カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Naagavalli】 (Kannada)

<<   作成日時 : 2012/07/10 21:22   >>

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 この日は【Dandupalya】というカンナダ映画を観ようと映画館に行ったが、満席の立て札。では、第2候補のカンナダ映画【Addhuri】にしようと別の劇場へ行ったら、こちらも満員御礼。「おお、カンナダ映画界も繁盛してるじゃん」と思いつつ、仕方ないので、この【Naagavalli】を観て来た。
 ホラー映画だという前情報だった。インドではホラー映画はそう頻繁に現れないが(もっとも、頻繁に観たいものでもないが)、別けてもカンナダ映画界では作られることが少なく、ここ数年では【Mohini 9886788888】(06)、【Hushaar】(09)、【Yaaradu】(09)、無理して入れて【Aaptha Rakshaka】(10)、【Aarakshaka】(12)ぐらいか? それで、たまにはホラーもいいかな、ぐらいのつもりで観た。
 監督のクマールはウペンドラの助監督を務めていた人らしい。

【Naagavalli】 (2012 : Kannada)
物語・脚本・監督 : Kumar
出演 : Madhu Shalini, Venu, Karthik, Daksha Mahendu, Thriller Manju, Sanketh Kashi, Manasi, Bank Janardhan, Biraadar
音楽 : Sadhu Kokila, Layendra
撮影 : Parthibhan
編集 : T. Shashi Kumar
制作 : Keshava, Narasimha

《あらすじ》
 警官のアーディティヤ(Venu)は妻のラジー(Madhu Shalini)とその友達のナンディニ(Manasi)を連れて、別荘の‘カルパナー・エステート’へ保養に行く。ここにアーディティヤの弟カールティク(Karthik)も合流する。カールティクとナンディニはすぐに親しくなる。
 ラジーはひょんなことからこの別荘の敷地内に「カルパナー」の名が刻まれた墓を見つける。また、この別荘には誰も使用していない離れ家があったが、ラジーはそれに興味を示し、庭師(Sanketh Kashi)から受け取った鍵で晩にこっそり忍び込む。ラジーはそこで往年のカンナダ女優で自殺したカルパナーの写真をたくさん見出す。そのうちの1枚に、カルパナーの顔から血が流れ出るものを発見し、恐怖で逃げ出す。しかし、アーディティヤやカールティクらと再び確認した結果、それは赤いペンキだということが分かる。
 だが、この時からラジーの身辺で怪現象が起きる。彼女はカルパナーの囁き声を聞いたり、墓が赤く燃えているのを見たりする。
 ある夜中、カールティクが女の声に導かれ、家を出る。不審に思ったラジーが後を付けると、カルパナーの墓の上に女の霊に取り憑かれたカールティクがいた。カールティク(霊)は怨念の言葉を吐きながらラジーを襲おうとするが、庭師がやって来て、二人を救う。
 ラジーは友人に僧侶を紹介してもらい、厄除けのプージャをしてもらう。しかし、その過程で庭師が死亡する。その後、女の霊がナンディニに憑依し、そのまま彼女も不可解な死を遂げる。
 これら一連の出来事に関して、アーディティヤが自分の犯した過ちについてラジーに告白する。
 ・・・
 アーディティヤはある晩、酩酊状態のナーガワッリ(Daksha Mahendu)を保護し、この別荘に連れて来る。そして、二人はそのままベッドを共にしてしまう。身よりもなく、不幸な日々を送っていたナーガワッリは、親切なアーディティヤに心底惚れてしまう。しかし、妻ラジーのいるアーディティヤは彼女の気持ちに応えられない。絶望したナーガワッリが焼身自殺を図ったため、アーディティヤと庭師はその焼死体をカルパナーの墓の中に隠した、というわけであった。
 ・・・
 ラジーとカールティクはもう一度僧侶に相談し、墓の中にあるナーガワッリの遺骨を焼くように、という指示を受ける。アーディティヤが交通事故で入院してしまったため、二人はアーディティヤの友人のマンジュ(Thriller Manju)と一緒にカルパナーの墓石をこじ開け、中からナーガワッリの遺骨を外に出す。だが、その瞬間に女の霊がマンジュに憑依し、ラジーに襲いかかる、、、。

   *    *    *    *

 カメラが怨霊の目線で疾駆しつつヒロインに接近するカメラワークとか、うるさすぎる効果音とか、ストーリーとは無関係な怖がらせネタの連発とか、予想されたとおり、インドのB級ホラー映画らしい作品だった。お世辞にも上手い出来とは言えないが、2時間強の間、緊張感は適当に持続したので、暇つぶしの娯楽としてはある程度の点数はクリアしている。
 怖さ的にはタミル映画の【Kanchana】(11)ぐらいだが、【Kanchana】ほど賑やかなコメディーやモラル観はない。

 南インドで幽霊(特に女の)といえば、マラヤーラム映画【Manichitrathazhu】(93)、及びそのカンナダ版リメイクの【Apthamitra】(04)、さらにその続編である【Aaptha Rakshaka】でもお馴染みの「ナーガワッリ」が有名だが、本作もそれを意識して、ちょっと引っ掛けたところがあった。ただ、【Manichitrathazhu】の新たなバリエーションというわけではなく、内容面でもクオリティー面でも大きく違っている。(ちなみに、【Aaptha Rakshaka】のテルグ版リメイクのタイトルも【Nagavalli】だが、それと本作は特に関係がない。)

 作品の完成度はさて置き、個人的に興味深かったのは、往年のカンナダ女優、カルパナーがモチーフに使われていたことだ。
 カルパナーは1960年代から70年代にかけて一世を風靡したスター女優だが、巨匠プッタンナ・カナガール監督とのコンビでいくつか傑作があり、演技面での評価も高い。私はラージクマールとの共演作を少し観た程度なので詳しくは知らないが、現地人の話では、あらゆる面で女の感情を表現できた文字通りの「女」優だったらしい。概ね男性中心のインド映画にあって(特にあの時代に)、ヒロイン中心の映画を成立させることができた稀な女優でもある。その感情の鋭敏さは私生活でも反映されていたようで、愛憎のもつれから1979年に自殺し(享年36歳)、悲劇の女優としても語り継がれている。もちろん、現在でも人気が高く、本作でもカルパナーの映像が引用される場面があり、そこでは大歓声が起きていた。

 本作は、愛の挫折から焼身自殺したナーガワッリと女優カルパナーのイメージを重ね合わせて、女の執念の強さを描こうとしたものと思われるが、この解釈は間違っているかもしれない。実は本作は、ナーガワッリの遺骨が焼かれて一件落着したはずなのに、なおカルパナーの墓が光を発する場面で物語が終わり、「これは終わりではない、始まりなのだ」という字幕が出る。なんだかパート2を示唆した終わり方だが、もしかすると、謎の女の霊はナーガワッリだと思わせておいて、実は女優カルパナーだったのだ、という展開を続編で予定しているのかもしれない。(参考に、カルパナーを幽霊女優だと言いたいわけではないが、【Kanchana】のカンナダ版リメイク(現在製作中)は【Kalpana】という題名になっている。)

◆ 演技者たち
 スター俳優のまったくいない映画なので、この欄に書くことも少ないのだが、最も重要な登場人物ラジーを演じたのはマドゥ・シャーリニ。どこかで見た顔と名前だと思っていたら、バーラー監督のタミル映画【Avan - Ivan】(11)に出ていた女優だった。けっこう可愛い人なのだが、最近のトレンドから外れた容貌なので、トップに出ることはないだろう。本作ではかっちり仕事をしていた。
 (写真下:マドゥ・シャーリニさん。もちろん、向かって左の方です。)

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 アクション監督のスリラー・マンジュが本人役で出演していた。クライマックスでは長丁場のアクション・シーンをこなし、すっかり主役になっていた。

◆ 音楽・撮影・その他
 一応、音楽シーンも挿入されていたが、酷い出来で、これならなかったほうがマシだった。

◆ 結語
 2週間で打ち切りと思われたが、3週間目に突入ということで、意外に客を集めているのかも。日本人鑑賞者にお勧めする理由はないが、カルパナーのこともあって、カンナダ映画ファンはちょっとうれしいかもしれない。

・満足度 : 2.0 / 5
 

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【Kalpana】 (Kannada)
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