カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Vikramadithyan】 (Malayalam)

<<   作成日時 : 2014/07/29 21:10   >>

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 マラヤーラムのニューウェーブ映画というのも成熟を見せつつあるが、その端緒となった作品の1つが、やはりラール・ジョース監督の【Classmates】(06)かなと。つまりは、ラール・ジョースはケーララの映画ファンに新たな嗜好をもたらした監督であり、私も同氏の作品は好んで観ていたが、ところが【Diamond Necklace】(12)と【Ayalum Njanum Thammil】(12)を最後に、昨年の3本(【Immanuel】、【Pullipulikalum Aattinkuttiyum】、【Ezhu Sundara Rathrikal】)は観ていない。というより、公開されたことすら気付かなかった(理由は分からない)。今回は運良く気付いたので、抜かりなく観て来た。
 (写真下:ラール・ジョース監督近影。「すんまへん、二日酔いですねん」といった風情だ。)

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【Vikramadithyan】 (2014 : Malayalam)
物語・脚本・台詞 : Iqbal Kuttipuram
監督 : Lal Jose
出演 : Dulquer Salmaan, Unni Mukundan, Namitha Pramod, Anoop Menon, Lena, Santhosh Keezhattoor, Joy Mathew, Sadique, Charmila, Sidhartha Siva, Nivin Pauly(特別出演)
音楽 : Bijibal
撮影 : Jomon T. John
編集 : Ranjan Abraham
制作 : Lal Jose

題名の意味 : ヴィクラマンとアーディティヤン
映倫認証 : U
タ イ プ : オリジナル
ジャンル : ドラマ
公 開 日 : 7月25日(金)
上映時間 : 2時間23分

◆ あらすじ
 その昔、警官のヴァースデーヴ・シノイ(Anoop Menon)は同じ署に勤める婦人警官のラクシュミ(Lena)を愛していたが、彼女はクンジュンニ(Santhosh Keezhattoor)と結婚してしまう。クンジュンニはコソ泥だが、ラクシュミが警官と結婚したがっているのを知り、警官だと偽って彼女の心をつかんだのであった。後に彼女は夫の正体を知るが、時すでに遅し。他方、シノイのほうもやむなく別の女性(Charmila)と結婚する。そして、何の運命のいたずらか、二組の夫婦は同じ日の同じ時間に男児を授かり、シノイの息子はヴィクラマン、ラクシュミの息子はアーディティヤンと名付けられる。
 ヴィクラマンとアーディティヤンは小学校でも友人でありライバルだった。二人は何かと勝負をしたがり、負けたほうが勝ったほうに敬礼を捧げるルールにしていたが、いつもアーディティヤンが敗者になっていた。また、ある日、クンジュンニが窃盗容疑でシノイに逮捕される。父のことを警官だと信じていたアーディティヤンは強いショックを受ける。さらに、父はこの一件の後、自殺してしまう。
 ヴィクラマン(Unni Mukundan)とアーディティヤン(Dulquer Salmaan)の関係は成人してからも変わらなかった。ヴィクラマンは勤勉で、父と同様、警官になるべく励んでいた。他方、コソ泥の息子アーディティヤンは自由気ままに行動し、悪い連中とも付き合っていた。二人には幼馴染みのディーピカ(Namitha Pramod)がいた。彼女はヴィクラマンのことを「ベストフレンド」、アーディティヤンのことを「ワーストフレンド」と言っていたが、実はアーディティヤンのことが気に掛かってしようがない。アーディティヤンもディーピカのことを愛するようになっていた。彼女が警官になったほうと結婚すると言ったので、アーディティヤンもヴィクラマンと同様、警察官(サブ・インスペクター)の試験を受けることにする。
 二人とも筆記試験に合格する。ところが、アーディティヤンはその直後に麻薬事件に巻き込まれ、逮捕されてしまう。この一件は裏での働きかけでアーディティヤンは釈放される。だが、この時の経緯が元で、彼は警察の面接試験を受ける機会を失ってしまう。警官になることは亡父への敬意でもあったため、アーディティヤンは絶望する。翌朝、彼は忽然と姿を消す、、、。

◆ ざっくりしたコメント
・鑑賞後、「超ソフトな【Pokiri】?」だと思った(全然違うので、この印象は参考程度にしていただきたい)。

・レビューに目を通してみたら、批評家の評価はそれほど高くないようだが、私的には十分感動できたし、要所要所での観客の反応も良かった。

・確かに、ラール・ジョース監督のベスト作品などに比べると、落ちるかなという印象はある。【Classmates】や【Arabikkatha】(07)、【Neelathaamara】(09)、【Elsamma Enna Aankutty】(10)、【Diamond Necklace】などでは、形は違えど何らかの情緒が迸り出るといった感じだったが、本作にはそれほどの勢い(スパーク)はない。

・イクバール・クッティプラムのストーリー/脚本が弱かった可能性はある。しかし、ラール・ジョース監督の仕事としては、登場人物の感情の描き方は正確だったと思うし、絵的にも、舞台となったコチの下町やディーピカの実家(小医院)の内部などが素敵に映像化されていた。

・第一、やっぱりラール・ジョース監督は俳優に演技をさせるのが上手い。ドゥルカル・サルマーン、ウンニ・ムクンダン、ナミター・プラモードの若い3人をうまく乗せていたし、アヌープ・メーノーンやレナのベテランからはかっちりした芝居を引き出し、この点だけでも満足度は高い。

・ただ、内容面からして、傑作を作りにくいテーマだったというのはある。警官の息子できちんとした優等生と、コソ泥の息子で反社会的な負け犬の対立と友情、一人の女性を巡る三角関係、それぞれの夢と焦り、人間的成長など、これまで繰り返しインド映画で使われてきたモチーフで、ここで画期的な作品を作るのは難しい。しかし、本作はかなりの程度「青春物」の純粋な情緒を出すことに成功していると思う。

・インド映画の場合、ヒーローとなるのは社会から逸脱した負け犬のほうで、きちんとした優等生タイプが最終的な勝利を収めることがない。本作でも連戦連敗で、いつもヴィクラマン(Unni Mukundan)に対して敬礼を捧げていたアーディティヤン(Dulquer Salmaan)が、最後に一発逆転するという展開になっている。ここはちょっと反則っぽい手法が使われているが、うまく感動的に収めている。

◆ 演技陣へのコメント
・ドゥルカル・サルマーン(アーディティヤン役) ★★★★☆
 カッコよかった。横丁のやんちゃ坊主という面だけでなく、泥棒の息子という境遇の悪さを忍んで生きるという屈折した面もよく出せていた。序盤のアクションでの足さばきは親父を髣髴とさせたし、人間的に成長した後のハンサム度アップはさすがサラブレッド。不器用なアイドルだったドゥルカルも、そろそろ俳優と呼んでやってもいいのではと思う。

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・ウンニ・ムクンダン(ヴィクラマン役) ★★★☆☆
 全く知らない人だった。おそらくこの人の好演も効いている。ここらでモリウッド・ニューウェーブ・スターの仲間入りを果たしたいところだろうが、いま一つ印象に残りにくい顔立ちがネックになるかも。

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・ナミター・プラモード(ディーピカ役) ★★★☆☆
 パフォーマンス自体は問題なく、健闘している。ただ、19歳にしてすでに若妻ふうの老け方はいかに?(【Traffic】で見たときは可愛いと思ったが。)同じ19歳のナスリヤ・ナシームと比べても、ナスリヤが柔らかく、天性の上手さで芝居しているのに対し、ナミターの場合は四角く硬く、「ドラマスクールで練習しました」といった感じで、アイドルとしての可愛らしさが漂ってこないのが苦しい。

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・アヌープ・メーノーン(ヴィクラマンの父役) ★★★☆☆
 ニューウェーブ映画の成功はフレッシュな若手俳優の台頭だけでなく、上の世代の実力俳優の存在が大きいのは言うまでもない。その一人がアヌープ・メーノーンで、本作でも本人が自負しているほどには立派ではない警官をうまく演じている。

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・レナ(アーディティヤンの母役) ★★★☆☆
 この人も効いている。なにせ本作のドラマはすべてラクシュミがコソ泥に騙されてしまうことから始まるのだから。夫を拒否しつつも、ついつい子供を3人も作ってしまったり、子を思う余りかえって子を絶望させてしまうような、賢明に見えて愚かな「凡婦」を過不足なく演じている。

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・ジョーイ・マーテュ(ディーピカの父役)
 視覚的にはこのお方もリアル。

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・サントーシュ・キーラットゥール(アーディティヤンの父役) ★★★★☆
 しかし、本作でより驚きの発見だったのは、アーディティヤンの父クンジュンニを演じたこの人だ。全く知らない人だが、実に良い顔をしている。

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・特別出演のニヴィン・ポーリについては、本当にこの人は運が良いとしか言いようがない。

◆ テクニカル面・その他(覚書)
・音楽 : ビジバル ★★★☆☆
 音楽シーンの一つに特に脈絡もなくスーフィズムふうの舞踊が入っていたが、なぜ?

・撮影 : ジョーモン・T・ジョン ★★★☆☆

◆ 完成度 : ★★★☆☆
◆ 満足度 : ★★★★☆
◆ 必見度 : ★★★★☆

◆ 鑑賞データ
・鑑賞日 : 2月26日(土),公開第1週目
・映画館 : Sangeet,11:30のショー
・満席率 : 4割
 

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