カーヴェリ川長治の南インド映画日記

アクセスカウンタ

zoom RSS 【Amaravathi】 (Kannada)

<<   作成日時 : 2017/05/03 20:57   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 0

画像

 先日、2016年度のカルナータカ州映画賞が発表され、【Amaravathi】が最優秀作品賞を含む4賞を受賞した(他は最優秀監督賞、最優秀台詞賞、最優秀主演男優賞)。【Amaravathi】は一般公開時に観逃してしまい、悔しい思いをしていたら、スチトラ映画協会が特別上映会(監督とのトーク企画を含む)をやってくれたので、観て来た。
 上述のとおり、監督のB・M・ギリラージは本作で監督賞を受賞しているが、同氏の作品はデビュー作の【Jatta】(13)がカルナータカ州映画賞の第2優秀作品賞、【Mythri】(15)が同第3優秀作品賞を獲得しており、同映画賞の常連となっている。
 映画館での一般公開ではないが、【Hajj】(13)の時と同様、良い映画だったので、鑑賞記を残すことにした。
 (写真下: ギリラージ監督。)

画像

【Amaravathi】 (2017 : Kannada)
物語・脚本・台詞・監督 : B.M. Giriraj
出演 : Achyuth Kumar, Hemanth Sushil, Ninasam Ashwath, Kiran Kumar, Vidya Venkataram, Vaishali Deepak, 他
音楽 : Abhilash Lakra, Joel Dubba
撮影 : Kiran Hampapura
編集 : Arjun (Kittu)
制作 : Sushma E, Madhava Reddy E

題名の意味 : アマラーワティ(神話上の地名)
映倫認証 : A
タ イ プ : オリジナル
ジャンル : ドラマ
公 開 日 : 2月10日(金)
上映時間 : 2時間3分

《 あらすじ 》
 シヴァッパ(Achyuth Kumar)は都市管理局の管理の下、下水管の掃除などを請け負う中年男。もちろん生活は貧しく、スラム暮らし。彼には死別した先妻との間に長男のチェンナ(チェンナバサワ:Hemanth Sushil)、再婚した妻(Vidya Venkataram)との間に二人の男の子――ヨーギとマールティ――がいた。
 チェンナは学業に秀でた大学生で、クラスメートのデーヴィカー(Vaishali Deepak)と卒業課題のビデオ制作に取り組んでいた。だが、それに嫉妬したローヒトとの間で暴力事件が起き、10日間の停学処分を受ける。後日デーヴィカーがこの件を謝罪したため、二人の友情はさらに強くなる。
 チェンナの弟マールティは廃墟に暮らす乞食ふうの男と知り合いになる。男はマールティに自分のことを神だと言い、逆らうと祟りがあると脅したため、マールティは男のために酒や食べ物をせっせと持って行く。
 チェンナは社会活動家のポール(Kiran Kumar)を兄のように慕っていた。ポールはシヴァッパのような下水管掃除やゴミ処理を行う労働者の権利のために闘っていた。また、この街にはジョン(Ninasam Ashwath)というヤクザがおり、そうした労働者を手配していたが、ポールはこのジョンの行いを糾弾していたため、彼から睨まれていた。
 ジョンの片腕のヤクザが警察に射殺される。この件はヤクザの愛人と警察が仕組んだ罠によるものだったため、愛人はジョンの手下に嫌がらせを受け、自殺してしまう(おそらく自殺に偽装した他殺)。チェンナとデーヴィカーはこの件を警察に告発したため、ジョンの一味は逮捕される。この件で怒ったジョンはシヴァッパの家に押しかけ、シヴァッパが可愛がっていた犬を撲殺し、マールティにも暴力をふるったため、彼は失明してしまう。激怒したシヴァッパはジョンの息子を誘拐、殺害し、池に沈める。また、マールティの兄のヨーギは神の男に弟が失明したことを伝える。
 以前にシヴァッパの仲間のゴミ処理人がゴミの中に混じっていたガラス粉で失明するという事件が起きていた。また、別の男が下水管掃除の際に溺死するという事件も起きる。シヴァッパやポールは管理局へ行き、担当役人に自分たちの労働環境改善と賃上げを訴えるが、無視される。憤ったシヴァッパらはストライキを行う。その結果、ベンガルール全体がゴミ捨て場と化してしまう。警察はシヴァッパのグループを投獄する。
 掃除人らのストに手を焼いた当局は、運動を煽っているポールを叩くために、彼の母を逮捕する。しかし、持病持ちだった母はそのまま病死してしまう。激昂したポールは抗議の印に焼身自殺する。やむを得ず関係当局は、シヴァッパらを釈放し、賃上げ等の彼らの要求も飲む。
 ある夜、シヴァッパは酒に酔った勢いでジョンの息子を殺したことを友人に話すが、それをジョンの手下に聞かれてしまう。ジョンは復讐のためにシヴァッパの家族を全員誘拐し、生き埋めにしようとする。だが、ここに神の男が現れ、ジョンを殺し、家族を救う。
 シヴァッパの家族に平和が訪れる。だがそれも束の間、シヴァッパは都市管理局の役人に買収された仲間に罠にはめられ、殺されてしまう。チェンナは卒業課題のプレゼンテーションの際に、父殺害の犯人は逃れられないと警告する。

   *    *    *    *

◎ テーマ : ★★★★★
◎ 物 語 : ★★★☆☆
◎ 脚 本 : ★★★★☆
・いやぁ、強烈な映画だった。敗者復活で、観る機会をもらって感謝している。といって、夢の世界なんてどこにもないような映画なので、一般の日本人ファンにはお勧めしにくいなぁ。

・メッセージを炎の剛球一直線といった感じでストライクゾーンど真ん中に放り込んでくる映画だった。といって、アートフィルムということではなく、タミル映画【Angaadi Theru】(10)やカンナダ映画【U Turn】(16)のような、主張のはっきりした娯楽映画。

・そのメッセージというのは、あらすじを読んで分かるとおり、社会の底辺で暮らし、大都市のゴミ収集や下水管清掃などを生業としている単純労働者に対する社会の態度への糾弾。映画を観る限り、こうした人たちは本当に凄まじい仕事を強いられている。例えば、シヴァッパ(Achyuth Kumar)などは、接着剤のシンナーを吸って感覚を麻痺させてから、仕事を始める。それぐらいきつい。

・きついといえば、もっときついのがこうした労働者への社会の対応だ。こうした人たちは、カースト的には低カースト、もしくは北カルナータカやタミル・ナードゥ州、アーンドラ・プラデーシュ州などから流れて来た無職の人々。これをヤクザが彼らの弱みに付け込んで手配する。彼らを管理する都市管理局の担当役人も無責任で、賃上げを認めようとせず、彼らの安全と健康を守るために1人当たりほんの数百ルピーの投資でゴーグル、手袋、長靴、命綱などが支給できるのに、それを怠り、労働者が大怪我をしたり死亡したりする。一般の人々はそんな彼らの窮状さえ知らず、平気でゴミを生産する。なんとなれば、世間にとっては、「ゴミや糞尿を扱う人々はゴミや糞尿と同じ」だから。

・題名の「Amaravathi」はアーンドラ・プラデーシュ州にある都市のことではなく、神話に出てくる「不死の者たちの住処」、すなわち「パラダイス」のことだが、現在のバブルなベンガルールもその発展は空想にすぎないと皮肉ったもの。しかし映画中には「アマラーワティ」の話は出てこず、代わりにポール(Kiran Kumar)の口から、ネロ統治時代のローマ帝国の繁栄は多くの人々の犬死によって支えられていた、という形で語られていた。

・こうした状況に耐えかねて、シヴァッパやポールはストという形で対抗するが、ここがこの映画でスカッとするところ。物語の終盤でヤクザのジョン(Ninasam Ashwath)も排除され、映画はハッピーエンドで終わるかと思いきや、そうならないところが本作の凄いところ。その後にシヴァッパも殺され、痛々しい調子に戻ってしまう。しかし、息子のチェンナ(Hemanth Sushil)がプレゼンテーションで、父の飼っていた子犬が犯人の匂いを覚えているので、追及は続く、と警告するところで映画が終わる。

・この「犬」というのは象徴的な使われ方で、たぶん「犬のような生活をしている労働者」のことだろう。「犯人」というのもシヴァッパを殺した人物だけを指すのではなく、世間の人々のこと、つまり「我々」がかなり認識と行動を改めない限り、いつかしっぺ返しを食らうだろうという警告だと思う(映画中でチェンナは犯人のことを「お前」という語で聴衆に語りかけていた)。

・自称「神」の男の展開も面白い。この男は一見乞食だが、「ブーペーシュ・モハパティ」という名前があり、曰く付きの人物と設定されていた。マールティ少年に「神だ」と告げ、最後にジョン((Ninasam Ashwath))を殺害するときにも「お前は誰だ」と問われ、「私は神だ」と答えている。この神というのにも、監督は象徴的意味を持たせているに違いない。

◎ 配 役 : ★★★☆☆
◎ 演 技
・アチュート・クマール(シヴァッパ役) ★★★★☆
 怒れるスラム住人を芯の強い演技で演じており、それだけでも評価できるが、あの下水管の中に入ったという努力は主演男優賞に十分値する。(注: 下水管内部はセットかもしれないが。)

画像

・へーマント・スシール(チェンナ役)
 特にコメントはないが、学業優秀なスラムの青年という感じはよく出ていた。留保制度は何かと評判が悪いが、こういう青年が現れる芽を摘まないためにも、多少は残すべきだろう。

画像

・ヴァイシャーリー・ディーパク(デーヴィカー役)
 登場人物中、唯一の若い女性の役。特に美人というわけでもないが、こういう映画の中ではかなり美人に見えた。

画像

・キラン・クマール(ポール役) ★★★★☆
 たいてい脇役の中でも出番の少ない役をやるこのお方だが、本作では非常に力強くて、良かった。

画像

・「神」を名乗る男がなかなかカッコよかったが、俳優名が分からない。

・これも俳優名が分からないが、都市管理局の役人を演じた人がまさに「インドあるある」な嫌らしい役人の顔で、非常に良かった(下)。

画像

◎ 音 楽 : ★★☆☆☆
◎ BGM : ★★★★☆

◎ 衣 装 : ★★★☆☆
◎ 撮 影 : ★★★☆☆
◎ 編 集 : ★★★★☆

◎ その他(覚書)
・こういうゴミ収集や下水管清掃をする人々をこちらでは「Paurakarmikas」と言うらしい。

・ポールの台詞中に、北カルナータカではここ10年、1日に3人の農民が自殺している、というのがあった。

・チェンナの祖父の仕事は葬式の太鼓叩きという設定だった。

◆ 完成度 : ★★★☆☆
◆ 満足度 : ★★★★☆
◆ 必見度 : ★★☆☆☆

◆ 鑑賞データ
・鑑賞日 : 4月30日(日)
・上映場所 : Suchitra Film Society
・備 考 : 英語字幕付き

 

テーマ

注目テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
【Amaravathi】 (Kannada) カーヴェリ川長治の南インド映画日記/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる