カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Velayudham】 (Tamil)

<<   作成日時 : 2011/11/02 00:18   >>

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 ディーパーワリ公開の話題作、まずはM・ラージャ監督、ヴィジャイ主演の【Velayudham】。
 M・ラージャ監督といえば、コリウッドのヒットメーカーの1人であるが、過去6作がすべてリメイク作品という、他人のふんどしでちゃっかり点数を稼いでいるお方である。それで私は彼のことを「コピー屋ラージャ」と呼んでいる。本作こそはオリジナルか、と思われたが、やっぱりナグさん主演のテルグ映画【Azad】(00)のリメイクであるようだ(本人は「翻案」だと表明しているが)。ちなみに、彼の作品は本ブログでは【Santhosh Subramaniyam】(08)を紹介した。
 しかし、本作はかなり気合いを入れた模様で、製作費は4億5千万ルピー。これは人気スター、ヴィジャイの作品でも過去最高額のようである。
 題名の「Velayudham」は、ムルガン神の持っている槍のような武器のことらしい。(写真上参照。ヴィジャイの左に見えるのがムルガン神とその槍。)

【Velayudham】 (2011 : Tamil)
物語・脚本・監督 : M. Raja
出演 : Vijay, Genelia, Hansika Motwani, Saranya Mohan, Vineet Kumar, Abhimanyu Singh, Santhanam, Sayaji Shinde, Vincent Asokan, Rajendran, Ajay, Raaghav, Parotta Suri, M.S. Bhaskar, Pandirajan, Manivannan, Ilavarasu, Pandi, Anjali Devi
音楽 : Vijay Antony
アクション : Tom Delmar
撮影 : Priyan
編集 : V.T. Vijayan
制作 : V. Ravichandran

《あらすじ》
 イスラーム教のテロリスト・グループがタミル・ナードゥ州の内務大臣(Vineet Kumar)を誘拐する。大臣は命乞いのため、彼らがチェンナイでテロ行為をするのをサポートする約束をする。
 ほどなくチェンナイで爆弾テロが起きる。テレビ・ジャーナリストのバーラティ(Genelia)はこうした凶悪犯罪を断固摘発する構えで、同僚とテロリストのアジトに潜入し、恐るべき犯罪の証拠をつかむ。しかし、彼女らの動きはテロリストに察知され、逃走する過程で同僚は殺害され、バーラティも大きな傷を負う。だが、そのテロ・グループも、事故で車が炎上し、全員焼死する。バーラティはとっさの機転で、「ヴェーラーユダム(ムルガン神)が現れ、テロリストに天罰を加える」という手紙を現場に残す。それがニュースで報道され、チェンナイ中で話題となる。
 ヴェール(ヴェーラーユダム:Vijay)はパウヌール村でミルク売りをしている青年。彼は妹のカーヴェリ(Saranya Mohan)を誰よりも愛していたが、そんな彼に従妹のヴァイデヒ(Hansika)は首ったけだった。
 カーヴェリの縁談が決まったため、ヴェールは結婚資金を調達するために、一族郎党と共にチェンナイに出て来る。ところが、チェンナイ・エグモア駅で、ヴェールはまったくの偶然からテロリストが仕掛けた爆弾テロを防ぐことになる。その時、彼は警官に「ヴェーラーユダムだ」と名乗ったため、「救世主ヴェーラーユダムは実在した!」とニュースで報道される。それは怪我で入院中のバーラティの耳にも届く。
 退院したバーラティはムルガン神の寺院でヴェールと出会う。しかし、ヴェールのことを粗野な田舎者だと嫌う。
 その後、再びヴェールの取った偶然の行為がテロリストのブラックマネーを扱うアジトを殲滅させる結果となる。この時も彼は近くにいた男に「ヴェーラーユダムだ」と名乗ったため、マスコミはいよいよ騒ぐ。そして三度目、同じくヴェールの偶然の行為がテロリストの大規模なアジトを暴くきっかけとなる。その時はバーラティもその現場を目撃し、ヴェールこそが「ヴェーラーユダム」だと確信する。
 バーラティは再びヴェールに会い、市民はテロリストと戦う救世主ヴェーラーユダムを待望しており、その役を果たせるのはあなたしかいない、と説得する。だが、村のミルク売りでしかないヴェールはそれを断る。
 ところが、ヴェールが金を引き出そうとしていた金融会社が営業を停止してしまう。実は、先にヴェーラーユダムによってブラックマネーを失ったテロ・グループが、内務大臣に損失補填を強いたため、大臣がその金融会社に圧力を掛け、現金をすっかりテロ・グループに回したというわけであった。この措置にショックを受けた顧客の1人が飛び降り自殺を図り、パニックに陥った市民が「ヴェーラーユダム」の到来を叫ぶ。その様子を見たヴェールは、市民のために立ち上がる決意をする、、、。

   *    *    *    *

 いや、感服しました! もう、面白いの何のって、、、。
 上で「コピー屋ラージャ」とバカにした書き方をしたが、伊達に名作のコピーはしていない、監督としての腕前はかなりあるようだ。

 テルグ映画の【Azad】は観ていないので、どこまでオリジナルに負っているかは分からない。ウィキペディアのあらすじを読む限り、大枠はなぞっているようだが、変更している部分も多い。おそらく、コピー映画のレベルではなく、ラージャ監督自身がかなり脚本を練り直し、オリジナリティーを付加しているようだ。少なくとも、テルグ映画らしいところはなく、まったくタミル映画のテイストになっている。

 とにかくがんがん来る感じが良い。この展開の速さはタミル映画では異例だが、中に盛られたネタと味わいはタミル映画そのもの。ラージャ監督はかなり真剣に「タミル映画の面白さ」を研究し、考えて考えて、ネタをぎゅうぎゅう詰め込んだんじゃないだろうか。ストーリー的には古くさく、アホくさく、はっきりと幼稚な感じがするが、理屈抜きに面白い大衆娯楽映画を撮ろうという監督の気合いはひしひしと感じられた。
 シャンカル風の映画、といえばイメージしやすいと思うが、シャンカルほど音楽シーンなどでハチャメチャにやっていないので、鑑賞後のぶっ飛び感は落ちる。しかし、オーソドックスなタミル型マサラ映画としては久々のホームランじゃないだろうか。

 出だしのイスラーム・テロ組織の誘拐シーンは紋切り型でイマイチだが、直後のバーラティ(Genelia)が架空のヒーロー「ヴェーラーユダム」を思い付くまでのシーンはスピーディーで良いし、続くヴェールと村人らの連鎖的コメディー・シーンは楽しすぎる。中盤でやや中弛みするが、後半の大規模なアクション・シーン(特に列車のシーンとクライマックス)は見応えがある。

 ただ、良いこと尽くしというわけでもない。
 何といっても、ネタを盛り込みすぎて、長すぎるというのがある。
 田舎のミルク売りの主人公が、ヒーローを自覚した後、一気にスーパー・ヒーローとして強くなりすぎるのも不自然だった。(あそこまで強うならんでもなぁ、、、。)
 物語の「陽」の部分、つまり、ヴェールと妹のカーヴェリ(Saranya Mohan)、従妹のヴァイデヒ(Hansika)、その他村人との絡みや、ヴェールとバーラティのやり取りなどは完璧に近かったのに、「陰」の部分、すなわち、悪役のパートがリアリティーがなく、まとまりも悪かったのが残念だ。イスラーム・テロリストはステレオタイプすぎる描かれ方だし、テロリストもマフィアも悪徳政治家も一緒くたな扱いでは、バーラティやヴェールが何と戦おうとしているのか分からなくなる。本作が高レベルの満足度に達しないのは、この悪役パートの弱さのせいだと思う。

◆ 演技者たち
 私がヴィジャイの映画を初めて観たのは【Azhagiya Tamilmagan】(07)で、その後の作品もすべて映画館で観ているが、俳優としてのヴィジャイは確実に進化している。本作でも、アクション、ダンス、コメディー、センチメントと、ほとんどの領域で千両役者ぶりを発揮している。ここ3年ほど正統ヒーロー物で振るわず、【Kaavalan】(11)ではイメージを変えようとして、かえって情けない姿を見せてしまったヴィジャイだが、なんてことはない、最近の作品は映画の質自体が悪かったということが分かった。
 それにしても、救世主ヴェーラーユダムの下のイメージはどこから来ているのかと思ったら、、、

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 これでした、「アサシン クリード」。(さすがはコピー屋ラージャ。)

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 ヒロインは2人で、ツイン・ヒロインとなっている。1人はジェネリアで、もう1人は「なんや、お前か〜」のハンシカさん。
 ジェニーは気丈なテレビ・ジャーナリストの役で、カッコよく、可愛らしく撮ってもらっている。先日の【Force】では心配が募ったが、本作のような役柄だとストレートに彼女の良さが出る。
 それにしても、近ごろのジェニーは時おりハッとする大人の美しさを見せることがあり、もしや近々大化けするかもね。

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 ハンシカさんはそれなりに効いている。田舎娘で、コミカルな役回りが良かったのだろう。相変わらず色気もへったくれもない外観なのに、けっこうセクシーショットが多かったが、タミル・ボーイズはあれで萌えるのだろうか???

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 ついでに、ヴェールの妹ちゃん役はサランニャ・モーハン。これも効いていたから良かったものの、彼女はこういう田舎娘の役しか回って来んのか???

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 悪役は、内務大臣をやったのはヴィニート・クマールという北インドの俳優。
 イスラーム教徒のテロリスト役はアビマンニュ・シン。この人はラーム・ゴーパール・ヴァルマ監督の【Rakta Charitra】(10)でかなりインパクトの強い悪役を演じていたので、私は本作の彼も楽しみにしていたのだが、描かれ方が悪かった。

◆ 音楽・撮影・その他
 音楽はヴィジャイ・アントニー。微妙なところだが、悪くはなかった。
 音楽シーンの出来は、ヴィジャイ作品にしては平均的だろう。

 アクションはトム・デルマーというハリウッド映画界のベテランが担当しているらしい。

 この種の映画の常套として、過去の映画へのオマージュやパロディーが散りばめられていたと思うが、珍しいところでは、ヴェールの“Super! I like it!”というセリフは、おそらくウペンドラ監督・主演の【Super】(10)を意識したもの。

◆ 結語
 【Velayudham】はM・ラージャ監督とヴィジャイが放った気合いの娯楽タミル映画。締まらない部分もあるが、面白さのほうが大きく勝っている。タミル映画ファンに強くお勧めしたい。

・満足度 : 3.5 / 5
 

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