カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Sachin... Tendulkar Alla】 (Kannada)

<<   作成日時 : 2014/07/16 19:04   >>

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 このカンナダ映画【Sachin... Tendulkar Alla】は、クリケットが大好きな自閉症の少年を主人公にした作品という触れ込みで、おそらくお涙ちょうだいの、取って付けたようなメッセージが飛び出す映画だと予想され、敬遠したいところだったが、それでも観ることにしたのは、こんな映画の中にインド人を理解する鍵があるのではないかと思われたからである。
 というのも、私がインドにいるのは、観光や就学、研究、または古典ダンスやヨーガなどの修練のためではなく、あくまでも雇用ビザをもらっての企業活動ということなので、インド人相手に上手く仕事をやるためには、彼らと関心事を共有し、彼らを理解していく作業が必要となる。その目的のためにインド映画は重要なツールとなるわけで、特に本作のようにクリケットをモチーフとしている上、インド人の家族関係や倫理観が反映されていそうな映画は格好の観察対象となる。

 加えて、本作を観る大きな動機となったのは、ウェンカテーシュ・プラサードとジャワガル・シュリーナートという、カルナータカ州出身の元インド代表クリケット選手が出演するという点だった。
 先日、マリア・シャラポワがサチン・テーンドゥルカルのことを知らないと言って、インド人側で大騒ぎとなったが、シャラポワの無知(それに日本での知名度の低さ)に関わらず、クリケットは競技人口の多い国際的なスポーツであることに間違いはない。そのクリケットの世界でインドは長らく強豪国であり続けており、つまりはインド代表チームの中には、サッカーで言えばメッシやC・ロナウドに当たるようなスター選手がごろごろいるというわけで、これは壮観である。
 そのキラ星の一員だったのがウェンカテーシュ・プラサードとジャワガル・シュリーナートで、両人とも90年代から2000年代初めに活躍した速球ボウラー。ウェンカテーシュ・プラサードがバンガロール出身で、ジャワガル・シュリーナートがマイソール出身なので、私は個人的に前者を「バンガロールの弾丸野郎」、後者を「マイソールの剛球野郎」と呼んでいたが、後者は実際に"Mysore Express"の異名を取っていた。
 (写真下:左がVenkatesh Prasad、右がJavagal Srinath。)

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 主人公の少年を演じるのは【Appu Pappu】(10)のスネーヒト。低予算で地味な作品っぽいが、一応スハーシニやスダーラーニのような名女優が出演している。

【Sachin... Tendulkar Alla】 (2014 : Kannada)
物語・脚本・台詞・監督 : S. Mohan
出演 : Master Snehith, Suhasini Maniratnam, Venkatesh Prasad, Sudharani, Ashwini Gowda, Srinivasa Prabhu
音楽 : Rajesh Ramanath
撮影 : Prasad Babu
制作 : B.N. Gangadhar

題名の意味 : サチン、、、テーンドゥルカルじゃない
映倫認証 : U
タ イ プ : オリジナル
ジャンル : ドラマ
公 開 日 : 7月11日(金)
上映時間 : 1時間58分

◆ あらすじ
 13歳のサチン(Master Snehith)はサチン・テーンドゥルカルの大ファンで、自分もテーンドゥルカルのようなクリケット選手になりたいと夢見ていた。しかしサチン少年は自閉症で、普通の学校に通うこともできず、子供たちとクリケットをすることもままならなかった。姉のサークシー(Suhasini Maniratnam)は、そんなサチンのために自らの結婚を諦め、献身的に彼の世話をしていた。だが、サークシーの母と結婚適齢期にある妹のバーヴァナ(Ashwini Gowda)は、障害を持つサチンの存在を否定的に見ていた。
 そんなある日、サチンに脳腫瘍が見つかり、余命いくばくもないことが分かる。そのため、サークシーはサチンの一番やりたい夢を叶えてあげようとするが、それがクリケットの試合に出るということだった。彼女はクリケットのコーチをしている親友のディネーシュ(Venkatesh Prasad)に相談を持ちかける。ディネーシュは自身がコーチをしているヴィディヤー・レンニャ高校の校長(Srinivasa Prabhu)にサチンをチームに加えることを申し出るが、言下に拒否される。やむなく彼はその職を辞し、代わりに新しいコーチを探していたサーイ・サラスワティ高校にアプローチし、校長のスダー(Sudharani)からもサチン出場の件を承諾してもらい、同校のコーチとなる。サチンはチームメイトと練習を開始する。
 クリケット大会を迎え、サーイ・サラスワティ校の対戦相手が決まる。それは皮肉なことにヴィディヤー・レンニャ校だった。しかし、試合当日、サチンは入院してしまい、生死の境をさ迷う状態にさえなる。だが、せめてもとサークシーがサチンにクリケットの装具を付けさせると、彼はたちまちに回復し、試合に出られるようになる。
 かくて試合が始まるが、相手校のコーチは以前サーイ・サラスワティ校を解雇されたダルマという男で、同校に対して恨みを抱いていた。ダルマはディネーシュと校長のスダーに一泡吹かせるために、選手に相手チームの穴、すなわちサチンを狙い打ちするよう指示する、、、。

◆ ざっくりしたコメント
・子供とクリケットをモチーフとした南インド映画には【Golconda High School】(11)、【Dhoni】(12)、【1983】(14)などがあるが、それらが大筋で教育の問題をテーマとしていたのに対し、本作では子供の「病気/障害」が扱われていた。

・インドについてよく知らない日本人の目からすると、インドは病気大国で、インドといえばコレラやマラリア、デング熱などを思い浮かべるかもしれないが、実際には今のインド映画界が関心を向けるのは、そんな感染症ではなく、高血圧や糖尿病、心臓疾患などのいわゆる生活習慣病であり、加えて子供の病気/障害も問題視される(後者は【Taare Zameen Par】(07)の成功からも伺える)。

・本作で取り上げられた病気は「自閉症」だが、これは本当の自閉症で、引きこもりや鬱病と混同される状態のことではない。私は自閉症について詳しくは知らないのだが、本作のサチン少年(Snehith)には知的障害と若干の運動機能障害があるようだった。

・映画全体は、サークシー(Suhasini)が障害者の学校に呼ばれ、そこの児童たちに「テーンドゥルカルじゃない『サチン』のお話」(これが本作の題名にもなっている)を語るという回想形式になっている。

・障害を持つ子供といえども、基本的には健常者と同じで、周囲のサポート次第で一般的な社会生活は可能であり、かつ誤解や偏見、差別意識によって周囲の人間が障害児の行動を封じ込めてはいけない、というメッセージはもっともだし、それ自身は受け入れ可能だが、それが論理的に、かつ映画として上手く表現できていたかというと、全然そうじゃなかった。脚本は何の工夫もひらめきもなく、演出は素人仕事で、真面目な意図の映画ではあるが、残念ながら高い評価を与えることも、お勧め作とすることもできない。(S・モーハンはもっと力量のある監督だと期待したが、失望した。)

・一番いけないのは、病気/障害を持つ子供への励ましのメッセージとクリケットの絡み合わせに失敗している点だろう。クリケットは紳士のスポーツと言われ、"It's not cricket"と言えば「それはフェアじゃない」を意味するほどなのだが、本作でもそのクリケット精神が鍵とされている。コーチのディネーシュ(Venkatesh Prasad)は子供たちにフェアプレーを指導し、「クリケットはゲームだ。戦争ではない」と諭す。他方、相手校コーチのダルマは「クリケットは単なるゲームではない。戦争だ」と説き、少年レベルのクリケットでは推奨されない危険なプレーも教え込む。しかし、試合が進むにつれ、ダルマのチームの子供たちは敵のサチンの無垢な善性に感銘を受け、サチンのためにわざとエラーをしたり、審判までもがサチンに有利に判定したりするようになる。それで、結局ディネーシュとサチンのチームが勝つことになるのだが、しかし、同情から故意にエラーをしたり、正しくない判定をしたりするのは、明らかにクリケットの精神に反する。当のサチン自身もその事実を知ったなら、ハッピーではないはずだ。これだと、映画全体が死期の迫った少年に対して温情を示しただけになってしまい、病気/障害を持つ子供を社会に受け入れ、活かすというメッセージが死んでしまうのである。

・と、この点は私の目には大きな間違いに見えたのだが、もしかしたら、インドの大衆目線ではこれもありなのかもしれない。そうだとすると、ここにもインド人を理解するための鍵があるのかもしれない。

◆ 演技陣へのコメント
・スネーヒト(サチン役)
 病気の少年を一生懸命演じようとしているのは分かったが、どうもこの子役からは涙を誘う悲劇性が漂って来なかった。
 (写真下:姉役のスハーシニと。)

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・スハーシニ(サークシー役) ★★★☆☆
 さすがにしっかり芝居をしており、本作品をある程度救っていたが、泣きすぎだった(カンナダ映画のお涙ちょうだい映画は登場人物自身が泣きすぎるので、困る)。また、言いたくはないが、孫と言ってもいいぐらいの子役相手に「姉」というのはどうも、、、。

・ウェンカテーシュ・プラサード(ディネーシュ役)
 要はクリケット選手というのはユニフォームを着てクリケットをしている時が最もカッコいいのであって、ウェンカテーシュの場合も、背が高い、足が長い、手が大きいということ以外、特に印象はなかった。
 (写真下:一応、記念にスハーシニさんとのツーショットを貼っておく。)

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 ただ、名誉挽回のために書いておくと、現役時代のウェンカテーシュ・プラサードはコヨーテのように精悍な選手で、かなりカッコよかった。下の動画はウェンカテーシュの「名勝負」として有名なもので、本作品にも引用されている。1996年のワールドカップ準々決勝、インド対パキスタン戦のもので、バッツマンのパキスタン・キャプテン、アーミル・ソハイルがウェンカテーシュから4ランを打ち、ウェンカテーシュを侮辱するが、直後のボウリングでウェンカテーシュがアーミルをアウトにし止め、リベンジするという、インド人が非常に愛している一場面。



・しかし、そのウェンカテーシュ・プラサードよりもジャワガル・シュリーナートのほうが球が速く、実績が上だった。私はシュリーナートがいつ、どんな形で本作に登場するのか楽しみにしていたが、実際には出て来なかったようで、へこんだ。

◆ 完成度 : ★☆☆☆☆
◆ 満足度 : ★☆☆☆☆
◆ 必見度 : ★☆☆☆☆

◆ 鑑賞データ
・鑑賞日 : 7月13日(日),公開第1週目
・映画館 : Gopalan Cinemas (RR Nagar),12:30のショー
・満席率 : 2割
 

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