カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Vishwaroopam】 (Tamil)

<<   作成日時 : 2013/02/08 23:21   >>

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 カマルのおじさん、自作自演の超話題作。
 私的には悪役(と思しき)ラーフル・ボースに注目したい。

【Vishwaroopam】 (2013 : Tamil)
脚本・監督 : Kamal Haasan
出演 : Kamal Haasan, Pooja Kumar, Rahul Bose, Andrea Jeremiah, Shekhar Kapur, Jaideep Ahlawat, Samrat Chakrabarti, Nasser, Zarina Wahab, Miles Anderson, Greg Sammis, David Scott Diaz, James Babson, その他
音楽 : Shankar-Ehsaan-Loy
撮影 : Sanu Varghese
編集 : Mahesh Narayanan
制作 : Chandra Haasan, Kamal Haasan

題名の意味 : 世界の姿
映倫認証 : U/A
タ イ プ : オリジナル
ジャンル : スリラー
公 開 日 : 1月25日(金)
上映時間 : 2時間28分

◆ あらすじ
 ヴィシュワナート(Kamal Haasan)はニューヨーク在住のインド人で、カッタク・ダンスの教師。彼にはずっと年下の妻ニルパマー(Pooja Kumar)がいた。彼女は放射線医療の専門家で、ヴィシュワナートとの結婚はアメリカで博士号を取るための方便ぐらいに考えており、むしろオフィスの上司ディーパク(Samrat Chakrabarti)と睦まじい関係にあった。
 日頃、夫の行動に不審なものを感じていたニルパマーは、探偵を雇い、調査させる。その結果、ヴィシュワナートはヒンドゥー教徒ではなく、イスラーム教徒だということが分かる。ところが、その報告が届いた直後に、探偵は殺される。殺したのはオマル(Rahul Bose)とその腹心サリーム(Jaideep Ahlawat)が率いるアルカーイダ系テロリスト・グループで、探偵の所持していた名刺からニルパマーのことが知れ、彼女とヴィシュワナートはテロリストに誘拐・監禁される。しかし、この場はヴィシュワナートの働きで、二人は監禁場所から脱出する。
 訝るニルパマーにヴィシュワナートは説明する。実は彼はウィサーム・アハマド・カシミーリーという名のイスラーム教徒で、インドの諜報機関(Research and Analysis Wing)の部員として、対テロの任務を遂行していたのであった。
 ウィサームは10年ほど前に、特命を帯び、お尋ね者テロリストに扮して、アフガニスタンにあるアルカーイダのジハード戦士訓練キャンプに潜入し、極秘にNATO軍の誘導などを行っていた。その訓練所で指導的立場にあったのがオマルとサリームで、この二人は今やニューヨークに潜伏し、「セシウム爆弾」でニューヨークを壊滅させる計画を立てていた。ウィサーム(ヴィシュワナート)の仕事はアメリカに潜伏するアルカーイダの工作員の動きをつかみ、セシウム爆弾テロを未然に防ぐことであった。
 ヴィシュワナート(ウィサーム)がニルパマーと結婚したのも、実はこのミッションの一環だった。彼女の上司ディーパクはオマルのテロ・グループと取引があり、セシウムの含まれる放射線治療機器を彼らに供給していたからである。また、ニルパマーがヴィシュワナートのおじ(Shekhar Kapur)、ダンス教室の生徒アシュミター(Andrea Jeremiah)、及び友人ドーキンス(Miles Anderson)と認識していた人々も対テロ・チームのメンバーだということ分かる。
 ウィサームはすでにテロ・グループの活動拠点を特定していた。だが悪いことに、かねてよりウィサームの不審な動きを察知していたFBIにより、彼は逮捕されてしまう、、、。

◆ アナリシス
・私の知人であるバンガロール在住のタミル人、カンナダ人、及びロンドン在住のタミル人などがこぞって「面白い」と言ってきたので、大いに期待して鑑賞したが、期待には届かず。クライマックスとエンディングに不完全燃焼な感じがし、拍子抜けした。

・もっとも、本作には続編が企画されており、本作はパート1として、いろいろな部分を未決のままに残した(例えば、テロリストのリーダー、オマルが死んでいないとか)ことが、クライマックスとエンディングに不完全なものを感じた要因だろう(カマル・ハーサンは事前に続編のことをアナウンスしていたようだが、私は知らなかった)。ただ、いかに続編があるといっても、パート1もドカンとした形で終えてほしかった。「セシウム爆弾」に電子レンジを被せて、、、という終わり方は、ユニークなアイデアだと思ったが、やはり物足りない。

・しかも、【Rakta Charitra】(10)や【Gangs of Wasseypur】(12)などは2部作であることがはっきりしていて、間を置かずにパート2が公開されたが、本作の場合は「いつ?」、「ほんとに作るの?」という疑問がちらちらし、どうも落ち着かない。

・といって、つまらないとか、腹が立つとかいったものではなく、まずまず楽しめる娯楽映画だった。ハリウッド映画っぽいとは特に思わなかったが、カマル・ハーサン固有のタッチはあちこちで見られた。また、投入された製作費の大きさに見合った豪華感もある。

・現在時間の流れから見た物語の展開(ニューヨーク編)は単純なものだが、回想としてアフガニスタンのアルカーイダ・キャンプのシーンが適宜挿入され、なかなか面白く仕立てられている。ただ、やはりエンディングのタネ明かしの部分は急ぎすぎたように思う。

・また、エンディングだけでなく、総体的に物足りない印象を受けたのは、リアルさを意識して丁寧に作ろうとしたあまり、南インド映画らしい「勢いで見せる」面白さが鳴りを潜めてしまったからだろう。例えば、本作には目を引くアクション・シーンが2つあり、それぞれ技ありの出来なのだが、ああいうのが4つはほしかった。監督は違うが、同じくカマル・ハーサン自作自演の【Dasavathaaram】(08)などはずいぶん面白く鑑賞できたのだが。

・アルカーイダやターリバーンの思想・行動様式、テロの手口などが幕の内弁当のように手際よく提示されており、カマル・ハーサンらしい細部へのこだわりを感じた。ただし、これらはインド人なら誰でも知っていそうな事柄なので、特段驚きを与えることもないだろう。

・ウサーマ・ビン・ラーディンと思しき人物がのそっと出て来たのが面白かった。それで、ラーフル・ボース演じるオマルは、もしやターリバーンの「オマル師」のことかとも思ったが、そう考える必要なないだろう。(片目を負傷しているという特徴は一致しているが。)

・ところで、周知のとおり、本作はイスラーム教とイスラーム教徒について誤解を招く表現があるとして、某イスラーム教団体から上映禁止を求める動きが起き、実際にタミル・ナードゥ州や海外のマレーシアなどで上映中止措置が取られたりし、ここバンガロールでも3日ほど上映されない期間があった。ところが、ニュースの記事を読んでも、映画本編を観ても、どの点が彼らの癇に障ったのか判然としないのである。私の見たところ、カマル・ハーサンの描く主人公がイスラーム教を方便のように利用している節があり、それが真摯なイスラーム教徒の目には不謹慎に映った可能性はある。だが、それが今回の騒動に結び付いたとは思えない。

・物語の舞台がニューヨークとアフガニスタンと、まったくインドが出て来ないのも私的にはマイナス印象なのだが、しかし、強い日射しに乾いた大地のアフガニスタン(実際にアフガニスタンでロケしたわけではないが)と霧のかかった寒々としたニューヨークとの対比は、絵的には面白かった。パート2はインドが舞台になるようなので、「カマルのおじさん、天竺國で大暴れ!」はそちらに期待しよう。

◆ パフォーマンス面
・本作でのカマル・ハーサンの仕事を評するなら、脚本70点、監督80点、演技90点となろうか?
 ニューヨーク在住のカッタク・ダンスの教師、アフガニスタンで訓練を受けるジハード戦士、テロリストと闘う諜報部員と、3相のカマルが楽しめる。どれも上手く演じている。特に、長髪のなよっとした古典ダンサーが、

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一転して万能のスパイに「変身」する場面では観客から大きな喝采が起きていた。

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・私の注目していたラーフル・ボースの「悪役」であるが、醜怪なメイクアップと作り声でそれらしく扮していたが、いまいち怖さはなかったと思う。

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 私は、近ごろヒンディー映画を観ることが少なくなり、ラーフル・ボースの出演作も【The Japanese Wife】(10)以来ご無沙汰だったが、インド映画にはまり始めた初期に観た【Split Wide Open】(00)以来、好きな俳優に数え入れていた。あの頃はまだ髪もふさふさとあったが、本作での彼の頭部を見て、「ここまで来たか!」と。いわば、彼の頭髪の後退が私のインド映画鑑賞の歴史でもあるようで、感慨深いものを感じた。

・ヒロインというには微妙な役回りのニルパマーを演じたのはプージャー・クマールというインド系アメリカ人女優。名前的にはばりばりのインド人だが、演技的にはハリウッド女優的だった(例えば、表情の作り方など)。

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・脇役では、アンドリア・ジェレミアは特に大きな役割を果たしていなかったが、パート2でクローズアップされるらしい。
 オマルの腹心サリーム役のジャイディープ・アフラーワトが印象に残る。
 ナーサルが枯れ木も山の賑わい的な出演をしていた。
 【Elizabeth】(98)などで有名な映画監督のシェーカル・カプールがひょっこり出演しており、絵的にはなかなか渋かった。

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◆ テクニカル面・その他
・音楽はシャンカル-エヘサーン-ロイの担当。南インド映画の仕事をするのは(本作は純粋な南インド映画と呼びにくいが)テルグ映画の【Konchem Istam Konchem Kastam】(09)以来か?
 音楽シーンの作り方・入れ方はカマル・ハーサンらしい「アイデア」のあるもので、面白い。しかし、映像のほうに注意が行ってしまい、シャンカル-エヘサーン-ロイの曲がどんなものだったか、まったく記憶にない。
 BGMは、私が日頃接している南インド映画ではついぞ耳にすることのないようなもので、非常に新鮮なものを感じた。

・S・ヴァルギーズの撮影は良かったと思う。

◆ 満足度 : ★★★☆☆
◆ 必見度 : ★★★☆☆

◆ 鑑賞データ
・鑑賞日 : 2月2日(土),公開第2週目
・映画館 : Gopalan Cinemas (RR Nagar),12:45のショー
・満席率 : 満席
 

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【Arrambam】 (Tamil)
 「テルグ映画・お祭りシーズン・話題作シリーズ」第X弾、、と行きたいところだったが、あろうことかディーパーワリだというのにテルグに話題作が公開されず、代わりにヴィシュヌヴァルダン監督、アジット主演のタミルの話題作【Arrambam】を観て来た。  ヴィシュヌヴァルダン監督とアジットのコンビには大ヒット作【Billa】(07)がある。しかしその後、アジット主演50本記念作品をヴィシュヌヴァルダンが撮りたがったとき、アジットはそれを袖にしてウェンカト・プラブ監督の【Mankatha】(1... ...続きを見る
カーヴェリ川長治の南インド映画日記
2013/11/06 20:53

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