カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Julayi】 (Telugu)

<<   作成日時 : 2012/08/18 00:45   >>

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 トリヴィクラム監督、アッル・アルジュン主演のテルグ映画。
 前作【Khaleja】(10)は迷いがあるように見え、上手くなかったトリヴィクラム監督だが、本作はどうか!?

【Julayi】 (2012 : Telugu)
物語・脚本・監督 : Trivikram Srinivas
出演 : Allu Arjun, Ileana, Sonu Sood, Rajendra Prasad, Tanikella Bharani, Rao Ramesh, Kota Srinivasa Rao, Brahmaji, Brahmanandam, M.S. Narayana, Dharmavarapu Subramanyam, Sheetal Menon, Ravi Prakash, Shafi, Thulasi Shivamani, Pragathi, Hema, Srimukhi, Kalpika, Posani Krishna Murali, Raghu Babu, Ali, Vennela Kishore, Udaya Bhanu
音楽 : Devi Sri Prasad
撮影 : Chota K. Naidu, Shyam K. Naidu
編集 : Praveen Pudi
制作 : S. Radha Krishna, D.V.V. Danayya

《あらすじ》
 ヴァイザーグに暮らすラヴィ(Allu Arjun)は非常に頭の切れる若者で、堅気の労働を嫌い、一攫千金を思い描いていた。逆に、中産階級のラヴィの父(Tanikella Bharani)は勤勉こそが美徳だと考えており、この二人はしょっちゅう対立していた。
 ある晩、ラヴィはクリケット賭博で稼ぐため、ノミ屋へ行こうとする。その途上で彼は通りがかりのバンにのせてもらうが、それはビットゥ(Sonu Sood)をリーダーとする銀行強盗団の車だった。鋭いラヴィは一瞬にしてこの連中が銀行強盗に向かうところだと見抜く。ラヴィは車を降り、ノミ屋に入るが、折悪しく警察の手入れが入り、彼も逮捕されそうになる。そこでラヴィは警官のラージャ・マニキャム(Rao Ramesh)に銀行強盗計画の情報を提供し、逮捕を逃れようとする。ラヴィとラージャ・マニキャムが現場へ駆け付けると、果たしてビットゥらは150億ルピーもの大金を盗み終え、逃走するところだった。しかし、ラヴィの働きでビットゥは逮捕され、ビットゥの弟ラーラ(Shafi)も殺される。
 ところが、一味の女デーヴァヤーニ(Sheetal Menon)の働きで、ビットゥは脱走に成功する。彼はラヴィへの復讐心を燃え上がらせる。警官ラージャ・マニキャムはラヴィの身の安全を確保するため、彼をハイダラーバードへ避難させる。
 ハイダラーバードでラヴィは警官シーターラム(Rajendra Prasad)の家に滞在することになる。また、この街でマドゥ(Ileana)という女性に出会い、瞬時に恋に落ちる。
 ビットゥの一味は海外逃亡を図るため、仲間で、旅行代理店をやっているトラベル・ムールティ(Brahmaji)に偽造パスポートを準備させる。ところが、マドゥはたまたまこのムールティの会社の社員だったため、シーターラムとラヴィはマドゥを利用し、旅行代理店のコンピューターからビットゥらの逃亡計画を引き出すことに成功する。
 果たしてビットゥはトラベル・ムールティの代理店に現れ、偽造パスポートを持って逃げる。さらに、その際にマドゥも拉致する。ラヴィとシーターラムはビットゥらを追跡し、追い詰める。しかし、マドゥは取り返したものの、ビットゥらには逃げられてしまう。
 ビットゥはラヴィの家族に危害を加えようとする。それを読んだラヴィは家族をハイダラーバードへと避難させる。マドゥは、自分が利用されたことで、ラヴィに対して腹を立てていた。しかし、ラヴィが宥めすかした結果、マドゥの気持ちも収まり、二人の婚約が決まる。そんな時に、警官のラージャ・マニキャムが爆殺され、ラヴィの家族やマドゥがトラベル・ムールティの一味に誘拐される。ラヴィはなんとか一同を救い出すが、父が銃で撃たれ、病院に運び込まれる。さらに妹のラジー(Srimukhi)も誘拐される。
 ところで、ビットゥらが盗んだ150億ルピーは焼失したと思われていたが、これは悪徳政治家ワラダラージュル(Kota Srinivasa Rao)と警官ラージャ・マニキャムの仕組んだトリックで、現存していた。それを知ったビットゥはワラダラージュルを殺す。トリックで爆殺されたと見せかけたラージャ・マニキャムは生きており、ビットゥと取引きしようとするが、あえなく殺される。ビットゥはその札束の山を土産にヴァイザーグ港から海外逃亡する計画を立てる。それを察知したラヴィとシーターラムは、ビットゥらを始末し、妹ラジーを救い出し、現金を預金者の手に返す作戦を開始する、、、。

   *    *    *    *

 非常に面白い、満足度の高いアクション映画だった。アクションのアイデアは大胆で突き抜けた感じがあり、コメディーはやや小ぶりにまとめた感はあるが、十分笑える。やっぱりテルグ映画はこうでなくっちゃ。

 面白いのだから文句はないが、しかし、いわゆる「ロジック」で考えると、けっこう疑問点も多い。
 まず、トリヴィクラム監督は第一に何を言わんとしたのか、分かりにくい。単純に考えると、こつこつと働く勤勉さを嫌い、短絡的に一攫千金を狙う若者(ラヴィ)が改心するという「成長物語」になりそうだが、このラヴィが悪役(ビットゥ)と渡り合うプロットがあまりにも痛快なので、「改心」という要素が霞んでしまっている。
 かといって、ヒーローが悪役を叩き潰す勧善懲悪物でも復讐物でもない。というのも、ビットゥはラヴィに対してそんなに悪いことはしていないからである。まぁ、ラヴィの父を撃ったり、妹やマドゥを誘拐したり、というのはあるが、むしろ、先に「余計なこと」をしたのはラヴィのほうであり、ラヴィのせいでビットゥは銀行強盗に失敗し、逮捕され、弟まで殺されたわけで、それで復讐に動くのはごく当前のことだ。奇をてらった言い方をすれば、本作の「悪役」はラヴィになり、本作全体がラヴィのマッチポンプ的な一人相撲だとも言える。結局ビットゥは殺されるのだが、この展開でビットゥが殺されても、観客の心にカタルシスは起きない。トリヴィクラム監督もそれははっきり自覚していたようで、本作のクライマックスはコメディー仕立てにして、逃げている。
 となると、本作は結局「警察機構を笑う」風刺物となるのかもしれない。いかにも正義感の強そうなラージャ・マニキャムは実は腐敗警官だったし、ラヴィの保護者となるシーターラム(ラージェンドラ・プラサード演じる)は「一度も銃を撃ったことがない」という腰抜けACPで、その部下がM・S・ナーラーヤナと来れば、おおよそのイメージは湧くだろう。一般人のラヴィがさっさと事態を片付けていく手際があまりにも鮮やかなので、対比的に警察がいかにも間抜けに見えた。

 「ご都合主義」度でも本作はかなり高得点だ。
 だいたい、今まさに金庫破りに行こうかという連中が、見ず知らずの男を車に乗せるか?
 ヒーローのラヴィが非常にシャープなのは分かるが、ビットゥとの応酬においてあまりにも何でもお見通しなので、作者のトリヴィクラム監督が直接演じているかと思ったほどだ。
 ただ、こうしたご都合主義もストーリーを練る際の手抜きだとは思えず、逆に本作にはかなり頭を使った跡が見られる。結局、南インド映画のロジックというのは、普通に言うロジックとは質が異なるものであり、力点の置き所も違うということだろう。

 一つだけ気に掛かった点は、冒頭の銀行強盗の場面はどう見てもボリウッド・アクション映画の質感だった。その後、テルグ映画調に軌道修正したので安心したが、一瞬、トリヴィクラムはボリウッド映画に傾いたか、と心配した。言うまでもなく、南インド映画には長年培ってきた文法と美意識があり、わざわざボリウッドに倣うこともない。ボリウッド・スタイルがお望みなら、サルマーン・カーンのアクション映画を観に行けば済むだけの話だ。トリヴィクラム監督も紛らわしいことはやめてほしい。

◆ 演技者たち
 アッル・アルジュンは本作では得意とするアホ・キャラではなく、基本的に切れ者だった。ダンスでは目を引く振り付けもなかったが、アクション、演技では安定したパフォーマンスを見せている。
 「スタイリッシュ・スター」とは言うが、アッル・アルジュンのファッション性はドレスアップではなく、ドレスダウンで、品はなくともカッコいいという類のものだ。こういうスタイルが決まる俳優というのもインドでは他に見当たらず、ましてケーララでは500年経っても現れそうにないので、彼の地でバニーが人気を誇る理由が分からないでもない。

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 ヒロインはイリヤナ。意外なキャラクター設定で、髪はばさばさ、メガネに歯列矯正のブリッジ、服はカーテンと同じ柄という、ダサ女として登場する。けっこう面白かった。
 演技もダンスもできないと思っていたイリヤちゃんだが、タミル映画【Nanban】(12)で「化けたかな?」と。本作でのパフォーマンスもまずまずだった。
 下のスチルを見て分かるとおり、【Kick】(09)の頃はたっぷり皮下脂肪を付けていたイリヤちゃんも、本作ではかなり絞っている。それで、「もしや?」と思ったら、やっぱりボリウッド映画に出演するのであった。(皮下脂肪というのは分かりやすい指標だなぁ。)
 ところが、この「スリムなイリヤ」がことのほか不興で(例えば、こちら)、南印4州では最もスレンダー女優を好むと思われていたトリウッドのサークルでも皮下脂肪への愛着がまだ残っていることが分かり、個人的には安心した。
 (写真下:絞ったイリヤ。有り難いことに、ケツのデカさはそのまま。)

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 神をも畏れぬ犯罪者でありながら、「ピュア・ヴェジタリアン」だと自己申告していた悪役ビットゥ役のソーヌー・スードはOK。近ごろのトリウッドでは、悪役には単に「怖い」、「いかつい」だけでなく、「コメディー性」も要求されているようで、プラカーシュ・ラージなどがこの路線で成功を収めているが、本作のソーヌー・スードも、【Kandireega】(11)と並んで、笑いの取れる悪役を演じていた。彼自身の演技だけでなく、吹き替え声優も上手かったと言うべきだろう。なお、クライマックスでは【Dabangg】(10)を意識したパロディーもあり。

 ラージェンドラ・プラサードは微妙なキャラクターの警官をさすがに上手く演じていた。(舞台芝居のような厚塗りメイクはキモかったけど。)
 その他、登場人物が多いので、誰にコメントを付けるか迷うが、ここでは1人、デーヴァヤーニ役のシータル・メーナンだけ挙げておこう。銀行強盗団の女メンバーだが、聾唖という設定がアクセントとなっていた。

◆ 音楽・撮影・その他
 音楽はデーヴィ・シュリー・プラサードの担当。彼らしい面白い曲が並んでいたが、「どっかで聴いたことのあるような」という印象も強い。
 ‘Mee Intiki Mundhu’という曲では、アッル・アルジュンがNTRやANR、クリシュナ、チランジーヴィ、ウェンカテーシュ、パワン・カリヤーンの物真似をやっていたらしいが、まったく気付かなかった。

◆ 結語
 理屈より面白さの映えたテルグ・アクション。お勧めしたい。

・満足度 : 3.5 / 5
 

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