カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Yennai Arindhaal...】 (Tamil)

<<   作成日時 : 2015/02/10 21:15   >>

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 ガウタム・メーナン監督、アジット主演の話題の新作。
 ガウタム・メーナン監督はタミル映画界のエース監督の1人と見なされ、人気も高い。しかし、私的には彼の作品はどうも自己満足的というか自己陶酔的というか、こだわりの強い作風が嫌で、いまいち好きになれない、みたいなことは以前にも書いた。本作もラニングタイムが3時間弱の長尺で、こってりとあれやこれやを見せられるのかなぁと思うと、憂鬱にならないこともなかったが、やっぱり観ておかないと。
 ちなみに、本作は【Kaakha Kaakha】(03)、【Vettaiyaadu Vilaiyaadu】(06)に続くガウタム監督の「警官物3部作」の完結編になるらしい(3作にストーリー上の繋がりはない)。

【Yennai Arindhaal...】 (2015 : Tamil)
脚本・監督 : Gautham Menon
出演 : Ajith Kumar, Anushka Shetty, Trisha, Arun Vijay, Parvathy Nair, Vivek, Nasser, Ashish Vidyarthi, Suman, Avinash, Stunt Silva, Daniel Balaji, Baby Anikha, その他
音楽 : Harris Jayaraj
撮影 : Dan Macarthur
編集 : Anthony
制作 : A.M. Rathnam, S. Aishwarya

題名の意味 : 私のことを知っているなら、、、
映倫認証 : U/A
タ イ プ : オリジナル
ジャンル : ドラマ
公 開 日 : 2月5日(木)
上映時間 : 2時間56分

《 あらすじ 》
 サティヤデーヴ(Ajith)は、子供の頃に父(Nasser)をギャングに殺された経緯から、正義感の強い警官になっていた。彼は覆面捜査官としてヤクザになりすまして牢獄に入り、囚人のヴィクター(Arun Vijay)と親しくなる。狙いはヴィクターのボス、マテュー(Stunt Silva)だった。作戦はうまく行き、サティヤデーヴはマテューを仕留める。しかし、この件で彼はヴィクターから強い恨みを買う。
 サティヤデーヴはある捜査の際に妊婦と遭遇し、彼女を病院へ送り届ける。2年後、彼は裁判所でその女性と再会し、あの時に生まれた女児を紹介される。その女性はヘーマニカー(Trisha)という名の有名な舞台女優で、シングルマザーだった。数年の交際の後、二人は結婚することにするが、結婚式の前日にヘーマニカーは何者かに殺されてしまう。
 サティヤデーヴはヘーマニカーの娘イーシャー(Baby Anikha)を自分の娘として育てることにする。彼は警察の職を辞し、イーシャーの心の傷を癒すために、彼女と北インドの田舎町で静かに暮らす。
 だが、数年後、知人から娘の誘拐事件のことで相談され、犯罪捜査の現場に復帰することにする。捜査の過程で、サティヤデーヴはあるマフィアが臓器売買を目的に誘拐事件を繰り返していることを突き止める。しかも、その首謀者はヴィクターだった。マフィアの次のターゲットがテーンモリ(Anushka)という女性だと察知したサティヤデーヴは、彼女を保護する作戦を開始する、、、。

   *    *    *    *

◎ テーマ : ★★★☆☆
◎ 物 語 : ★★★☆☆
◎ 脚 本 : ★★★★☆
・良い映画だった。「面白い映画」と言わないで、「良い映画」と言うのは、まさに文字通り、面白いというよりは、良い映画だったから。つまりは、警察物の他の2作、【Kaakha Kaakha】と【Vettaiyaadu Vilaiyaadu】に比べると、インパクトもエキサイト感も落ちるかもしれない。その点、タミル人なら物足りなさを感じるかもしれない。それでも、本作は良い映画だと言える。

・上でガウタム作品に対する違和感を書いたが、本作は、ガウタム監督も大人になったのか、嫌味な感じがほとんどなく、すっきり端正なテイストに仕上がっている。3時間弱のラニングタイムも苦にならなかった。

・良い映画と言ったのは、ガウタム監督の映画愛というか、とにかく映画を愛して、丁寧に丁寧に作品を作ろうとする姿勢が随所に感じられて、涙が出るほどだった、という意味だ。インド映画というのは、脚本面にしても技術面にしても、割とやっつけ仕事的な部分が多いのだが、本作はそんなことはなく、若い監督たちの鑑となる。

・テーマやストーリーという面では、本作はびっくりするようなものはない。シャンカル監督作品のような荒唐無稽なイメージや、ラジニ映画のような大衆受けするギミックもない。しかし、急所急所がかっちり作られていて、クオリティーは高い。インド映画も大金投じた大作を以ってハリウッドと肩を並べたとはしゃぐものもあるが、こういう堅実な内容の秀作が出てこそ、ハリウッドと肩を並べたと言うべきだ。

・しかし、本作が特にハリウッド映画的というわけではなく、プロタゴニストに託して描き出されるセンチメントや情念の強さは十分インド(タミル)映画的。数年の出来事をほんの1曲の歌のうちにさらりと描いてしまうインド映画様式も効いている。

・ヒンディー映画【Force】(11)鑑賞記の中で私は、タミル・アクション映画では「警察=悪」と描かれることが多いが、しかし、現実的に市民の安全を守るのは警察以外にないのではないか、人間性を持った警官がいるからこそ市民の安全が保障される、というのがガウタム監督の警官物のロジックだ、みたいなことを書いたが、それは裏を返せば、やはりインドの一般市民には警察に対する根強い不信感があることを意味する。マラヤーラム映画【Drishyam】(13)が批評的に評価され、大ヒットした(カンナダ語/テルグ語リメイクもどちらもヒットした)のに、日本人鑑賞者の間ではほとんど評価されなかった理由は、結局、日本人にはインド市民が感じている警察への「不信感」が実感できていないのが一因だと私は見ている。ガウタム監督が警官物3部作で描く、一見鼻に付く「正義感」を理解するためには、この「不信感」を想像してみる必要がある。

・しかも本作は、単に正義感の強い「正義漢」を登場させるだけでなく、正義と悪を分かつ「紙一重の一線」をテーマに物語が作られていて、その点、ガウタム監督の考えが一段と深化しているように思えた。

◎ 配 役 : ★★★★☆
◎ 演 技
・アジット(サティヤデーヴ役) ★★★★☆
 近ごろごま塩頭を売りにしているタラ・アジットだが、本作が最もうまくごま塩を効かせている。文句なしの大人のパフォーマンス。

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・トリシャー(ヘーマニカー役) ★★★★☆
 短い出番ながら、こちらも大人の魅力満開のパフォーマンス。古典ダンサーの役だったが、やっぱりトリシャーは古典舞踊の所作が下手だというのが玉に瑕。

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・アヌシュカー・シェッティ(テーンモリ役) ★★★☆☆
 ストーリー上はこのお方のほうが第一ヒロインだと思うが、おいしいとこはトリシャーに持って行かれちゃった。それでもいいんです、アヌシュカーはそんなことにこだわらない大物なんです(なにせ身長5フィート10インチですからね)。
 (写真下:全般的に可愛く撮ってもらっていたが、わざわざあまり可愛くないスチルを貼るのは、「あなた、そろそろマ女優のレナに抜かれるよ」という警告的意味です。)

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・アルン・ヴィジャイ(ヴィクター役) ★★★☆☆
 本作で株を上げたのがこのお方。高評価を得ているが、【Kaakha Kaakha】で成功したジーヴァンもダニエル・バーラージもその後特にパッとしていないので、この方も同じ命運を辿るのでは。
 (写真下:右がアルン・ヴィジャイ。マテュー役の「スタント」シルヴァと。)

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・その他、サティヤデーヴの義娘イーシャー役の子役(ベビー・アニカー)は頭が良さそうで良かった。ヴィクターの妻リサ役のパールワティ・ナーイルも印象的。サティヤデーヴの活躍のせいで、なかなか臓器を移植してもらえない男役のスマンは気の毒だった。
 (写真下:リサ役のパールワティ・ナーイル。本作のスチルではありません。)

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◎ 音 楽 : ★★★★☆
◎ BGM : ★★★★☆
◎ ダンス : ★★★☆☆
・「あれ、ガウタムさんとは喧嘩別れしたんじゃないの?」のハリス・ジャヤラージの音楽だが、かなり良かった。オープニング・クレジットのメタリックな曲、珍しく古典を意識したヘーマニカーの舞台シーン、サティヤデーヴとヘーマニカー、サティヤデーヴとイーシャーのそれぞれセンチメンタルな曲など、よくできている。

・サティヤデーヴとイーシャーが北インド(ジャイプル、チャンディーガル、シッキム州のペリンとガントク)へ行くシーンは、観光案内的ではあったが、きれいに見せている。

・ヴィクターの結婚式シーンのダンスでは、アジットらはジーンズをはいているのに、その上からルンギを巻いて踊っていた。

◎ アクション : ★★★★☆
◎ 撮 影 : ★★★★☆
◎ 編 集 : ★★★☆☆
・撮影は良かった。ダン・マッカーサーという聞いたことのない名前だが、オーストラリアの監督/撮影監督らしい。

・アクションは、物語中の登場人物でもあった「スタント」シルヴァの担当。これがリアルな見せ方で良かった。

◎ その他(覚書)
・マフィアの使っていた合言葉が「Why This Kolaveri Di」だった。

◆ 完成度 : ★★★★☆
◆ 満足度 : ★★★★☆
◆ 必見度 : ★★★★☆

◆ 鑑賞データ
・鑑賞日 : 2月7日(土),公開第1週目
・映画館 : Gopalan Cinemas (RR Nagar),10:00のショー
・満席率 : 4割
・場内沸き度 : ★★★☆☆ (アジットの登場シーンでは大歓声。)
 

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