクターに見えた。
 (写真下:「朝に礼拝、夕べに感謝、御宗旨を守るのはそれはそれは尊いことです〜」)

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 ソーヌ・スードが面白い。前半の凶悪なヤクザ像は何だったんだ?と言いたくなるほど、後半ではコミカルなキャラが立っており、違和感を感じないでもなかったが、まぁ、恋愛がらみで小躍りするソーヌ・スードも珍しいので、一見の価値ありだ。

 ヒロイン、シュルティ役のハンシカさんは、、、やっぱりこの人は食えんわ。
 女優の場合、年齢にさばを読んでいることも珍しくないのだが、ハンシカさんの場合、2003年公開のヒンディー映画【Koi... Mil Gaya】ではハッキリと子役だったので、間違いなくまだ20歳そこそこのはずだ。それなのに、そこはかとなく漂うオバサマの雰囲気は何だ!?
 結局ボリウッドで成功せず、再び南インドに下りて来たハンシカさんだが、今年公開されたタミル映画【Engeyum Kaadhal】がヒットし、そしてこの【Kandireega】と、なんだか南インドに定着してしまいそうな気配。やばい展開だ。

 しかし、ハンシカよりセカンド・ヒロイン、サンディヤ役のアクシャさんのほうが印象的だろう。とんちんかんな田舎娘という設定が生きていた。私にはまったく分からないが、彼女の話すテランガーナ訛りのテルグ語も笑いを誘うらしい。
 正直なところ、映画の後半では、ラームとハンシカのペアより、ソーヌ・スードとアクシャのペアのほうが映画を作っている感じだった。
 (写真下:皮下脂肪を貯めて、すっかり南印仕様のハンシカさん(左)と、意外な働きを見せたアクシャさん。)

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 脇役陣では、ジャヤプラカーシュ・レッディが相変わらず豪快な親方像だった。今回はラーヤラシーマではなく、テランガーナのファクショニスト(?)だった。
 冒頭で主人公をコケにする嫌味な従妹はスワティちゃん。

◆ 音楽・撮影・その他
 音楽はS・S・タマンの担当。私はこの人の音楽が好きだと表明してきたが、本作でも映画のノリに合った快調な曲を並べている。
 【Kick】(09)、【Brindaavanam】(10)、【Mirapakaay】(11)などの成功を見ても分かるとおり、タマンはトリウッドにとって欠かせない音楽監督になりつつあるようだ。音的にはあまり品が良いとも言えないが、マニ・シャルマよりもっとストレートなリズム感はより今日的かもしれない。

 物語の舞台は、アナカパッリ(Anakappali)、ハイダラーバード、ワランガルなのだが、このアナカパッリがどこにあるのか分からない。ただ、スィーヌ役のラームはゴーダーヴァリ地方の方言を使っていたとの記述もあるので、その辺りの町(村)なのだろう。

◆ 結語
 基本的には、休日にぶらりと出かけた際に現地の映画館で楽しむような映画なので、わざわざDVDを取り寄せてまで見るものかなぁ、とは思う。ただ、痛快なテルグ・アクション・コメディーが好きな方なら、観て後悔はしないと思う。

・満足度 : 3.5 / 5
 

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
随分とご無沙汰しております。

今でもこちらではこの映画が上映中です。
『Mr.Perfect』とか『100%Love』とか結構ロングランでしたが、私個人としては『KANDIREEGA』のような作品が長いこと上映されているとなんだか嬉しいです。

>きっと彼のエナジーは体毛にも滲み出ているのだろう。

同感です。この役者、ラヴィ・テージャ風の路線で上を目指せるんじゃないか、と実は密かに思っています。がたいがいいわけでもなく背が高いわけでもなく、その上ハンサムでもない、それでもオーラがあるという点で。

ところで、ブログを新しいサイトに移行しました。
大体形になりましたのでお知らせいたします。
http://brunnen2.jimdo.com
今後ともよろしくお願いいたします。

2011/09/23 17:12
ご無沙汰です。
ブログのお引越し、おめでとう(?)ございます。
またうるさくない程度にお邪魔しますね。

『KANDIREEGA』はバンガロールでもまだ上映中ですよ。
私ゃ、まだあの楽天的なエンディング・シーンが忘れられません。
 
カーヴェリ
2011/09/24 10:26

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