カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Devara Naadalli】 (Kannada)

<<   作成日時 : 2016/02/20 14:21   >>

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 【Puttakkana Highway】(11)で国家映画賞を受賞したB・スレーシャ監督の久々の新作。【Puttakkana Highway】は私的にはいろいろ疑問の残る作品だったが、この新作は複数の鑑賞者からすでに面白いとの声を聞いており、期待が持てた。
 本作品はスレーシャ監督が1998年にThe Times of India紙に載っていた記事にインスパイアされたもの(つまり、実話に基づくもの)。記事中の事件は1993年に起きたものらしい。ずいぶん昔の話だが、スレーシャ監督の頭の中でじっくり想が練られていたのであろう。そうして脚本ができ上がった後も、プロデューサーが付かず、監督自らがテレビ番組の台本書きなどをしながら製作費を集めたようだ。いや、泣ける話だ。

【Devara Naadalli】 (2016 : Kannada)
物語 : B. Suresha
脚本 : B. Suresha, Aravind Kuplikar
監督 : B. Suresha
出演 : Prakash Rai, Manu Hegde, Disha Ramesh, Achyuth Kumar, Kasargodu Chinna, Sihi Kahi Chandru, Manasa Joshi, Manju Bhashini, Mandya Ramesh, 他
音楽 : Hamsalekha
撮影 : Advaitha Gurumurthy
編集 : Jo. Ni. Harsha
制作 : Shylaja Nag, B. Suresha

題名の意味 : 神様の国で
映倫認証 : U/A
タ イ プ : オリジナル
ジャンル : ドラマ(ポリティカル・スリラー)
公 開 日 : 2月5日(金)
上映時間 : 1時間46分

《 あらすじ 》
 カルナータカ州西海岸のホンヌールという町にキナーレ・カレッジという大学があった。ある朝、この大学の一教室で爆弾事件が起きる。幸い死者は出ず、教官のシッドゥが軽傷を負っただけだが、この日はカルナータカ州産業大臣のC・M・ナーヤカ(Achyuth Kumar)が訪問する予定だったため、爆弾事件の背景を巡って大騒ぎとなる。
 この事件の捜査にカニートカル警視(Prakash Rai)が当たる。ナーヤカ大臣はカニートカルに翌日までの解決を命じる。現場検証の結果、爆弾はごく小規模なもので、素人が作成したものだと推理された。カニートカルは大学内部の者の犯行だと見当付け、教官、職員、学生を校内に留まらせる。だがこの町は、政治的、宗教的に複雑な問題を抱える地だった。まず、唯一の被害者シッドゥは、ヒンドゥー至上主義者のゴーヴィンダ(Kasargodu Chinna)が自分の命を狙ったものだと述べる。シッドゥは大学の理事長で実業家兼ヤクザのパドマーカラ・シェッティ(Sihi Kahi Chandru)の推薦で教職に就いていたが、低カーストの彼が高カーストの子弟を教えるのをゴーヴィンダが嫌っていた、という言い分である。校長(Manju Bhashini)もゴーヴィンダが怪しいと供述する。だがゴーヴィンダは、テレビ番組ではイスラーム教徒の仕業だと宣伝しつつも、裏ではパドマーカラ・シェッティが怪しいと囁いていた。パドマーカラ・シェッティは付近のSEZ(経済特区)開発で一儲けを狙っており、そのために友人のナーヤカ大臣と実業家連中の仲介役を務めていた。このSEZ計画に対して地元民が抗議運動をしていたが、先頭に立っていたのはリチャード・マダガスカルという共産主義者だった。それで、リチャードにも爆弾事件の嫌疑がかかる。赤旗嫌いの教官(Mandya Ramesh)も共産主義者の仕業だと睨んでいた。
 物証からこの大学の複数の学生が容疑者として浮かぶ。まず、現場に落ちていた腕時計からシャンカラ(Manu Hegde)が疑われる。だが、彼は理事長パドマーカラ・シェッティの息子だった。次に、爆弾に使われた材料(リモコン装置、硝酸アンモニウムの化学肥料、起爆装置)から、ゴーヴィンダの弟子のラーマチャンドラ・バッタ、リチャード・マダガスカルの息子のマイケル・マダガスカル、そしてイスラーム教徒のシャッビール・アリーが疑われる、、。

・その他の登場人物 : サヴィター(Disha Ramesh)

   *    *    *    *

◎ テーマ : ★★★★☆
◎ 物 語 : ★★★☆☆
◎ 脚 本 : ★★★★☆
・それぞれの国/地域にはそれぞれの事情があり、外部の人間には理解しがたくとも、そこが面白かったりもするのだが、本作品に描かれた世界も、「インド的」を3乗してもいいぐらいの、インド的世界、インド的混沌、インド的不条理が1時間46分の中にみっちり詰まっており、実に面白かった。

・カースト/コミュニティーが違うのだからと言ってしまえばそれまでだが、それぞれが拠って立つ世界観/イデオロギーの違いに従って、こうも人間は違ったものになり得るのか。定番のヒンドゥー至上主義者とイスラーム教徒との反目だけでなく、SEZ(経済特区)開発を推進する政府/企業家に対する共産主義者(本作ではキリスト教徒だった)の抗議運動、同じヒンドゥー教徒内でも高カースト者(ブラフミン)による低カースト者(おそらく不可触民)への差別などが扱われている。それに、これまた定番の情けない政治家と、真実よりは圧力に動かされる無力な警察も描かれている。

・それで、たった1個の、素人の仕業だと推理される爆弾事件の犯人を見つけることさえ、なかなか一筋縄ではいかない。それぞれのグループの人が自分たちの「嫌いな」グループの連中を犯人だと思い込み、それゆえ様々な偏見、妄想、政治的/宗教的な圧力が生じて、真実から微妙に遠ざかり、結局、真犯人が捕まえられない。こういう歪んだ状況が起きるのが「神様の国で」というのだから、ずいぶん皮肉な話だ。

・と、いろいろな問題を含む本作であるが、ストーリーを反芻する限り、第一の問題は「カースト差別」ということになる。しかし、カーストにせよコミュニティーにせよ、私はとやかく言えないが、今のインド人には人と人の間に壁を作る、優劣を作るといったふうにしか人間社会を見られないので、どうにもならない問題ではある。スレーシャ監督のようによっぽど視野の広い人物がこういう映画を作って公開しても、それを見たがる人が少なすぎるというのが今のインドの問題だ。(何が言いたいかというと、本作はフロップに終わってしまった。)

・こんなふうに書くと、本作は重たい政治ドラマだと思われるかもしれないが、実際にはユーモアに富んだ風刺が散りばめられていて、楽しく鑑賞できる。特に共産主義者、ムスリム、ヒンドゥー教徒をそれぞれ赤旗、緑旗、サフラン旗に例えて視聴者アンケートを取っている無責任なテレビ番組のシーンが笑えた。

・脚本もよく考えられていて、カニートカル警視の捜査上の努力がじわじわっと軌道を外れていく皮肉な状況がうまく描かれている。しかし、不満点を挙げると、真犯人を早く見せすぎたと思う。後半の早い段階で犯人を見せていたが、サスペンスとして娯楽性を高めたいなら、もっと後まで隠すべきだったろう。

・本作のユニークさはカルナータカ州西岸のユニークさそのものだと言える。農本制を基盤とした内陸部ではこういう話にはならない。西海岸にはヒンドゥー教徒以外にイスラーム教徒、キリスト教徒が多く暮らし、農民だけでなく漁民も多く、西ガーツの豊かな自然、天然資源を狙って開発の問題が起こり、それに抗する勢力(極左主義者)が山間部の森に生息する。言語的にも多様で、本作ではカンナダ語の他にトゥル語、コンカニ語、マラヤーラム語、ウルドゥー語、マラーティー語、テルグ語、英語が何気にミックスしていた(しかし、どうしてこの状況でこの登場人物がこの言語を使わなければならないのか、よく分からなかった)。

◎ 配 役 : ★★★☆☆
◎ 演 技
・プラカーシュ・ライ(カニートカル役) ★★★★☆
 さすがにドラマを作っていた。

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・辛口の社会風刺ドラマにおいて、初々しい感じのロマンス・パートを担当したのはマヌ・ヘグデ(シャンカラ役)とディシャー・ラメーシュ(サヴィター役)。どちらも新人らしい。

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 ところで、このディシャー・ラメーシュは、エラが張っているが、可愛かったので調べてみたら、マンディヤ・ラメーシュの娘だということが分かり、ちょっと凹んだ。
 (写真下: ディシャーさんと父のマンディヤ・ラメーシュ。)

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・その他、大臣役のアチュート・クマール、実業家兼ヤクザ役のシヒ・カヒ・チャンドル、ヒンドゥー至上主義者ゴーヴィンダ役のカーサラゴードゥ・チンナ、女捜査員ナーイル役のマーナサ・ジョーシらが良かった。

◎ 音 楽 : ★★★☆☆
◎ BGM : ★★★☆☆
・音楽はハムサレーカで、前半の歌はエスニシティに富んでいて良かったと思うが、エンディングのテーマ曲がどうもアート・フィルムぽっく、くどい感じがした。

◎ 撮 影 : ★★★★☆
◎ 編 集 : ★★★☆☆

◎ その他(覚書)
・物語の舞台となったホンヌール(Honnuru)という西岸部の町が特定できない。架空の町かもしれない。撮影は主にウドゥピで行われたようだ。

◆ 完成度 : ★★★★☆
◆ 満足度 : ★★★☆☆
◆ 必見度 : ★★★★☆

◆ 鑑賞データ
・鑑賞日 : 2月16日(火),公開第2週目
・映画館 : INOX (Jayanagar),19:20のショー
・満席率 : 2割
・備 考 : 英語字幕付き

 

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