カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Election】 (Kannada)

<<   作成日時 : 2013/05/30 23:07   >>

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 カンナダ映画界では強き「女ヒーロー」が登場し、悪漢をがんがん懲らしめるという「女傑物」がコンスタントに作られ、同映画産業の特徴を形作っている。
 例えば、下は【Onake Obavva】(11)のアーイシャーさん。彼女は「レディー・ブルース・リー」の異名を取り、すでに数本のアクション映画に出演している。

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 こちらは【Bindas Hudugi】(10)のプリヤー・ハーサンさん。彼女は脚本・監督もこなし、自作自演で自らを女ヒーローに高めている。

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 そしてこちらは【Ragini IPS】(近日公開予定)のラーギニさん。彼女はモデルもこなす美女なのだが、気が付いたらこんなことに!

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 カンナダ映画にどうしてこういう傾向があるのかは分からないが、やはり「アクション・クイーン」として女ヒーローの確固たる地位を築いているマーラーシュリーの存在が大きいだろう。「女傑物はビジネスになる」という生き証人となっているからである。

 そんなマーラーシュリーの新作がこの【Election】。彼女の作品は【Kannadada Kiran Bedi】(09)を観たのが最後、【Shakti】(12)と【Veera】(13)は見送ってしまった。今作はテーマが選挙で、ちょうど今月5日にカルナータカ州で州議会議員選挙が行われたということもあり、タイムリーなので観ることにした。
 監督はN・オームプラカーシュ・ラーウで、制作はマーラーシュリーの旦那のラーム。

【Election】 (2013 : Kannada)
脚本・監督 : N. Omprakash Rao
台詞 : Ravi Srivatsa
出演 : Malashree, Srinivasa Murthy, Pradeep Rawat, Suchendra Prasad, Mico Nagaraj, Hanumanthe Gowda, Lohitashwa, G.K. Govinda Rao, Shravan, Shobharaj, Sadhu Kokila, Bullet Prakash, Dev Gill, Srinivasa Prabhu, その他
音楽 : Hamsalekha
撮影 : Rajesh Kata
編集 : Lakshman
制作 : Ramu

題名の意味 : 選挙
映倫認証 : U/A
タ イ プ : オリジナル
ジャンル : アクション
公 開 日 : 5月23日(木)
上映時間 : 2時間18分

◆ あらすじ
 カルナータカ州で州議会議員選挙が近づき、各政党・政治結社のリーダーたちが気焔を挙げていた。主な政治勢力は6団体あり、それぞれマディワラッパ(Srinivasa Murthy)、ナラシンハ(Pradeep Rawat)、ラーマスワーミ(Suchendra Prasad)、ラージャカルナ(Mico Nagaraj)、ガンガーダラ(Hanumanthe Gowda)、ヴィシュワナート(Lohitashwa)に率いられていた。このうち、ヴィシュワナートのみが不正を離れた誠実な政治家であった。
 選挙運動が活発になるにつれ、政党間の対立が暴力へと発展し、大物政治家の殺害事件なども起こり、バンガロールは混乱に陥る。事態を重く見た州知事(G.K. Govinda Rao)は中央政府と相談し、選挙を無事に終えるために優秀な選挙管理委員を派遣するよう依頼する。そこで派遣されたのが剛腕で聞こえたインディラ(Malashree)であった。

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 インディラはカルナータカ州に到着するや、大規模な選挙パレードで道路を防ぐことや、夜10時以降の集会などを禁止する。もちろん、贈賄は厳しく禁じ、これらの規則を破るものは誰であろうと牢獄にぶち込む。
 こうしたインディラの活動に苛立ったリーダーたち(ヴィシュワナートを除く)は、テロリスト(Dev Gill)を雇い、彼女を脅迫する。しかし、その模様はインディラの持つ隠しカメラで撮影され、テレビで生放送される。それを見た市民たちは憤り、5人のリーダーたちを殺そうとするが、インディラはあくまでも「投票」という手段を行使するよう、市民を説得する。
 ほどなく投票日となり、唯一不正を働かなかったヴィシュワナートの党が勝利を収める。

・その他の登場人物 : ナラシンハの義弟デーヴィ・プラサード(Shravan)

◆ アナリシス
・選挙戦に絡む政治家たちの不正・暴力に対して女主人公(役人)が闘いを挑むという、単純明快なストーリー。当然、政治・政治家に対する風刺色の強い作品となる。映画中に登場する政治家たちも実在するカルナータカ州の大物政治家のパロディーとなっている。例えば、マディワラッパ(Srinivasa Murthy)はKJP(Karnataka Janata Paksha)のB・S・イェディユーラッパ(元州首相)、ラージャカルナ(Mico Nagaraj)はJDS(Janata Dal Secular)のH・D・クマーラスワーミ(元州首相)、ガンガーダラ(Hanumanthe Gowda)は国民会議派のシッダラーマイヤ(現州首相)、ラーマスワーミ(Suchendra Prasad)はBSRコングレス(Badagara Shramika Raitala Congress)のB・シュリーラームルーに相当するらしい。

・しかし、そこはやはりフィクションなので、ぴったり現実をなぞっているわけではない。例えば、ナラシンハ(Pradeep Rawat)とヴィシュワナート(Lohitashwa)に当たる実在の政治家が見当たらない。ナラシンハは最も悪質な政治家(というより、ヤクザ)として描かれ、これはアクション映画としての面白さを増すために創られたキャラクターだろう。逆に、ヴィシュワナートのような誠実な政治家は実在し得ないのだが、これも政治家の「理想型」を示すために登場させたものだろう。

・そういった訳で、製作サイドとしては本作を選挙前に公開したかったようだが、現実の政治家からのリアクションを恐れて、KFCCが上映許可を出さなかったものらしい。

・作品の出来としては、オームプラカーシュ・ラーウ監督にしては、かなり悪い。理由ははっきりしている。上に書いたとおり、本作は政治家と選挙をテーマとしたものだが、政治風刺ドラマで行くのか、おバカなアクション映画で行くのか、方向性が一貫しておらず、ムラがあったことだ。風刺物としてけっこう良い線で来ていたのに、悪の政治家5人衆が一致団結してテロリスト(Dev Gill)を雇う展開で一気に白けてしまった。近年の政治物では、タミル映画の【Ko】(11)やテルグ映画の【Cameraman Gangatho Rambabu】(12)に並ぶものを期待したが、それには届かず。

・しかし、外国人の目には面白く見える部分もいろいろあった。例えば、候補者が投票を求めて有権者に様々な「贈り物」(現金、テレビ、貴金属、サリー、酒etc.)を渡す手口の紹介。政党内で候補者を決める過程の紹介も「やっぱり」と言った感じで面白かった。

・カンナダ映画界はテルグやタミルほど密接な政治・政治家との関係はないが、それでも有名俳優が政界入りするケースや、政治家が映画制作に手を出すケースは少なくなく、本作でも政治家と映画界とのリンクが茶化しの対象となっていた。例えば、キャンペーンに人気スターを使いたいが、ダルシャンやプニート・ラージクマールはギャラが高くて呼べないという理由で、サードゥ・コーキラとブレット・プラカーシュが起用されるシーンなど。

・本作の評とは関係ないが、話のついでに5月5日の選挙の結果を書いておくと、国民会議派が予想外の勝利を収めた(というより、BJPの一人負け?)。映画界からはアンバリーシュとウマーシュリーが当選し、共に大臣に指名された。プージャー・ガーンディはBSRコングレスから出馬して、落選している。

◆ パフォーマンス面
・結局こういう映画は完成度よりマーラーシュリーの豪傑ぶりを楽しむのがスジなのだが、その点ではまずまず楽しめた。しかしなぁ、「アクション・クイーン」と言われる割には、走り方も銃の構え方も格闘の仕方も太ったオバサンらしくドタドタしたもので、あまりカッコよくなかった。じゃあ、彼女の魅力は何か(何ゆえアクション・クイーンが張れるのか)といえば、結局はあの「目ヂカラ」だろう。それに、悪漢をバシッとひっぱたく「平手打ち」は力道山の「空手チョップ」に匹敵する痛さだと思う。
 (写真下:ナラシンハ(Pradeep Rawat)を睨み付けるインディラ(Malashree)。)

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・実在する政治家らしき人物を演じたシュリーニワーサ・ムールティ、スチンドラ・プラサード、ミコ・ナーガラージ、ハヌマンテ・ガウダはそれぞれ良かった。こういう政治家のパロディーをやるというのは、役者にとって楽しいものなのだろう。

・プラディープ・ラーワト、シュラヴァン、デーヴ・ギルのトリオが取って付けたようなアクション映画の悪役を担当していた。

◆ テクニカル面・その他
・音楽はベテランのハムサレーカの担当。彼の音楽も久々なので、楽しみだったが、マサラ娯楽映画のくせに音楽シーンが1曲しかなかった。(まぁ、マーラーシュリーのダンスはもはや見たくないので、1曲でよかったけど。)

◆ 満足度 : ★★☆☆☆
◆ 必見度 : ★☆☆☆☆

◆ 鑑賞データ
・鑑賞日 : 5月25日(土),公開第1週目
・映画館 : Gopalan Cinemas (RR Nagar),12:30のショー
・満席率 : 1割
 

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