カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Jaanu】 (Kannada)

<<   作成日時 : 2012/06/08 21:31   >>

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 【Mungaru Male】(06)のストーリー・ライターとして世に出たプリータム・グッビは、その後監督として【Haage Summane】(08)、【Maleyali Jotheyali】(09)、【Johnny Mera Naam... Preethi Mera Kaam】(11)と3作発表し、後の2作はヒットを記録している(ただ、私はヒットしなかった【Haage Summane】が一番好きだ)。そんな彼の4作目ということで、ひと通りの注目を集めていたのがこの【Jaanu】。
 主演はヤシュ。ヒロインは去年デビュー2作(【Saarathee】【Paramaathma】)が立て続けに大ヒットし、「ラッキー・ガール」と呼ばれるようになったディーパ・サンニディ。このお二方にも注目したい。
 ところで、今の今まで知らなかったが、プリータム・グッビはカンナダ演劇界に多大な功績を残したと言われるグッビ劇団の主催者、グッビ・ヴィーランナの孫だということだった。プリータムが今後カンナダ映画界に偉大な足跡を残す大監督になるとは考えにくいが、一応、血は争えない、ということにしておこう。(参考に、故ラージクマールもグッビ劇団に在籍していた。)
 題名の「Jaanu」は愛しい人を呼ぶときに使う言い方だが、ここではヒロイン(ルクミニ)のペットネームのように使われていた。

【Jaanu】 (2012 : Kannada)
物語・脚本・監督 : Preetham Gubbi
出演 : Yash, Deepa Sannidhi, Shobharaj, Rangayana Raghu, Sadhu Kokila, Sangeetha, Veena Bhat, Madhu, Layendra, M.S. Umesh
音楽 : V. Harikrishna
撮影 : S. Krishna
編集 : Deepu. S. Kumar
制作 : Jayanna, Bhogendra

《あらすじ》
 シッドゥ(Yash)は友人のラーマイヤ(Rangayana Raghu)と共にマイソールでレストランを経営していた。そのレストランにある時ルクミニ(Deepa Sannidhi)という若い女性がやって来、みるみるうちに800ルピー分の料理を平らげる。しかし彼女は1ルピーも持ち合わせていなかった。あまつさえ、泊まる宿とてなく、シッドゥに部屋を貸してくれと頼む始末。ルクミニはベラガーウィ(ベルガウム)の住人だが、マイソールのダサラ祭見たさに両親に内緒で家を出、この地までやって来たものの、お金をすっかり使い果たしてしまった、という訳であった。翌朝、ラーマイヤの提案で、飲食代の800ルピーを取り戻すべく、シッドゥはルクミニをベラガーウィまで送り届けることになる。
 マイソールからベラガーウィまでは珍道中となってしまったが、シッドゥとルクミニはなんとか目的地に到着する。しかし、そこでシッドゥはラウディーの一団に襲われる。実はルクミニの父は当地の豪族ルドレー・ガウダ(Shobharaj)で、彼は娘がシッドゥと駆け落ちしたものと思い込み、手の者に襲撃を命じたのであった。
 だが、誤解が晴れ、シッドゥは逆にルドレー・ガウダの館で手厚いもてなしを受ける。また、率直な性格が幸いし、シッドゥはルドレー・ガウダとその家人たちに気に入られるようになる。そうこうしているうちにマイソールからラーマイヤも合流する。
 実は、珍道中の間に、シッドゥはルクミニに惹かれるようになっていたが、ルクミニも同じであった。だが、ルドレー・ガウダはすでにルクミニの縁談を決めていた。それを知ったルクミニはシッドゥに単刀直入に愛を打ち明ける。また彼女は、自分がルドレー・ガウダの実の娘ではなく、赤ん坊のときに寺院に捨てられていたのをルドレー・ガウダに拾われ、我が子のように育てられた、ということも話す。
 ここにもう一人、ルクミニの従兄も彼女に惚れており、結婚を望んでいた。その男はラウディーを使い、ルクミニのフィアンセを襲撃させようとするが、シッドゥがそれを阻止する。その晩、ラーマイヤはシッドゥにルクミニと駆け落ちするよう促す。シッドゥはルクミニをジープに乗せ、出発するが、彼女が眠り込んだ隙に、館まで引き返す。
 翌日はルクミニの婚約式であったが、シッドゥとラーマイヤはルドレー・ガウダに暇乞いをし、館を去る。その直後にルドレー・ガウダの使用人がジープにあったルクミニのカバンを発見する。その中身を見たルドレー・ガウダは、ルクミニがシッドゥと駆け落ちしようとしていたことを悟り、娘を問い詰める、、、。

   *    *    *    *

 プリータム・グッビ監督のこれまでの作品は(【Mungaru Male】も含めて)すべて小ぢんまりとしている。インド映画といえば、長くてこってりとしていて、すんなりとは飲み下しにくい表現の詰まったもの、というイメージが強いが、彼の作品の場合は腹六部目の軽さで、「ミールス」というより「ティフィン」に喩えたい。この【Jaanu】も上映時間は2時間12分だし、アクション映画の構えを取っていながら、通常のそれとは違って、実に可愛ゆいものだった。
 これを物足りないと感じるインド人は多いだろうが、しかし、彼の作品にもそれなりの良さがあるもので、明るくて、馬鹿みたいに「愛」を信じる無邪気さがあり、観ていて嫌な気持ちが起きない。プリターム・グッビって、きっと善い人なんだろうなぁ。
 おそらく、その辺が彼の作品がカンナダ人に愛された理由だと思う。しかし。本作はストーリー・脚本が陳腐で、盛り上がりに欠けるのは事実で、たぶん、この弱みがダイレクトに興行成績に反映されると思う。

 ストーリー上の手詰まり感としては、結局【Mungaru Male】と同じじゃん、というのがある。プリータム・グッビが常に主題としてきたのは「愛」、しかもそれは若い男女の恋愛感情(それは一過性のものと見なされる)よりも、もっと大きく普遍的な愛、惜しみなく与えても枯渇することのない愛(それは神の愛や親の子に対する愛に代表される)だったと思われる(そしてその愛が社会に安定をもたらすと考えられているようだ)。【Mungaru Male】のプリータム(主人公の名前)は、ナンディニ(ヒロイン)を思う両親の愛に屈し、悲しいけれどぎりぎり受け入れ可能な譲歩を行ったが、本作のシッドゥ(Yash)も自分のルクミニ(Deepa Sannidhi)に対する愛よりも娘を思うルドレー・ガウダ(Shobharaj)の愛のほうが強いことを悟り、譲歩しようとする。そして、その事実を受け入れられない悪漢がヒロインのフィアンセに危害を加えようとするのを、ヒーローが救う、というプロットも両作で共通だ。
 そうやって見てくると、本作は形は違えど結局は【Mungaru Male】の繰り返しであり、そうなると、心理的表現の密度が粗い分だけ、本作は【Mungaru Male】より分が悪いかな、と思われる。

 しかし、本作が北カルナータカを舞台としているのは興味深かった。
 カンナダ映画では、舞台となるのはほとんどがバンガロール、マイソール、マンガロールなどのカルナータカ州南部地方だという指摘もあり、北へ上ってもせいぜいフブリ止まり、本作のようにベラガーウィ(ベルガウム)を舞台とする作品は珍しい。【Suryakaanti】(10)という作品もベラガーウィが舞台だったが、両作共に同じような豊かな髭を蓄えた男たちが登場し(テルグ映画のラーヤラシーマ物のよう)、独特のレスリングの場面もあった。着ている衣服や家屋の意匠も同じようなもので、きっとあれが北カルナータカの文化・風俗なのだろう。しかし、Wikipediaの記述によると、本作の主な舞台はマイソールとベラガーウィのはずなのに、ロケ地としてSakleshpur、Gulbarga、Bidar、Bengaluruの名前しか挙がっていないのは、これ如何に?

◆ 演技者たち
 【Moggina Manasu】(08)で注目されたものの、線の細さからなかなかトップスターに躍り出ることの出来なかったヤシュだが、タミル映画【Kalavaani】(10)のリメイク【Kirataka】(11)がヒットしたおかげで、かなりファン層を広げたようだ。本作でもしっかりと演じていたが、なにせ作品自体にパワーが乏しいので、観客に強い印象を残すこともないだろう。次回作、ヨーガラージ・バット監督の【Drama】に期待しよう。
 (写真下:鋭角的なマスクが特徴のヤシュくん。ディーパ・サンニディと。)

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 ルクミニを演じたディーパー・サンニディは不思議な女優だ。美人というほどのものではないのだが、なんだか可愛いし、それなりに色気がある。口が大きく、この口とはキスしたくないなぁ、と思いもするが、向こうもしたくはないだろうから、問題はない。本作でも、彼女目当てで映画館に足を運んだ人も多いと思われるが、期待に応えるぐらいの魅力は振りまいていた。
 ちなみに、ルクミニは800ルピー分の無銭飲食をしたという設定だったが、インドの大衆レストランで800ルピー分食うというのは、立派な過食症だ。実際、演じたディーパ・サンニディはけっこう皮下脂肪が付いており、5年後にはナミターになるのでは、と思われるほどだ。太るのはけっこうだが、演技とダンスの技量のほうも厚みを増してほしい。

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 ところで、ルクミニはカンナダ語の北カルナータカ方言を話し、片やシッドゥはマイソール弁を話すという設定になっており、二人の掛け合いのちぐはぐさが本作の面白さの一つとなっているらしい。(それは私には分からない次元の話だが。)

 お館様のルドレー・ガウダを演じたのは、一応、ショバラージ。悪くはなかったが、他州映画産業の「太っ腹、髭オヤジ」をさんざ見てきた目には、いかにも貫禄不足に見えた。やはりこの人は悪徳警官役が似合う。

◆ 音楽・撮影・その他
 音楽はハリクリシュナの担当。2曲ほど良かった。特に、ルクミニとシッドゥがバングラッシーを飲んで騒ぐ曲は面白い。

 撮影はクリシュナの担当だが、本作では【Mungaru Male】や【Maleyali Jotheyali】で見せたようなマジックはない。
 アクションもイマイチだった。

 コメディアンのサードゥ・コーキラが原付に乗って涼しい顔して登場し、観客の笑いを誘っていたが、彼が乗っていたのはTVS社製のモペッド(下)。結局はサードゥ・コーキラとヒーローとヒロインが3人乗りするという展開になるのだが、この70ccのミニバイクに3人で山道を疾走するのは無理というものだ。

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◆ 結語
 ハットトリックを狙ったプリータム・グッビの第4作は、残念ながら彼の監督としての器が見えてしまうような形になってしまった。それなりに楽しめるが、新鮮味はないし、大きな感動を味わえないのが辛いところだ。

・満足度 : 2.0 / 5
 

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