カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【6-5=2】 (Kannada)

<<   作成日時 : 2013/12/04 23:18   >>

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 明確な規制があったわけではないと思うが、カンナダ映画では題名に非カンナダ語(英語やヒンディー語)を使うと、KFCC(Karnataka Film Chamber of Commerce)から「再考しなさい」とのクレームが付くことが多かったが、最近ではお構いなしになったのか、今年は【Election】、【Director's Special】、【Whistle】、【Teenage】、【Victory】、【Case No.18/9】、【Coffee with My Wife】、【Colors in Bangalore】など、英語のものが多い。おかげでカンナダ語が流暢に話せない外国人でもシネコンの窓口で切符を買いやすくなった。

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 と、そんなことを考えていたら、またまた変わった題名の作品が現れた。今度は英語でもヒンディー語でもなく、「6-5=2」という数式。
 題名に惹かれてトレイラーを見たら、これが異色のホラー作品っぽかったので、この週末はサンディープ・キシャン主演のテルグ映画【Venkatadri Express】を観るつもりだったが、予定を変更した。

【6-5=2】 (2013 : Kannada)
監督 : ?
出演 : ?
撮影 : ?
制作 : Swarnalatha Productions

題名の意味 : −
映倫認証 : A
タ イ プ : オリジナル
ジャンル : ホラー
公 開 日 : 11月29日(金)
上映時間 : 1時間45分

◆ あらすじ
 2010年10月、カルナータカ州南部の山中でトレッキングをしていた若者6人に異変が起こり、3人が死亡、2人が消息不明になるという事件が起きる。スワルナラター・プロダクションは、唯一の生存者であるプラカーシュの証言と、森中で発見されたビデオカメラの映像から、事件のドキュメンタリーを製作することにした。
 ・・・
 2010年10月22日、ナヴィーン、ラメーシュ、クマール、プラカーシュの4人は、マイソールから西ガーツ山脈の森に入り、トレッキングを開始する。翌23日、ディーパとソーミャも彼らに合流する。この森で彼らは枝にいくつもの髑髏が突き刺さった木を発見する。また、夜中に不気味な女の声も聞く。
 25日、プラカーシュが高熱を出す。5人はプラカーシュをキャンプ地に残し、トレッキングを続ける。だが、山頂に到着した後に戻って来ると、キャンプ地は荒らされており、プラカーシュの姿は見えなかった。ソーミャは不安を表明するが、他の4人は無視する。しかし、その後5人の周辺でいよいよ怪現象が起きる、、、。

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◆ アナリシス
・これは「もしやファウンド・フッテージ形式のホラー映画かも」と憶測しつつ鑑賞したら、まさにそのとおりだった。というか、後でスチルをチェックしたら、ちゃんと「カンナダ映画界初のファウンド・フッテージ映画」だと銘打ってあった(下)。「カンナダ映画界初」というのは間違いないと思うが、インド映画界全体で見ても、きっと珍しいに違いない(私には「インド映画界初」とは断言できないが)。

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・映画はドキュメンタリー・タッチに徹していて、いわゆる娯楽的要素をまったく排した素っ気ない作り。スタッフやキャストの名前も表示されない。単に映画の冒頭で実際に起きたとされる事件のあらましと、本作の製作に至った経緯がごく簡単にカンナダ語字幕で説明されるだけ。

・描かれているのは、2010年10月にマイソール近くの森をトレッキングしていた若者6人を襲った怪事件で、生存者(プラカーシュ)の証言とメンバー(ラメーシュ)が持っていたビデオカメラの映像からドキュメンタリーを構築したもの。グループの「森林入域許可証」や事件を伝える10月30日の「新聞記事」も提示されている。

・しかし、言わずもがなだが、これが実際の事件を描いたドキュメンタリーではなく、まったくのフィクション(やらせ)、つまりモキュメンタリー映画であることは、映像や音声、登場人物の挙動を見れば、明らか。ただし、こちらに寄せられたコメントを信じるなら、このような事件が実際に起こり、そのフッテージもテレビで流されたことがあったようにも見える。(この点を私の周りの現地人に聞いても判然としなかった。)

・とにかく、ドキュメンタリー映画になり切ろうとしているので、シークレットにしている部分が多く、分からないことだらけ。監督も出演者も名前が分からない。「Times of India」のレビューでは監督名を「K.S. Ashok」としているが、何を根拠にそうしているか分からない。また出演者名も、登場人物名と同じ「Ramesh, Naveen, Prakash, Kumar, Deepa, Sowmya」としているレビューもあれば、「Pallavi, Tanuja, Darshan, Krishna Prakash, Vijay Chendur, Mruthyunjay」の名前を挙げているものもある(例えばこちら)。まぁ、出演者については、ホラー映画らしく「every Tom, Dick and Harry」な連中が出てくるだけなので、誰でもいいのだが。

・映像は、トレッキング・メンバーの1人だった「故ラメーシュ(Late Ramesh)」によるもの、とされているが、これももちろんフィクション。しかし、信じろと言うなら、信じてやるぜ!

・感想を言うと、ホラーといってもちっとも怖くないのが苦しかった。しかし、観客はゲラゲラ笑っていたので、インド・ホラーの王道「笑えるホラー」としては成功だったかも。意外に客を集める予感が。私的には、本作の持つスカスカなチープ感が気に入っている。きっと、仲間でお小遣いを出し合って作った映画なんだろうなぁ。映画を作りたいという彼らの情熱が直に感じられるような作品で、好感が持てた。

【Dongala Mutha】(11)の鑑賞記の中で、RGV監督の意図は「あなたも映画が作れる!」ということを示すことにあったのではないか、みたいなことを書いたが、今やインドでも素人がぎりぎりの予算で、彼らでも利用可能な機材を使って、劇場公開用の映画が作れる時代になっている。当たるかどうかはアイデア次第。タミル映画の【Pizza】(12)もそんな流れから出た映画だと思われるが、本作にも同じようなことが言えると思う。

・映像に現れた異常現象について、説明も種明かしも一切ない。「なんで?」と思っても、「なんでか知らん。カメラにこう写ってたんだから、仕方ないだろ」といった感じだ。これはインド人鑑賞者にとって異質なホラー体験だったに違いない。

・例えば、カンナダ・ホラー映画の特徴といえば、【Mohini 9886788888】(06)や【Yaaradu】(09)、【Naagavalli】(12)、【Chaarulatha】(12)を見る限り、因果応報の倫理観(「あんなことするから、こんな罰が当たるんだ」みたいな)が基盤となっていることが多く、また、家族や友人、恋人などとの間のセンチメントが重く扱われ、べたべたした感じがある。しかし、本作にはそういった要素は一切ない。

・カンナダ映画界初の「ファウンド・フッテージ映画」として、舞台を西ガーツ山脈の森を選んだのは正解だったと思う。インドの森というのは、叙事詩の時代から精霊や悪霊、羅刹が棲息する場所と信じられていたし、風変わりな習俗を持つ部族民もいるかもしれないし、ナクサライトやデコイットなどの反体制グループが潜んでいる所だってある。普通のインド人にとっては、昼間の美しさとは裏腹に、夜には何が起きても不思議ではないというイメージがあるだろう。

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・題名の「6-5=2」というのは、「6人のうち5人がいなくなり、1人とカメラが残った」という意味だと思うが、別の解釈も可能かもしれない。

・本作は、歌ありダンスありアクションありのマサラ娯楽映画のファンなら、映画を見た気がしない、見て損した、騙された感があるかもしれないが、インド映画としてはかなりの異色作になるので、怖いもの見たさで(いや、全然怖くないのだが)観ておいてもいいかなと思う。

◆ 満足度 : ★★☆☆☆
◆ 必見度 : ★★★☆☆

◆ 鑑賞データ
・鑑賞日 : 11月30日(土),公開第1週目
・映画館 : Kamakya,11:30のショー
・満席率 : 4割
 

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【Karvva】 (Kannada)
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2016/06/28 22:06

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